Category: Novels
血笑記
Andreyev, Leonid, 1871-1919; Futabatei, Shimei, 1864-1909 [Translator] · 7 chapters · 81,419 words
始《はじめ》て之《これ》を感《かん》じたのは某街道《なにがしかいどう》を引上《ひきあ》げる時《とき》であつた。もう十|時間《じかん》も歩《ある》き續《つゞ》けて、休憇《きうけい》もせず、歩調《ほてう》も緩《ゆる》めず、倒《たふ》れる者《もの》は棄《す》てゝ行《ゆ》く。敵《てき》は密集團《みつしふだん》となつて追擊《つゐげき》して來《く》るのだ。今《いま》附《つ》けた足跡《あしあと》も三四|時間《じかん》の後《のち》には敵《てき》の足跡《あしあと》に踏消《ふみけ》されて了《しま》はう。暑《あつ》かつた。何度《なんど》であつたか、四十|度《ど》、五十|...
Summary
始《はじめ》て之《これ》を感《かん》じたのは某街道《なにがしかいどう》を引上《ひきあ》げる時《とき》であつた。もう十|時間《じかん》も歩《ある》き續《つゞ》けて、休憇《きうけい》もせず、歩調《ほてう》も緩《ゆる》めず、倒《たふ》れる者《もの》は棄《す》てゝ行《ゆ》く。敵《てき》は密集團《みつしふだん》となつて追擊《つゐげき》して來《く》るのだ。今《いま》附《つ》けた足跡《あしあと》も三四|時間《じかん》の後《のち》には敵《てき》の足跡《あしあと》に踏消《ふみけ》されて了《しま》はう。暑《あつ》かつた。何度《なんど》であつたか、四十|度《ど》、五十|度《ど》、或《あるひ》は其以上《それいじやう》であつたかも知《し》れんが、唯《ただ》もう不斷《のべつ》に蕩々《だら〳〵》と底《そこ》も知《し》れぬ暑《あつ》さで、いつ涼《すゞ》しくなる目的《あて》もない。太陽《たいやう》は大《おほ》きく、火《ひ》の燃《も》ゆるやうに、怕《おそ》ろしげで、或《あるひ》は大地《だいち》に近寄《ちかよ》つて、用捨《ようしや》のない火氣《くわき》に引包《ひツつゝ》み、燒盡《やきつく》さむとするのかと危《あや》ぶまれた。眼《め》を開《あ》いてゐられゝばこそ。小さく、窄《すぼ》んだ、罌粟《けし》粒程《つぶほど》の瞳孔《ひとみ》が閉《と》ぢた眼瞼《まぶた》の下《した》に蔭《かげ》を求《もと》めても、蔭《かげ》はなく、日《ひ》は薄皮《うすかは》を透《とほ》して、血紅色《けつこうしよく》の光線《くわうせん》を疲《つか》れ切《き》つた腦中《なうちう》へ送《おく》る。けれども、流石《さすが》に目《め》を閉《と》ぢてゐ...
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