Unknown · Public domain · 5,238 wordsThe text was taken from a 1917 edition which is naturally written in the traditional orthography with prewar kanji forms. I have taken the liberty of using postwar orthography and kanji forms, and have also added readings in parentheses where I considered them necessary.
Unknown · Public domain · 9,544 words〔訳注:ここでのルターの番号のつけ方は、アウグスティヌスおよびラテン教会 の区分法に従っています(『信仰要義』p.188)。
Unknown · Public domain · 129,664 words其《そ》れはまだ人々《ひと/″\》が「愚《おろか》」と云ふ貴《たうと》い德《とく》を持《も》つて居《ゐ》て、世《よ》の中《なか》が今《いま》のやうに激しく軋《きし》み合《あ》はない時分《じぶん》であつた。殿樣《とのさま》や若旦那《わかだんな》の長閑《のどか》な顏《かほ》が曇《くも》らぬやうに、御殿女中《ごてんぢよちゆう》や華魁《おいらん》の笑《わらひ》の種《たね》が盡《つ》きぬやうにと、饒舌《ぜうぜつ》を賣《う》るお茶坊主《ちやばうず》だの幇間《はうかん》だのと云《い》ふ職業《しよくげふ》が、立派《りつぱ》に存在《そんざい》して行《ゆ》けた程《ほど...
Unknown · Public domain · 48,306 words自分は我儘な文藝、自己の爲めの文藝と云ふやうなものヽ存在を是認してゐる。この是認があればこそ自分は文藝の士にならうと思つてゐる。されば自分の書いたものヽ價値は讀者の自分の個性と合奏し得る程度によつて定るのである。從つて自分の個性と合奏し得ない方には自分は自分のかいたものを買ふことも讀むことを要求する資格のないものである。表紙の畵は友人有島壬生馬氏の厚意になつた。厚く御禮する。口繪はクリンゲルのエツチング集インテルメチーの序畵である。(著者)
Nagai, Kafu, 1879-1959 · Public domain · 134,349 words明治三十六年の秋十月の頃より米國に遊びて今茲明治四十年 の夏七月フランスに向ひてニューヨークを去るに臨み、日頃 旅窗に書き綴りたるものを採り集めて、あめりかものがたり と題し、謹んでわが恩師にして恩友なる小波山人巖谷先生の 机下に呈す。明治四十年十一月里昻にて永井荷風。
Mushanokoji, Saneatsu, 1885-1976 · Public domain · 48,306 words自分は我儘な文藝、自己の爲めの文藝と云ふやうなものヽ存在を是認してゐる。この是認があればこそ自分は文藝の士にならうと思つてゐる。されば自分の書いたものヽ價値は讀者の自分の個性と合奏し得る程度によつて定るのである。從つて自分の個性と合奏し得ない方には自分は自分のかいたものを買ふことも讀むことを要求する資格のないものである。表紙の畵は友人有島壬生馬氏の厚意になつた。厚く御禮する。口繪はクリンゲルのエツチング集インテルメチーの序畵である。(著者)
Luther, Martin, 1483-1546 · Public domain · 9,544 words〔訳注:ここでのルターの番号のつけ方は、アウグスティヌスおよびラテン教会 の区分法に従っています(『信仰要義』p.188)。
Lowndes, Marie Belloc, 1868-1947; Hayashi, Kiyotoshi [Translator] · Public domain · 181,260 wordsロバート・バンティングと妻のエレンは、弱々しく燃える埋み火のまえに座っていた。 この部屋は、彼らの家が不衛生とまでは言わないまでも、すすけたロンドンの通りに面していることを考えると、ことのほか清潔で手入れが行き届いていた。ふらりと訪れた客、特にバンティング夫婦より上の階級に属する客は、その居間のドアを開けるやいなや、二人の姿に安らかな結婚生活の、暖かく心地よい一場面を見出しただろう。深々とした革の肘掛け椅子にもたれていたバンティングはきれいにひげを剃って、こざっぱりした身なりをしている。その風采にはむかし長年にわたって勤めあげた「誇り高き使用人」の...
Masamune, Hakuchō, 1879-1962 · Public domain · 209,569 words何處へ (四十一年一月―四月 早稻田文學)…………………一 玉突屋 (同 年一月 太 陽)………………………一三五 六號記事(同 年一月 文章世界)………………………一四三 彼の一日(同 年三月 趣 味)………………………一五九 五月幟 (同 年三月 中央公論)………………………一七三 村 塾 (同 年四月 中央公論)………………………二〇五 空想家 (四十年十 月 太 陽)………………………二二一 株 虹 (同 年十二月 新思潮)………………………二六九 凄い眼 (四十一年八月 太 陽)………………………二九一 世間並 (同 年七月 趣 味)……...
Oppenheim, E. Phillips (Edward Phillips), 1866-1946; Hayashi, Kiyotoshi [Translator] · Public domain · 163,859 words大事件の発端となるあの災難は、エヴェラード・ドミニーが小一時間も低木の藪を押しわけ、細く渦巻きながら立ちのぼる煙をめざし、子馬に最後の絶望的な努力をしいて巨大な夾竹桃の茂みを通り抜け、前のめりに頭から小さな空き地へ転落した時点にはじまる。翌日の朝、気がつくと、彼は数ヶ月ぶりにリンネルのシーツに包まれて、キャスターつきのベッドに横たわっており、過酷な太陽と彼のあいだには、涼しげな竹で編まれた屋根があった。彼はベッドの上でわずかに身体を起こした。 「いったいどこなんだ、ここは?」 バンダの入り口に胡座をかいていた黒人少年が立ちあがり、何事かをぶつぶつと...
Tanizaki, Jun'ichiro, 1886-1965 · Public domain · 129,664 words其《そ》れはまだ人々《ひと/″\》が「愚《おろか》」と云ふ貴《たうと》い德《とく》を持《も》つて居《ゐ》て、世《よ》の中《なか》が今《いま》のやうに激しく軋《きし》み合《あ》はない時分《じぶん》であつた。殿樣《とのさま》や若旦那《わかだんな》の長閑《のどか》な顏《かほ》が曇《くも》らぬやうに、御殿女中《ごてんぢよちゆう》や華魁《おいらん》の笑《わらひ》の種《たね》が盡《つ》きぬやうにと、饒舌《ぜうぜつ》を賣《う》るお茶坊主《ちやばうず》だの幇間《はうかん》だのと云《い》ふ職業《しよくげふ》が、立派《りつぱ》に存在《そんざい》して行《ゆ》けた程《ほど...
Mushanokoji, Saneatsu, 1885-1976 · Public domain · 61,231 words野島が初めて杉子に会ったのは帝劇の二階の正面の廊下だった。野島は脚本家をもって私《ひそ》かに任じてはいたが、芝居を見る事は稀《まれ》だった。此日も彼は友人に誘われなければ行かなかった。誘われても行かなかったかも知れない。その日は村岡の芝居が演《や》られるので、彼はそれを読んだ時から閉口していたから。然し友達の仲田に勧められると、ふと行く気になった。それは杉子も一緒に行くと聞いたので。
Morley, Christopher, 1890-1957; Hayashi, Kiyotoshi [Translator] · Public domain · 154,251 words載されたものですが、このすぐれた雑誌の編集者には再版の許可をいただいた ことを感謝します。 ロジャーは十台のパルナッソスに地方回りをさせることになりましたので、 もしかすると旅先で皆さまのお目に留まることがあるかもしれません。もしも そのような機会があれば、パルナッソス巡回書店株式会社のあらたな行商の旅 が、わたしたちの高貴な職業の、ふるくて名誉ある伝統をけっして汚すもので はないことをお確かめいただきたいと思います。
Tanizaki, Jun'ichiro, 1886-1965 · Public domain · 15,089 words眞つ暗な箱根の山を越すときに、夜汽車の窓で山北の富士紡《ふじばう》の灯をちらりと見たが、やがて又|佐伯《さへぎ》はうとうとと眠つてしまつた。其れから再び眼が覺めた時分には、もう短い夜がカラリと明け放れて、靑く晴れた品川の海の方から、爽やかな日光が、眞晝のやうにハツキリと室内へさし込み、乘客は總立ちになつて、棚の荷物を取り片附けて居る最中であつた。酒の力で漸く眠り通して來た苦しい夢の世界から、ぱつと一度に明るみへ照らし出された嬉しさのあまり、彼は思はず立ち上がつて日輪を合掌したいやうな氣持になつた。 「あゝ、これで己もやうやう、生きながら東京へ來るこ...
Sato, Haruo, 1892-1964 · Public domain · 6,552 wordsわれ幼少より詩歌を愛誦し、自ら始めてこれが作を試みしは十六歲の時なりしと覺ゆ。いま早くも十五年の昔とはなりぬ。爾來、公《おほやけ》にするを得たるわが試作おほよそ百章はありぬべし。その一半は抒情詩にして、一半は當時のわが一面を表はして社會問題に對する傾向詩なりき。今ことごとく散佚《さんいつ》す。自らの記憶にあるものすら數へて僅に十指に足らず。然も、些の憾なし。寧ろこれを喜ぶ。後、志を詩歌に斷てりとは非ざりしも、われは無才《むざえ》にして且つは精進の念にさへ乏しく、自ら省みて深くこれを愧づるのあまり遂には人に示さずなりぬ。但、殉情の人は歌ふことにこそ纔...
Sasaki, Kuni, 1883-1964 · Public domain · 33,636 words拙生《せつせい》の髯《ひげ》が丁年《ていねん》到逹《たうたつ》の宣言《せんげん》をする以前《まへ》、もつと碎《くだ》いて申《まを》せば、最早《もはや》子供《こども》でもなく、さりとて未《いま》だ大人《おとな》でもない頃《ころ》、拙生《せつせい》は世界《せかい》觀光《くわんくわう》の渇望《かつばう》を口癖《くちくせ》のやうに洩《も》らしてゐた。ところが待《ま》てば海路《かいろ》の日和《ひより》とやらで、父《ちゝ》はセイロン島《たう》への航海《かうかい》に拙生《せつせい》の隨伴《おとも》を御許可《おゆるし》になつた。セイロン島《たう》には父《ちゝ》の叔...
Jones, Raymond F., 1915-1994; Hayashi, Kiyotoshi [Translator] · Public domain · 30,358 words新聞記者は病院にたいしても客観的にならなければならない。記者の仕事は他人の心を揺さぶることで、自分の心をかき乱すことではないのだ。しかしそんなことを言ったって、いまはなんの意味もない、とメル・ヘイスティングスは思った。この病院のどこかで、アリスが生死の境をさまよっているというときには。 アリスが手術室に入ってから長すぎるほどの時間がたった。なにかまずいことが起きたのだ。彼はきっとそうだと思った。時計を見る。外はもうすぐ夜明けだろう。メル・ヘイスティングスにとって、それは大切な、取り返しのつかない時間の経過を示すものだった。アリスはもうとっくにあの白...
Tanizaki, Jun'ichiro, 1886-1965 · Public domain · 27,218 words佐伯《さへぎ》は、頭《あたま》の工合《ぐあひ》が日に增し惡くなつて行くやうな心地がした。癲癇《てんかん》、頓死、發狂などに對する恐怖が、始終胸に蟠《わだかま》つて、其れでも足らずに、いやが上にも我れから心配の種《たね》を撒《ま》き散らし、愚にもつかない事にばかり驚き戰《をのゝ》きつゝ生《せい》をつゞけて居た。叔母が或る晚、安政の地震の話をして、もう近いうちに、再び大地震の起る時分だと、仔細らしく、豫言したのをちらりと小耳《こみゝ》に挾んでから、ひどく神經に病み始め、微かな家鳴《やなり》震動に遇つてさへ、忽ちどきん、どきん、と動悸が轟いて、體中《から...
Akutagawa, Ryūnosuke, 1892-1927 · Public domain · 5,238 wordsThe text was taken from a 1917 edition which is naturally written in the traditional orthography with prewar kanji forms. I have taken the liberty of using postwar orthography and kanji forms, and have also added readings in parentheses where I considered them necessary.
Tanizaki, Jun'ichiro, 1886-1965 · Public domain · 100,755 words汽車は沼津を出てから、だんだんと海に遠ざかつて、爪先上りの裾野の高原を進んで行くらしかつた。八月の眞晝の日光が、濃い藍色に晴れた空から眞直に射下して、折々一寸二寸ぐらゐづゝ、窓枠の緣を燒附けて居た。
Nagai, Kafu, 1879-1959 · Public domain · 91,791 wordsはしがき おのれ志いまだ定らざりし二十の頃よりふと戯れに小說といふもの書きはじめいつか身のたつきとなして數ればこゝに十八年の歳月をすごしけり。あゝ十八年曾我兄弟は辛苦をなめて十八年親の敵を打つて名を千載に傳へおのれはいたづらなる筆をなめて十八年世の憎しみを受け人のそしりをのみ招ぎけり十八年が同じ月日も用ゐかたによりて變るためしはもろこしに柳下惠といへる賢者は飴のあまきを嘗めて老ひたる親を養はんと申しけるを盜跖とよぶ盜人は人の家の戶に塗り音せぬやうに引あけて忍入らんといひけるとぞ。さはさりながら敵をねらふ兄弟も男と生れしからにはそつと人知れず大磯の濡...
Biggers, Earl Derr, 1884-1933; Hayashi, Kiyotoshi [Translator] · Public domain · 61,262 words二年前の七月、ロンドンの猛暑はほとんど我慢の限界をこえていた。いまか ら思えば当時の焼けつく大都市は、拷問部屋へつうじる控えの間のごとき役割 をはたしていたのかもしれない。つまり世界大戦という地獄のおとずれにむけ て不充分ながら下準備をととのえていたわけである。セシル・ホテルのそばに たつ、ドラッグストアのソーダ水売り場には大ぜいのアメリカ人観光客がたむ ろし、母国で売られているのとおなじソーダやアイスクリームにほっと息をつ いていた。ピカデリーの喫茶店のあけはなたれた窓からは、イギリス人が涼を もとめて何クォートもの熱いお茶を飲んでいる姿が垣間見...
Andreyev, Leonid, 1871-1919; Futabatei, Shimei, 1864-1909 [Translator] · Public domain · 81,419 words始《はじめ》て之《これ》を感《かん》じたのは某街道《なにがしかいどう》を引上《ひきあ》げる時《とき》であつた。もう十|時間《じかん》も歩《ある》き續《つゞ》けて、休憇《きうけい》もせず、歩調《ほてう》も緩《ゆる》めず、倒《たふ》れる者《もの》は棄《す》てゝ行《ゆ》く。敵《てき》は密集團《みつしふだん》となつて追擊《つゐげき》して來《く》るのだ。今《いま》附《つ》けた足跡《あしあと》も三四|時間《じかん》の後《のち》には敵《てき》の足跡《あしあと》に踏消《ふみけ》されて了《しま》はう。暑《あつ》かつた。何度《なんど》であつたか、四十|度《ど》、五十|...
Rice, Elmer, 1892-1967; Hayashi, Kiyotoshi [Translator] · Public domain · 49,457 words第一幕 第一場 一九一三年六月二十四日午後九時三十分 ジェラルド・トラスク家の 書斎 第二場 法廷
Falkner, John Meade, 1858-1932; Hayashi, Kiyotoshi [Translator] · Public domain · 267,197 words英国陸地測量部制作の地図ではカラン・ウォーフ、地元の人には単にカランと呼ばれている場所は、今でこそ海岸線から二マイルほど内陸部にあるが、かつてはもっと海寄りで、無敵艦隊との戦いに六隻の船を送り、その一世紀後にはオランダの攻撃を迎え撃つため四隻の船を送り出した由緒ある港として歴史に輝かしい名を残している。ところがやがてカル川の河口域は沈泥でふさがって港口には砂州ができ、海上貿易の船は他に港を探さざるを得なくなった。その後、カル川の流れはやせ細り、それまでのようにあちらこちらへ縦横に伸びるかわりに身を縮めておとなしい河川に変貌し、しかも河川としても決し...