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    <title>Cyber Library — 日本語 chapters</title>
    <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/</link>
    <description>Latest chapter updates in 日本語.</description>
    <language>ja</language>
    <item>
      <title>幽霊書店 — 第十五章</title>
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      <description>How to Be Happy Though Married E. J. Hardy が一九一〇年に書いた本だろうか。この手のタイトルの本はよく 出版される。</description>
    </item>
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      <title>幽霊書店 — 第十三章</title>
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      <description>Tooke's Pantheon イエズス会士 Francois Pomey (1618-1673) が書いた有名な神話の本をイギリ ス人アンドリュー・トゥック (1673-1732) が一六九八年に英訳したもの。後の 版に附けられたアメリカ人の版画家 Ｇ．フェアマンの挿絵はちょっと有名。</description>
    </item>
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      <title>幽霊書店 — 第十章</title>
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      <description>The Wishing-Cap Papers (1873) by Leigh Hunt (1784-1859) 作者は進歩的な雑誌 The Examiner を創刊し、随筆や批評を各新聞に書いてい たジャーナリストである。本書は彼の軽妙な随筆集。</description>
    </item>
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      <title>幽霊書店 — 第九章</title>
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      <description>Helen's Babies (1876) by John Habberton (1842-1921) 二十八歳の独身男が、二週間のあいだ、姉夫婦の二人の子供の面倒を見ること になった。ところがこの二人、近所の人から小鬼と綽名される大変なやんちゃ だった。もちろんこの後は映画でよくある「子供 vs. 大人」のコメディが展 開される。</description>
    </item>
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      <title>幽霊書店 — 第八章</title>
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      <description>The Blazed Trail (1902) by Stewart Edward White (1873-1946) 作者はアメリカ西部の自然を舞台に冒険物語を幾つも書いている。本書は伐木 搬出業の裏面を暴いた、いわゆるマックレイキングな本でベストセラーになっ た。</description>
    </item>
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      <title>幽霊書店 — 第七章</title>
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      <description>Rolling Stones by O. Henry (1862-1910) これは短編集なのだが、オーブリーが他の作家に完成させたいと言っているのは 絶筆になった「夢」という作品だろう。嫉妬に駆られた男が恋人を殺し、死刑執 行の直前に幻を見る、幸せそうな恋人と、彼らの子供の幻を、という話になるは ずだったらしい。</description>
    </item>
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      <title>幽霊書店 — 第六章</title>
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      <description>The Winning of the Best (1912) by Ralph Waldo Trine (1866-1958) 作者は十九世紀の新思想運動の指導者の一人。人間の内なる力を認識し、それ を神の意志と調和させることで、健康、愛、成功、平和が得られると主張する。</description>
    </item>
    <item>
      <title>幽霊書店 — 第五章</title>
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      <description>The Man on the Box (1904) by Harold MacGrath (1871-1932) 立派な家柄の若き退役軍人ボブが、ふとしたいたずらをきっかけに、ひそかに 思いを寄せる美しい貴婦人の屋敷に、身分を隠し、御者として奉公することに なる。アメリカ上流階級・政界を舞台にした冒険とロマンス。</description>
    </item>
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      <title>幽霊書店 — 第四章</title>
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      <description>Making Life Worth While (1918) by Douglas Fairbanks (1883-1939) ダグラス・フェアバンクスといえば「ゾロ」 (1920) とか「三銃士」(1921) の 映画俳優だが、同時に自己啓発の本を何冊も著している。ダグのしあわせの処方 箋とは、「謙虚であること、いつも良い機嫌でいること、肉体を鍛錬す...</description>
    </item>
    <item>
      <title>幽霊書店 — 第三章</title>
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      <description>Society in Rome under the Caesars (1888) by William Ralph Inge (1860-1954) イングは神学者で、セント・ポール大聖堂の主任司祭だった。ペシミスティッ クな思想の持ち主で「憂鬱な主任司祭」と呼ばれた。本書はローマ帝国の文化・ 社会を詳説したもの。</description>
    </item>
    <item>
      <title>幽霊書店 — 第二章</title>
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      <description>The Home Book of Verse (1912) ed. Burton Egbert Stevenson (1872-1962) 一五八〇年から一九一二年に至るまでの英米の詩のコレクション。B. E. Stevenson は図書館司書で、本書と Home Book of Quotations (1934) の編者 として有名。児童書やミステリ...</description>
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      <title>幽霊書店 — 第一章</title>
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      <description>Trivia (1902) by Logan Pearsall Smith (1865-1946) 断章形式で人生の諸相を一筆書きしたエッセイ集。ユーモアとメランコリーと シニシズムが軽くふりかけられた、しゃれた文章である。</description>
    </item>
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      <title>幽霊書店 — 第十五章 ミスタ・チャップマン、魔法の杖を振る</title>
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      <description>ギッシング通りは幽霊書店の爆破事件をそう簡単には忘れそうになかった。 ワイントラウブの地下室から司法省が四年間捜しあぐねていた情報が見つかり、 おとなしそうなドイツ系アメリカ人の薬剤師がじつは何百もの焼夷弾を作った 職人で、その爆弾がアメリカおよび連合国の船舶や弾薬工場に仕掛けられてい たことが判明、さらにそのワイントラウブが翌日ボストンのブロムフィー...</description>
    </item>
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      <title>幽霊書店 — 第十四章 「クロムウェル伝」最後の登場</title>
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      <description>「大馬鹿者め」半時間後、ロジャーがいった。「どうしてもっと早くに話し てくれなかったんだ？ なんてことだろう、とんでもないことが起きている ぞ！」 「あなたがなにも知らないなんて、どうしてわたしにわかるというんで す？」オーブリーはいらいらといった。「なにもかもあなたに不利なことばか りじゃないですか。あの男が自分の鍵で店のなかに入っていくのを見たら、...</description>
    </item>
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      <title>幽霊書店 — 第十三章 ラドロー通りの戦い</title>
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      <description>オーブリーは意志の力と意識下にひそむ時間感覚だけをたよりに、つぎの日 の朝六時に起床した。魅力的な若い娘にこれくらい心のこもった行為が捧げら れることは、そう滅多にあることではない。若者は真剣に、原始人のように一 心に眠った。それは彼にとってほとんど宗教的な儀式だった。ある二流の詩人 が言ったように、彼は「眠りを生涯の仕事とした」のだ。 しかしロジャー...</description>
    </item>
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      <title>幽霊書店 — 第十二章 オーブリーは他人とはちがうサービスを決意する</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/41325/chapters/13/</link>
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      <description>若者がその日曜日のオーブリーくらいみじめな午後を過ごすことは、そう多 くはないだろう。ただ一つの慰めは、彼が本屋を出てから二十分後にタクシー がやってきて（彼はそのとき寝室の窓辺に座ってふさぎ込んでいた）ティタニ アが乗り込み、走り去ったことである。ラーチモントの一行に合流するのだと 思い、彼女が「交戦地帯」と彼が呼んでいるところから抜け出したことを知...</description>
    </item>
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      <title>幽霊書店 — 第十一章 ティタニア、ベッドのなかで読書をこころみる</title>
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      <description>オーブリーはオペラグラスを手に窓際に座ったが、すぐに自分が疲れ切って いることに気がついた。ロマンチックな英雄的行為にはやる心も疲れにはかな わない。夢を追い求める者すべてにとって手ごわい敵である。その日は長い一 日だったし、前日は頭をかち割られそうになった。窓を押し上げ、冷たい風に あたりながら、彼はかろうじて目を開けていた。うとうととしかけたときに...</description>
    </item>
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      <title>幽霊書店 — 第十章 ロジャー、冷蔵庫をあさる</title>
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      <description>ちょうどロジャーがカーライルの「クロムウェル伝」を歴史アルコーヴのあ るべき場所にもどしたとき、ヘレンとティタニアが映画から帰ってきた。ボッ クは主人の椅子の下でうたた寝していたのだが、礼儀正しく起きあがると敬意 をあらわすように尻尾を振った。 「ボックってしぐさにとっても愛嬌があるわ」とティタニアがいった。 「そうね」とヘレンが応えた。「あれだけ尻尾...</description>
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      <title>幽霊書店 — 第九章 ふたたび物語の進行は遅れる</title>
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      <description>ロジャーは店のなかで静かな晩を過ごしていた。頭の上に霧のようなたばこ の煙をうかべながら、机にむかって書籍業に関する偉大な著作の第十二章の執 筆にいそしんだ。この章は（残念なことに最初から最後まで夢想に過ぎなかっ たが）「一流大学名誉文学博士号授与記念講演」として発表されるべきもので あり、これを書いているとさまざまに魅惑的な可能性が頭に浮かんできて、...</description>
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      <title>幽霊書店 — 第八章 オーブリーは映画に行き、もっとドイツ語ができればと思う</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/41325/chapters/9/</link>
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      <description>本屋からいくらも離れていないところに偉大な都市ミルウォーキーの名をい ただいた小さなカフェテリアがあった。カウンターで食べ物を買い、平たい肘 掛のついた椅子に座って食べる気持ちよい食堂のひとつである。オーブリーは スープ、コーヒー、ビーフ・シチュー、ブラン・マフィンを受け取り、窓際の あいた席に持って行った。彼は注意を半分通りにむけながら食事をした。通...</description>
    </item>
    <item>
      <title>幽霊書店 — 第七章 オーブリー、間借りする</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/41325/chapters/8/</link>
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      <description>ミスタ・オーブリー・ギルバートがこの作品の主人公としてけっして理想的 な青年でないことは作者も承知している。この時期、主役の青年が左の袖にな ぜ金の山形袖章をつけていないのか。これには少々説明が必要だろう。じつを 言えば、われらがグレイ・マター広告代理店の若き社員は偏平足《フラット・ フィート》を理由に徴兵局と徴兵委員会から入隊を拒否されていたのである...</description>
    </item>
    <item>
      <title>幽霊書店 — 第六章 ティタニア、仕事を覚える</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/41325/chapters/7/</link>
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      <description>ロジャー・ミフリンは夜更かしするくせがあったが、朝起きるのも早かった。</description>
    </item>
    <item>
      <title>幽霊書店 — 第五章 オーブリーは途中まで歩き――残りは車で家に帰る</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/41325/chapters/6/</link>
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      <description>その晩、ミスタ・オーブリー・ギルバートが幽霊書店を辞し、歩いて家路に ついたとき、夜の空気は冷たく冴えわたっていた。とくに理由があったわけで はないが、地下鉄の轟音に黙想をさまたげられるよりは歩いてマンハッタンに 帰ったほうが、なんとなくいいような気がした。</description>
    </item>
    <item>
      <title>幽霊書店 — 第四章 消える本</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/41325/chapters/5/</link>
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      <description>「なあ、おまえ」その日の晩の食事のあとでロジャーはいった。「ミス・ ティタニアにうちの朗読の習慣をご披露したほうがいいと思うんだが」 「退屈じゃないかしら？」とヘレンがいった。「みんながみんな本を読んで もらうのが好きなわけじゃないから」 「あら、わたしは大好きです！」とティタニアが叫んだ。「本を読んでもら えるなんて思ってもみなかったわ。子供の時いら...</description>
    </item>
    <item>
      <title>幽霊書店 — 第三章 ティタニア到着</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/41325/chapters/4/</link>
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      <description>朝食後の最初の一服は年季の入った喫煙家にとっていささか重要な儀式であ る。ロジャーは階段の下にたたずみ、パイプの火皿に火をいれた。強烈な青い 煙がもうもうと吹き出され、急いで階段をのぼる彼の背中で渦を巻いた。その あいだ、彼の頭はもうすぐやってくる雇用人のために小さな空き部屋を準備す るという楽しい仕事のことでいっぱいだった。そして階段をのぼりきったと...</description>
    </item>
    <item>
      <title>幽霊書店 — 第二章 コーンパイプ・クラブ＊</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/41325/chapters/3/</link>
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      <description>＊読者が書店経営者でないなら、本章の後半は飛ばしていただいてかまわない。</description>
    </item>
    <item>
      <title>幽霊書店 — 第一章 幽霊書店</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/41325/chapters/2/</link>
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      <description>ブルックリンといえば、とびきりあざやかな夕映えと、女房持ちが乳母車を 押すすばらしい光景の見られる街だが、もしもあなたがそこに行くことがある なら、まことにめずしい本屋のある、とある静かな裏通りに行きあたることを 願う。 この本屋は「パルナッソスの家」という、いっぷう変わった屋号を持ち、店 をかまえた褐色砂岩のふるい快適な住居は、配管工とごきぶりが数代...</description>
    </item>
    <item>
      <title>幽霊書店 — 第一章、第二章、第三章、および第六章はもともと「ザ・ブックマン」に掲</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/41325/chapters/1/</link>
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      <description>載されたものですが、このすぐれた雑誌の編集者には再版の許可をいただいた ことを感謝します。 ロジャーは十台のパルナッソスに地方回りをさせることになりましたので、 もしかすると旅先で皆さまのお目に留まることがあるかもしれません。もしも そのような機会があれば、パルナッソス巡回書店株式会社のあらたな行商の旅 が、わたしたちの高貴な職業の、ふるくて名誉ある伝...</description>
    </item>
    <item>
      <title>苦悶の欄 — 第九章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/39287/chapters/9/</link>
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      <description>女中のセイディ・ヘイト気付で送られてきた最後の七通目の手紙を読みなが ら、カールトン・ホテルの娘が味わった気持ちは、とても言葉では言い表せな い。が、ぱらぱらと辞書をめくれば、幾つか使えそうな言葉が見つからないわ けでもないだろう。例えば「驚愕」、「怒り」、「不信」、「感嘆」などだ。 Ａの項目まで戻れば、感興（amusement）という言葉も悪くない。...</description>
    </item>
    <item>
      <title>苦悶の欄 — 第八章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/39287/chapters/8/</link>
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      <description>このようにしてテキサスの娘にとってだけでなく、ロンドンじゅうの人々に とっても落ち着かない一日がはじまった。彼女の父親は、顧問の靴磨きから先 ほどさずけられた、新たな外交上の秘密の話ではちきれそうになっていた。後 に彼はワシントンで、海外の事情通として注目を浴びる運命にあった。靴磨き が背後で彼を支えていたとは、誰も予想しなかったが、テキサスから来た男...</description>
    </item>
    <item>
      <title>苦悶の欄 — 第七章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/39287/chapters/7/</link>
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      <description>その日の朝、彼女は殺人に関する国際法上の微妙な点について、父親に訳あ りげな質問をいくつかした。父親がほかのことに気を取られ、はなはだしく興 奮していなければ、恐らくこの質問の奇妙さに気がついていただろう。 「いいか、帰らなきゃたいへんなことになるぞ！」彼は憂鬱そうにそう告げ た。「ドイツ軍はエクス・ラ・シャペルでリエージュ攻撃に備えている。そう、 あ...</description>
    </item>
    <item>
      <title>苦悶の欄 — 第六章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/39287/chapters/6/</link>
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      <description>長く辛い戦禍の日々の中で、ロンドンの人々が、あれが最後の平和な日曜日 であったのか、と思うことになるその日は、緊張と不安に包まれ過ぎて行った。</description>
    </item>
    <item>
      <title>苦悶の欄 — 第五章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/39287/chapters/5/</link>
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      <description>娘はその言葉を聞いて落胆した。あれほど彼女を夢中にさせた謎の解決を永 遠に手に入れることなく、リヴァプールかサウサンプトンから船出する、はな はだ不幸な自分の姿を思い描いた。彼女は抜け目なく父親の心を食べ物のほう にそらそうとした。食事をするならストランド街のシンプソンズがどこよりも おいしいんですって。歩いて行ってみない？</description>
    </item>
    <item>
      <title>苦悶の欄 — 第四章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/39287/chapters/4/</link>
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      <description>この手紙が受取人の若い女性をいささかぎょっとさせたことは言うまでもな い。その日はロンドンのあまたの名所も、ほとんど彼女の興味をひかなかった。</description>
    </item>
    <item>
      <title>苦悶の欄 — 第三章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/39287/chapters/3/</link>
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      <description>テキサスの政治家の娘は、興味津々の笑みを浮かべて、木曜日の朝、カール トン・ホテルの自室でその手紙を読んだ。イチゴ狂からの手紙が彼女の心をと らえ、ひきつけたことは確かだった。その日一日、無理やり父親をひっぱって 美術館めぐりをしながら、彼女は次の日の朝をわくわくしながら熱心に待ち望 んでいる自分に気がついた。 しかし翌朝、この奇妙な文通を取り次いでい...</description>
    </item>
    <item>
      <title>苦悶の欄 — 第二章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/39287/chapters/2/</link>
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      <description>次の日は日曜日で、デーリー・メールは休刊である。その日はのろのろと足 を引きずるように過ぎた。月曜日、ジェフリー・ウエストはとてつもなく早起 きをし、通りに出て、お気に入りの新聞を捜した。それを見つけると苦悶の欄 ……それだけを見た。火曜日も希望をすてずにまた早起きした。しかしそこで 希望はついえた。カールトン・ホテルの女性は快く返事をくれなかったのだ。</description>
    </item>
    <item>
      <title>苦悶の欄 — 第一章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/39287/chapters/1/</link>
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      <description>二年前の七月、ロンドンの猛暑はほとんど我慢の限界をこえていた。いまか ら思えば当時の焼けつく大都市は、拷問部屋へつうじる控えの間のごとき役割 をはたしていたのかもしれない。つまり世界大戦という地獄のおとずれにむけ て不充分ながら下準備をととのえていたわけである。セシル・ホテルのそばに たつ、ドラッグストアのソーダ水売り場には大ぜいのアメリカ人観光客がた...</description>
    </item>
    <item>
      <title>殉情詩集 — Part 1</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/38697/chapters/1/</link>
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      <description>われ幼少より詩歌を愛誦し、自ら始めてこれが作を試みしは十六歲の時なりしと覺ゆ。いま早くも十五年の昔とはなりぬ。爾來、公《おほやけ》にするを得たるわが試作おほよそ百章はありぬべし。その一半は抒情詩にして、一半は當時のわが一面を表はして社會問題に對する傾向詩なりき。今ことごとく散佚《さんいつ》す。自らの記憶にあるものすら數へて僅に十指に足らず。然も、些の憾...</description>
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      <title>續惡魔 — Part 2</title>
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      <description>あくる日の朝、鈴木はいつものやうに庭を掃除すると、包みをかゝへて、神田の私立大學へ出かけて行つたが、夕方になつても歸つて來なかつた。三時半に電燈がついて、四時半ごろからそろ〳〵暗くなつて、追ひ追ひ風呂を沸かす刻限の近づくに隨ひ、佐伯と照子は何となく其れが氣がゝりになり出した。 「鈴木はどうしたんだらうね。大變歸りが遲いやうぢやないか。」 晚飯が出來上が...</description>
    </item>
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      <title>續惡魔 — Part 1</title>
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      <description>佐伯《さへぎ》は、頭《あたま》の工合《ぐあひ》が日に增し惡くなつて行くやうな心地がした。癲癇《てんかん》、頓死、發狂などに對する恐怖が、始終胸に蟠《わだかま》つて、其れでも足らずに、いやが上にも我れから心配の種《たね》を撒《ま》き散らし、愚にもつかない事にばかり驚き戰《をのゝ》きつゝ生《せい》をつゞけて居た。叔母が或る晚、安政の地震の話をして、もう近い...</description>
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      <title>惡魔 — Part 1</title>
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      <description>眞つ暗な箱根の山を越すときに、夜汽車の窓で山北の富士紡《ふじばう》の灯をちらりと見たが、やがて又｜佐伯《さへぎ》はうとうとと眠つてしまつた。其れから再び眼が覺めた時分には、もう短い夜がカラリと明け放れて、靑く晴れた品川の海の方から、爽やかな日光が、眞晝のやうにハツキリと室内へさし込み、乘客は總立ちになつて、棚の荷物を取り片附けて居る最中であつた。酒の力...</description>
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      <title>裁判 — Part 3</title>
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      <description>トラスク 黙っていろと言ったんだ。わたしに任せろ。どうしろと言うんだ、ラッセル？</description>
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      <title>裁判 — Part 2</title>
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      <description>ドリス うん。それからお母さんに連れられて、ヘレン叔母さんのところで夕ご飯を 食べたの。</description>
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      <title>裁判 — Part 1</title>
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      <description>第一幕 第一場 一九一三年六月二十四日午後九時三十分 ジェラルド・トラスク家の 書斎 第二場 法廷</description>
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      <title>羹 — Part 7</title>
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      <description>其の年の春、四月頃の事である。ちやうど第三學期が初まつた時分の或る日の夕方、山口が森川町の下宿の二階でぼんやりと寢そべつて居ると、そこへぶらりと橘が這入つて來た。 「やあ失敬、大分待たせた。どうだいこれから出かけるかい。」 「うん、出かけてもえゝがな。」 と云つて、山口は依然として寢ころんだまゝ、大儀さうに相手の顏をぢろぢろと上眼《うはめ》で眺めて居る...</description>
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      <title>羹 — Part 6</title>
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      <description>冬の休暇になつてから、中島と淸水は歸省して了ふ。野村と大山は旅行に出かける。山口は千駄木の安下宿へ移る。杉浦一人が、寄宿寮へ踏み止《とゞ》まつて、朶寮一番の寢室を我が物顏に橫領して居た。年末のソハ〳〵した空氣も、向陵の門内へはまるきり吹き込まない。授業の鐘は鳴らず、朝寢坊の邪魔は這入らず、いつも蒲團を敷き放しにして、森閑とした晝の靜けさに無聊を喞ち、夜...</description>
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      <title>羹 — Part 5</title>
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      <description>とう〳〵冬がやつて來た。朶寮の自修室にストーブが備へられて、敎室には朝のうちだけスチームが通るやうになつた。此の二三日、淸水はテニスと西洋人の訪問を止めて、圖書館に立て籠つてゐる。野村は碁會所通ひを好い加減にして、寮務室の二階に隱れる。ノートの整理をしたり、敎科書の不審を質《たゞ》したり、みんな試驗の準備に忙殺《ばうさい》されて、運動家の中島でさへ、野...</description>
    </item>
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      <title>羹 — Part 4</title>
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      <description>「橘さんはいらつしやいますか。電話でございます。」 と、寢室のドーアを開けて、呼び覺ました小使の聲に、宗一はふと眼を覺した。 「何、電話？」 かう云つて、夜具を捲くつて立たうとしたが、昨夜の川甚の酒が未だ頭に殘つて居て、彼はふら〳〵と昏倒しさうな懈怠《けだる》さを覺えた。二日醉ひの結果、思はず寢過ごしたものと見えて、彼の周圍の蒲團は殘らずきれいに疊まれ...</description>
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      <title>羹 — Part 3</title>
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      <description>寢室の窓から望む上野の木々の梢が、一日一日と黃ばんで來た。朝は硝子障子に靑々と冴えた空が映つて、力の弱い光線が疊の目の上へハツキリと落ちて居る。ぽんと夜具を撥ね除けて起き上ると、寢間着の肩へそよそよとつめたい風があたつて、何となく氣が引き締まるやうである。宗一は顏を洗ふついでに每日必ず浴室へ行つて、水風呂の中へ飛び込んだ。</description>
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      <title>羹 — Part 2</title>
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      <description>七十日の休暇の間、長らく人影を絕つて居た一高のグラウンドの土には、ところ〴〵草が茫々と打ち烟り、分館の廊下に挾まれた十坪ばかりの中庭は廢園の樣に荒れて、百日紅の幹の蔭に、花の汚れた紫陽花《あぢさゐ》が、惱ましげな項《うなじ》を垂れて居た。新寮の後の叢の中や、本館の煉瓦の隙間などには、晝でも蟋蟀がころ〳〵と鳴いて、遠い田舎から出て來た學生逹の胸に、「靑草...</description>
    </item>
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      <title>羹 — Part 1</title>
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      <description>汽車は沼津を出てから、だんだんと海に遠ざかつて、爪先上りの裾野の高原を進んで行くらしかつた。八月の眞晝の日光が、濃い藍色に晴れた空から眞直に射下して、折々一寸二寸ぐらゐづゝ、窓枠の緣を燒附けて居た。</description>
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      <title>火星の記憶 — Part 2</title>
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      <description>眠りは十億年もつづいたように思われた。ようやく目が覚めたとき、とてつもなく長い時間が過ぎたような気がした。視界はぼやけていたが、目の前に立つ姿は見間違いようがなかった。 アリスだ。ぼくのアリスだ――無事だったんだ。</description>
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      <title>火星の記憶 — Part 1</title>
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      <description>新聞記者は病院にたいしても客観的にならなければならない。記者の仕事は他人の心を揺さぶることで、自分の心をかき乱すことではないのだ。しかしそんなことを言ったって、いまはなんの意味もない、とメル・ヘイスティングスは思った。この病院のどこかで、アリスが生死の境をさまよっているというときには。 アリスが手術室に入ってから長すぎるほどの時間がたった。なにかまずい...</description>
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      <title>あめりか物語 — Part 7</title>
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      <description>此處へ這入込むには厭でも前なる狹い空地を通過ぎねばならぬ。空地の敷石の上には四方の窓から投捨てた紙屑や襤褸片《ぼろきれ》が蛇のやうに足へ纏付《からみつ》くのみか、片隅に板圍ひのしてある共同便所からは、流れ出す汚水が、時によると飛越し切れぬ程池をなして居る事さへあり、又、建物の壁際に沿うては、ブリキ製の塵桶《ごみをけ》が幾個《いくつ》も並べてあつて、其の...</description>
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      <title>あめりか物語 — Part 6</title>
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      <description>公園の入口に下車すると直樣二人は水邊の木蔭に步み寄り柔い靑草の上に腰を下す。見渡す眼の前の景色は白い夏雲の影を映した平かな入江を隔てゝ、夏木立の低く茂る間から農家の屋根や風車。まるで平和な和蘭畫を見るとしか思はれぬ。</description>
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      <title>あめりか物語 — Part 5</title>
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      <description>單に紐育ばかりではない、合衆國中に知れ渡つて女も男もよく人が話をするのは、ロングアイランドの海岸に建てられた「コニーアイランド」と云ふ夏の遊場の事である。淺草の奧山と芝浦を一ツにして其の規模を驚くほど大きくしたやうな處である。紐育からはブルツクリンの市街を通過る高架鐵道とハドソン河を下る蒸汽船と、水陸いづれからも半時間ほどで行く事が出來る。</description>
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      <title>あめりか物語 — Part 4</title>
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      <description>この年月の夢は今こそ誠となつた。私の決心は恐らく彼女の決心よりも迅速であつたらう。私は取るものも取りあへず其の夜示されたホテルに駈け付けると其の儘一年半ばかりの長い月日を女と二人で夢のやうに暮して了つた。</description>
    </item>
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      <title>あめりか物語 — Part 3</title>
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      <description>在留の日本人が寄集つて徒然《つれ〴〵》の雜談會が開かれると、いつも極つて各自勝手の米國觀―――政治商業界から一般の風俗人情其の中にも女性の觀察談が先づ第一を占める。</description>
    </item>
    <item>
      <title>あめりか物語 — Part 2</title>
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      <description>千九百四年の夏、聖路易市《セントルイスし》に開始された萬國博覽會を見物するのに、私には望んでも得られぬ程な好い案内者があつた。 それはＳ――と呼ぶアメリカ人で去年《さるとし》市俄古《シカゴ》の町端れの同じ下宿に泊り合した事から、懇意になつた畫家であるが、今度の博覽會にはその作をも出品して居ると云ふ上に、去る頃から丁度セント、ルイスに程遠からぬミズリ州の...</description>
    </item>
    <item>
      <title>あめりか物語 — Part 1</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/35327/chapters/1/</link>
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      <description>明治三十六年の秋十月の頃より米國に遊びて今茲明治四十年 の夏七月フランスに向ひてニューヨークを去るに臨み、日頃 旅窗に書き綴りたるものを採り集めて、あめりかものがたり と題し、謹んでわが恩師にして恩友なる小波山人巖谷先生の 机下に呈す。明治四十年十一月里昻にて永井荷風。</description>
    </item>
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      <title>雲形紋章 — 第二十三章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/35018/chapters/23/</link>
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      <description>同じ日の午後、ブランダマー卿はみずからカランにおもむき、長年フォーデング一族の事務弁護士を務めているミスタ・マーテレットを事務所に訪ね、一時間ほど主任と私室に引きこもった。</description>
    </item>
    <item>
      <title>雲形紋章 — 第二十二章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/35018/chapters/22/</link>
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      <description>ウエストレイはつらく、落ちつかない一日を過ごした。気に染まない仕事に手をつけてしまい、その責任のあまりの重さに堪えきれなかったのである。彼をさいなむ不安は、医者から生きるか死ぬかの危険な手術が必要だと宣告された者が感じる不安と同じだった。こうした状況に雄々しく堪える能力は人によって差があるが、本質的に人間は誰でも臆病者である。外科医のメスがもうすぐ生死...</description>
    </item>
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      <title>雲形紋章 — 第二十一章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/35018/chapters/21/</link>
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      <description>南東の基柱の補強に当たっていた石工頭が次の日の九時にウエストレイに会いに来た。人夫たちが夜明け直後に塔へ行ってみると、夜のうちに新たに動いた形跡が見つかったので、建築家に急いで聖堂に来てもらおうと思ったのだ。しかしウエストレイは外出していた。朝一番の汽車でカランを離れロンドンにむかったのだ。</description>
    </item>
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      <title>雲形紋章 — 第二十章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/35018/chapters/20/</link>
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      <description>ウエストレイはアナスタシアにひかれ、あるいは好意を抱き、一時はその感情を愛だと思いこもうとしたが、それも消えてなくなった。心の平静を完全に回復し、結婚の申しこみを拒否された恥辱については、申しこんだときにすでに娘の心は決まっていたのだ、と割り引いて考えることにしていた。いずれにしろブランダマー卿がとてつもない競争相手であることは認めるにやぶさかでないが...</description>
    </item>
    <item>
      <title>雲形紋章 — 第十九章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/35018/chapters/19/</link>
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      <description>結婚式はひっそりと行われた。当時カランにはそうしたニュースを伝える新聞がなかったため、町の人は「ホレイシオ・セバスチャン・ファインズすなわちブランダマー卿とカラン・ウオーフの故マーチン・ジョウリフの一人娘アナスタシアはセント・アガサズ・アット・ボウ教会にて挙式」という素っ気ない発表で好奇心を満足させるしかなかった。ミセス・ブルティールは自分の立ち会いが...</description>
    </item>
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      <title>雲形紋章 — 第十八章</title>
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      <description>二人は一瞬、真正面から顔を突き合わせた。明るい夕空のなかに浮かび上がる彼らの姿を見た人は、きっと従兄妹同士か、あるいは兄妹とすら思ったことだろう。どちらも黒い服に黒い髪、背の高さもほとんど同じだった。男は決して背は低くないのだが、娘のほうがすこぶる上背があったのだ。 アナスタシアが束の間ことばを失ったのは驚きのせいだった。つい先日まで、ドアを開けてブラ...</description>
    </item>
    <item>
      <title>雲形紋章 — 第十七章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/35018/chapters/17/</link>
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      <description>ウエストレイははねつけられた恋人の役をすこぶる良心的に演じた。結婚を申しこんで一蹴されるという一幕を厳密に型通り表現したのである。人生の灯は消えた、自分こそこの世でもっとも不幸な人間であると、自分にも母親にも言い聞かせた。「秋」と題する詩を書いたのはこの時期である。それは</description>
    </item>
    <item>
      <title>雲形紋章 — 第十六章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/35018/chapters/16/</link>
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      <description>それから一日か二日経って、ミス・ジョウリフはアナスタシアにこう尋ねた。 「今朝、ミスタ・ウエストレイから手紙を受け取ったわよね、あなた。お帰りのこと、何か言っていた？いつ帰るかって」 「いいえ、叔母さん、お帰りのことは何も。仕事の話がちょっと書いてあるだけ」 「あら、そう。それだけなの」姪の打ち解けない態度に少々傷ついた彼女は冷たくそう言った。 ミス・...</description>
    </item>
    <item>
      <title>雲形紋章 — 第十五章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/35018/chapters/15/</link>
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      <description>検死審問ではウエストレイと医者の証言以外に重要な証拠は提出されなかった。しかし実のところ、それ以外の証拠は必要なかったのだ。ドクタ・エニファーが死体を解剖し、直接の死因が頭部への打撲であることを突き止めた。しかし内臓は飲酒癖の痕跡を示し、心臓に疾患のあることは明らかだった。おそらくミスタ・シャーノールはオルガン椅子から立ち上がったとき失神し、後ろむきに...</description>
    </item>
    <item>
      <title>雲形紋章 — 第十四章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/35018/chapters/14/</link>
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      <description>ウエストレイは夜の汽車でカランに帰ってきた。十時ころ、夕食を終えようとしているときにドアがノックされ、ミス・ユーフィミア・ジョウリフが入ってきた。 「お邪魔してごめんなさいね、旦那様」と彼女は言った。「ミスタ・シャーノールのことがちょっと気にかかって。お茶の時間にいらっしゃらなかったし、そのあとも戻ってないんですよ。もしかしたらどこにいるかご存じじゃな...</description>
    </item>
    <item>
      <title>雲形紋章 — 第十三章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/35018/chapters/13/</link>
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      <description>オルガンが沈黙させられることも、礼拝が一時中止されることもなかった。サー・ジョージはカランまで来てアーチを点検し、部下の不安をからかった。その不安には根拠がないと判断したのだ。そうだな。アーチの上の壁は確かに少し動いたが、今やっている穹窿天井の修理で動くと想定される範囲内だ。古い壁が落ち着くべき場所に落ち着いただけさ――実際動かなかったとしたら、そのほ...</description>
    </item>
    <item>
      <title>雲形紋章 — 第十二章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/35018/chapters/12/</link>
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      <description>修復計画がブランダマー卿の寛大な寄付によってしかるべく修正され、作業も順調に進捗する段階に入ると、当初は細かい点までみずから厳しい監督の目を光らせていたウエストレイにも、ときには軽くくつろぐ余裕が生まれた。ミスタ・シャーノールは夕べの祈りのあと、半時間以上も演奏していることがしばしばあり、そんなときウエストレイは暇をとらえてオルガンのある張り出しにむか...</description>
    </item>
    <item>
      <title>雲形紋章 — 第十一章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/35018/chapters/11/</link>
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      <description>年老いたカリスベリ主教が亡くなり、新しいカリスベリ主教が任命された。この人選は低教会派にいささか悔しい思いをさせた。というのは新主教のウイリス博士は確固たる信念を持つ高教会派だったからである。しかしその信心深さには定評があったし、キリスト教的寛容と相手を思いやる慈愛に満ちていることはじきに理解された。 ある日曜日、朝の礼拝が終わってミスタ・シャーノール...</description>
    </item>
    <item>
      <title>雲形紋章 — 第十章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/35018/chapters/10/</link>
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      <description>ブランダマー卿の惜しみない支援のおかげで修復工事は拡充し、ウエストレイは一度ならずロンドンのサー・ジョージ・ファークワーのもとへ相談に出むかなければならなかった。ある土曜日の晩、そんな訪問からカランに帰ってきたとき、彼は自分の食事がミスタ・シャーノールの部屋に用意されていることを知った。 「夕ご飯を一緒に食べてくれるだろうと思ったんだよ」とミスタ・シャ...</description>
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    <item>
      <title>雲形紋章 — 第九章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/35018/chapters/9/</link>
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      <description>こうした注目すべき出来事のあった翌朝、郵便屋がベルヴュー・ロッジに配達した手紙の中に、恐ろしいほど興味をそそる封筒が一通混じっていた。垂れ蓋の上に宝冠模様が黒く小さく押され、表には「カラン、ベルヴューロッジ、エドワード・ウエストレイ様」と太い読みやすい字で書かれていた。それだけではない。左下の隅には「ブランダマー」という署名がはいっていたのだ。たった一...</description>
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      <title>雲形紋章 — 第八章</title>
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      <description>ミス・ジョウリフはブランダマー卿とのおしゃべりに夢中になっているに違いない。台所で待ちながらアナスタシアは、叔母がもう降りてこないのではないかと思った。彼女は強い決意で「ノーサンガー・アベイ」に集中しようとしたが、目が活字の列を追ってもさっぱり頭に入らず、挙げ句の果てにふと気がつくと、ぱらぱらと騒々しくしきりにページをめくるばかりで、かえって空想の邪魔...</description>
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      <title>雲形紋章 — 第七章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/35018/chapters/7/</link>
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      <description>ミス・ユーフィミア・ジョウリフは土曜の午後を聖セパルカ大聖堂のドルカス会の活動に充てていた。会合は国民女学校の教室で開かれ、献身的な女たちが毎週集まって貧しい人々のために服を作った。カランには少数ながらもぼろ服をまとった紳士諸君がおり、また大勢の中流階級が生活《たつき》にあえいでいたけれど、幸いなことに大都市におけるような正真正銘の極貧はほとんど見られ...</description>
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      <title>雲形紋章 — 第六章</title>
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      <description>一ヶ月後、聖セパルカ大聖堂の修復工事は軌道に乗りはじめた。南袖廊には木の足場が支柱の上に高々と組まれて、石工が内部から穹窿天井に作業の手を加えることができるようになった。この天井が建物の中でもっとも修理の必要な部分であることは疑いを入れないが、ウエストレイは他にも放っておけない危険な箇所があるという事実に目をつぶることができず、サー・ジョージ・ファーク...</description>
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      <title>雲形紋章 — 第五章</title>
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      <description>ためしに一週間住んでみたところウエストレはミス・ジョウリフの下宿の住み心地のよさに満足した。「神の手」は確かに聖堂からやや離れているが、町ではいちばんの高台にあり、建築家は食事にこだわるだけでなく、空気がさわやかで、低地でないことを極端に重視したのだ。家中どこも念入りに掃除されていることもよかったし、ミス・ジョウリフの料理も気に入った。凝ったものを作る...</description>
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      <title>雲形紋章 — 第四章</title>
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      <description>広場に面したカラン大聖堂の北面はまだ日陰だったが、中に入ると南窓から太陽が射しこみ、建物全体が素晴らしく柔らかな光の洪水に包まれていた。確かにイギリスには聖セパルカより大きな教会はあるし、この聖堂は同じ規模の修道院建築と比べ、屋根が低いために均整がとれていないという欠陥があるが、しかしそれにもかかわらずこれほど真に威厳があり、堂々とした建造物がかつてあ...</description>
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      <title>雲形紋章 — 第三章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/35018/chapters/3/</link>
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      <description>「神の手」はこの自治郡の中でもいちばんの高台にあり、ウエストレイの部屋はその三階にあった。居間の窓からは家並とそのむこうのカラン・フラット、海と町をへだてる広大な塩水性の牧草地が見渡せた。前景には赤いかわら屋根が延々と並び、中景には聖セパルカ大聖堂の、高々とかかげられた塔と屋根の大棟《おおむね》が見え、その偉容はあたりの家を残らずその壁の内に呑みこむの...</description>
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      <title>雲形紋章 — 第二章</title>
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      <description>扉を開けると建物の中に外気が勢いよく流れこんだ。雨脚はいまだに激しかったが、強く吹き出した風が清々しい潮の香りを含み、聖堂内の息苦しい、朽ち果てた雰囲気とは際だった対照をなした。 オルガン奏者は深呼吸した。 「ああ、外に出るとせいせいするな――連中の小うるさい文句から解放されて。もったいぶったろくでなしの主任司祭や、偽善者のジョウリフや、知ったかぶりの...</description>
    </item>
    <item>
      <title>雲形紋章 — 第一章</title>
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      <description>英国陸地測量部制作の地図ではカラン・ウォーフ、地元の人には単にカランと呼ばれている場所は、今でこそ海岸線から二マイルほど内陸部にあるが、かつてはもっと海寄りで、無敵艦隊との戦いに六隻の船を送り、その一世紀後にはオランダの攻撃を迎え撃つため四隻の船を送り出した由緒ある港として歴史に輝かしい名を残している。ところがやがてカル川の河口域は沈泥でふさがって港口...</description>
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      <title>腕くらべ — Part 5</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34636/chapters/5/</link>
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      <description>二三日たつと都新聞に「狂亂心の駒代」といふ見出しで一段半程の艷種が出た。去年の秋歌舞伎座の演藝會で保名の狂亂今年の春は隅田川、二度つゞいての狂亂に當りを取りめつきり賣出して今では新橋中この名妓ありと誰知らぬはなき尾花家の駒代が、しかも芝居の初日の夜、大事な〳〵濱村屋の太夫を橫取りせられ寢やうとすれど寢られねば日の出るまでも待ち明かす、あらうつゝなの妹瀨...</description>
    </item>
    <item>
      <title>腕くらべ — Part 4</title>
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      <description>山井要が尾花家の忰と知合になつたのは淺草千束町の銘酒屋である。山井は芝居や宴會の歸りは無論の事。極《ご》く眞面目《まじめ》な用件で人を訪問した歸りにも、すこし夜が深《ふ》けたかと見れば、もういかな事にも眞直に下宿屋へは歸られないで、ふら〳〵と當もなく其處《そこ》此處《こゝ》の色町をぶらつく。然し待合は前々からの借金で體《てい》よく斷られ、吉原洲崎へは懷...</description>
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    <item>
      <title>腕くらべ — Part 3</title>
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      <description>吉岡さんは會社の江田と一所に駒代の保名が出るすこし前に、待合濱崎のおかみと駒代の家の花助と半玉の花子をつれて東の鶉へ見物に來た。實はこの夏の末駒代が身受の相談に乗らなかつた時、吉岡は腹立ちまぎれに手を切らうと思つたが、さて差當つて駒代に代るべき氣に入つた藝者が見當らないので一｜圖《づ》に怒《おこ》つて見たものゝ何《ど》うやら其の始末に困《こま》つてゐる...</description>
    </item>
    <item>
      <title>腕くらべ — Part 2</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34636/chapters/2/</link>
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      <description>一時は水道の水が切れると騷いだ旱《ひでり》の八月末、暮方近くなつて突然篠つく如き夕立から一夜半日降りつゞいた大雨。がらりと晴れると時候はすつかり變つて、秋は忽ち空の色柳の葉の目にもさやけく、夜ふけた町の下駄の響車の鈴の音にも明に思知られ、路次の芥箱に鳴く蛼の聲が耳立つてせはしくなり出した。</description>
    </item>
    <item>
      <title>腕くらべ — Part 1</title>
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      <description>はしがき おのれ志いまだ定らざりし二十の頃よりふと戯れに小說といふもの書きはじめいつか身のたつきとなして數ればこゝに十八年の歳月をすごしけり。あゝ十八年曾我兄弟は辛苦をなめて十八年親の敵を打つて名を千載に傳へおのれはいたづらなる筆をなめて十八年世の憎しみを受け人のそしりをのみ招ぎけり十八年が同じ月日も用ゐかたによりて變るためしはもろこしに柳下惠といへる...</description>
    </item>
    <item>
      <title>入れかわった男 — 第二十九章</title>
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      <description>地獄の業火のような午後の熱気――奇妙なことにそれはドミニーに急接近する嵐を予告するものでもあったが――その熱気がドミニーを書斎からテラスへ向かわせた。隣の椅子にもたれていたのは、真っ白なフラノのスーツを着たエディ・ペラムだった。ブラック・ウッドの謎が解けて五日目のことだった。 「ここに呼んでくれて感謝するよ」若者はにこやかにそう言い、脇に置いてあるタン...</description>
    </item>
    <item>
      <title>入れかわった男 — 第二十八章</title>
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      <description>それから数日のあいだに奇妙な噂がドミニー邸からその近辺に広がった。つまり農場労働者から農場主へ、学校の子供から家庭へ、村の郵便局から近隣農村へと伝わったのである。となりの郡から集まってきた木こりの一団が、発動機と商売道具を駆使して、ブラック・ウッドの北の端の木や茂みを、片っ端からなぎ倒しはじめたのだ。戦争のことなどあっけなく忘れ去られた。作業がはじまっ...</description>
    </item>
    <item>
      <title>入れかわった男 — 第二十七章</title>
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      <description>それからほんの数時間後にドミニーはカールトン・ハウス・テラスから電話連絡を受けとった。その短いメッセージには毒々しいほど劇的ななにかがあった。さっそく彼は車で街を走り抜けていったが、その途中の光景には、見慣れたなかにもすでに奇妙な変化が認められた。男も女もいつも通りに仕事をしているのだが、どこを見ても明らかに呆然とした空気が漂っているのだ。道行く人はほ...</description>
    </item>
    <item>
      <title>入れかわった男 — 第二十六章</title>
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      <description>当時の日々はすべてのロンドン子に生々しい印象と、強烈な記憶を残した。そののちも、まるで日常から切り離された、異次元に属する日々ででもあるかのように、奇怪な非現実感を伴って心によみがえった。ドミニーもその日の夜のことを長く記憶していた。すなわち、バークレイ・スクエアにある町屋敷の、趣味の良い家具を備えた、くすんだ色の食堂で食事を取った夜のことを。ドミニー...</description>
    </item>
    <item>
      <title>入れかわった男 — 第二十五章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34158/chapters/25/</link>
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      <description>六ヶ月後のある朝、ターニロフとドミニーはゴルフコースを一周したあと、冷たい飲み物を手に、ラネラ・ガーデンズのニレの大木の下でのんびりとくつろいでいた。同じ頃、数百万のイギリス人は汗をかきながら昼の新聞の大見出しを呆然と見ていた。</description>
    </item>
    <item>
      <title>入れかわった男 — 第二十四章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34158/chapters/24/</link>
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      <description>次の日の朝、ドミニーが苦心して編成した狩猟隊は解散することになった。王子は車に荷物を積みこむあいだ、主人の腕を取って脇に引き寄せ、しばらく話をした。型通りの感謝の言葉を述べたあと、ぐっとくだけた調子で話しはじめた。 「フォン・ラガシュタイン、先日の話をもう一度思い出してほしいんだが」 ドミニーは頭を振って後ろをちらりと振り返った。 「ここでのわたしの名...</description>
    </item>
    <item>
      <title>入れかわった男 — 第二十三章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34158/chapters/23/</link>
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      <description>シーマンはすぐさま王女の部屋へ足を運んだわけではなかった。代わりに召使いたちの居住区へ行き、執事の部屋をノックした。返事はなかった。取っ手を回してみたが無駄だった。鍵がかかっているのだ。隣の部屋から、背の高い、真面目な顔つきをした、地味な黒服の男が出てきた。 「今晩外国からいらっしゃったお客様をお捜しですか？」 「ああ。鍵をかけて閉じこもったのかな？」...</description>
    </item>
    <item>
      <title>入れかわった男 — 第二十二章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34158/chapters/22/</link>
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      <description>ドミニー邸のその日の晩は、外から新たな客の一団を迎えたという点を除けば、実質的には最初の晩のくり返しに過ぎなかった。晩餐のあと、ドミニーはしばらく席を外し、ロザモンドの腕を取って戻ってきた。彼女はお祝いの言葉をかける近隣の人々に愛らしく応対していた。すぐに彼女の周りに小さな宮廷ができた。晩餐の席に連なったドクター・ハリソンは、その輪の外で彼女の軽やかな...</description>
    </item>
    <item>
      <title>入れかわった男 — 第二十一章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34158/chapters/21/</link>
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      <description>ミスタ・ルードヴィッヒ・ミラーは見たところすこしも警戒心を抱かせるような人物ではなかった。彼は執事の私用の居間で丁重きわまりないもてなしを受け、その歓待ぶりに充分満足しているようだった。ドミニーが入り口にあらわれると、彼は立ちあがって不動の姿勢を取った。軍人らしい挙措がいくつか眼についたが、それがなければ非常に社会的地位のある、隠退した商人としてどこで...</description>
    </item>
    <item>
      <title>入れかわった男 — 第二十章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34158/chapters/20/</link>
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      <description>ターニロフ王子と主人は腕を取り合って長々と続く樅の木立の裏の、雪に覆われた斜面を登っていった。二人がめざしていたのは小さな旗つきの棒だった。そこが彼らの立ち位置なのである。見渡す限り人影はなかった。他の撃ち手たちは傾斜のきつい、けれども回り道をしないですむ道筋を辿ることにしたのだ。 「フォン・ラガシュタイン、勝手だが名前で呼ばせていただく。知っていると...</description>
    </item>
    <item>
      <title>入れかわった男 — 第十九章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34158/chapters/19/</link>
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      <description>東の空には依然として黒っぽい灰色の雪雲が低く垂れこめていた。そこに一条のか細い紅色の線が走り、朝の訪れを告げた。風は止み、幽霊でも出そうな気配が静かに薄明のなかに漂っていた。ドミニーは屋敷の裏から外に出て、まだ誰も踏んでいない雪の道をロザモンドの窓の下へと進んでいった。そこに立った彼の唇から小さな驚きの声が漏れた。テラスから踏み段を降り、庭園を抜けてま...</description>
    </item>
    <item>
      <title>入れかわった男 — 第十八章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34158/chapters/18/</link>
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      <description>医師はいつもの傍若無人な口ぶりで、この時ならぬ訪問が内密の話をするためのものだと言った。キャロラインはさっそく席をはずし、二人の男は大広間に取り残された。ビリヤードルームと客間の灯りは消えていた。数人の召使いを除いて、屋敷のなかの人間はみな部屋に引っこんでいた。 「サー・エヴェラード。今回のドミニー夫人のお帰りにはまったく驚いた。明日の朝、君と話をする...</description>
    </item>
    <item>
      <title>入れかわった男 — 第十七章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34158/chapters/17/</link>
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      <description>これほどいたましいものは見たことがないとドミニーは思った。それは広間の片隅、暖炉の前に立つ女が奇妙に疲れた眼から彼に注ぐ、半ば希望にあふれ半ば不安にさいなまれた真剣なまなざしだった。彼女の横には快活で人なつっこそうな制服姿の看護婦がいた。さらにその後ろには宝石箱を抱えた小間使いがいた。黒いベールをかきあげたロザモンドは片足を炉格子にかけて立っていた。ド...</description>
    </item>
    <item>
      <title>入れかわった男 — 第十六章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34158/chapters/16/</link>
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      <description>偉観を誇るドミニー邸の食事室といえども、さすがにその晩は、マホガニー製の大テーブルをぎりぎりいっぱいまで広げなければならなかった。最近閣僚に指名されたジェラルド・ワトソン判事を含む泊まりがけの客のほかに、近隣から州統監や名士たちを数名招待していたのだ。キャロラインは州統監とターニロフに挟まれ、女主人の役をそつなくこなしていたが、身を入れてそうしていたわ...</description>
    </item>
    <item>
      <title>入れかわった男 — 第十五章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34158/chapters/15/</link>
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      <description>ノーフォーク狩猟の会のいちばん新しい、いちばん人気のある会員、サー・エヴェラード・ドミニー男爵は、ドイツから戻って数ヶ月後のある午後、裏の小山の頂きから屋敷の菜園まで長々と続く森の一角に立っていた。彼の左手には適当な距離を置いて四人の狩猟隊のメンバーが並んでいた。彼の隣にはミドルトンがトネリコの杖をついて立っていて、勢子の近づいてくる音を聞いていた。反...</description>
    </item>
    <item>
      <title>入れかわった男 — 第十四章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34158/chapters/14/</link>
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      <description>二人のあわただしい旅の最中に、シーマンは連れの様子を見て考え込んでしまうことが幾度かあった。ドミニーはそれこそ極端に無口になった。過去という網に絡め取られ、心を奪われ、そのあまり夢のなかにでもさまよいこんだようだった。必要なときしか喋らず、外界が一切の意味を失ってしまったようだった。旅も終わりに近づいたとき、暖房の効きすぎた簡素なコンパートメントのなか...</description>
    </item>
    <item>
      <title>入れかわった男 — 第十三章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34158/chapters/13/</link>
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      <description>シーマンの愛想のいい顔に陰りがあった。その日の朝、ミスタ・マンガンが出発したあと、オーバーコートに身をくるみ、主人と二人でテラスを散歩しているときのことだ。彼はいささか唐突に思っていることを相手にぶつけた。 「さっそくわたしが訪ねてきた目的について話そう。君にとっては素晴らしいニュースだ。しかしその前に……」 「決行のときが来たのか？」ドミニーは怪訝そ...</description>
    </item>
    <item>
      <title>入れかわった男 — 第十二章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34158/chapters/12/</link>
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      <description>ドミニーは不思議なほど穏やかな午後を過ごした。彼と接触した人々にとってもこの上なく満ち足りた午後だった。愛想よくお世辞を並べるミスタ・マンガン。地主は満足し、借地人は大喜びというめったに見られぬ光景に、思わず心を弾ませる代理人のミスタ・ジョンソン。この二人を左右に従え、彼はドミニー家の地所をほぼぐるりと一回りしてきたのだった。帰宅した時間は遅かった。し...</description>
    </item>
    <item>
      <title>入れかわった男 — 第十一章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34158/chapters/11/</link>
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      <description>ドミニーは夢のなかをさまようように部屋を出た。階段を降りて自室に戻ると、帽子と杖をつかみ、見る間に庭を覆いつくさんとする海霧のなかへ踏み出した。氷のように冷たい蒸気の雲には、北極の寒気がありったけ詰めこまれている。しかしそれにもかかわらず彼の額は熱く、脈は燃えるようだった。壁に囲まれた庭の裏門を抜けると、広々とした沼地があった。あちらこちらに水路が走り...</description>
    </item>
    <item>
      <title>入れかわった男 — 第十章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34158/chapters/10/</link>
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      <description>悪夢がゆっくりと現実の恐怖に変わっていった。その最初のもつれた瞬間に、ドミニーはアフリカに戻って、敵に喉元を押さえつけられている自分を見ていた。それから目覚めた記憶がどっとばかりに押し寄せてきた――広大な屋敷の静けさ、自分の身体が横たわる、黒い樫材の四柱式寝台、そのまわりで謎めいた衣擦れの音をたてる重い垂れ布、そして喉を軽く突き刺す命に関わる何か――そ...</description>
    </item>
    <item>
      <title>入れかわった男 — 第九章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34158/chapters/9/</link>
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      <description>「お宅のワイン貯蔵庫には心から祝福の言葉を申しあげます、サー・エヴェラード」その晩、客はポートワインを口にしながらそう言った。「これほどの七十年代ものは実に久しぶりです。しかも、わたしがロンドンから寄こした新しい雇い人――パーキンスですが――彼によると、これがまだたっぷり残っているそうですよ」 「じっくり寝かしてあったからね」 「夕食の前に貯蔵庫のリス...</description>
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      <title>入れかわった男 — 第八章</title>
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      <description>「先祖代々のお屋敷が見えてきましたよ」車が草の生えた並木道の最初のカーブを曲がり、ドミニー邸が見えてきたときミスタ・マンガンが言った。「しかも実に立派なお屋敷だ！」 相手は返事をしなかった。ほんの少し前から嵐が吹きはじめ、彼はまるで寒気がするかのように、帽子を目深にかぶり、コートの襟を耳まで立てたのだった。屋敷がはっきりと見えてきた。正面玄関の両側には...</description>
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      <title>入れかわった男 — 第七章</title>
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      <description>カールトン・ハウス・テラスの大使官邸では晩餐会に引き続き小さな歓迎会が催された。大使のターニロフ王子は最後の客である妻の従姉妹アイダーシュトルム王女に別れを告げていた。彼女は王子を脇に引き寄せた。 「大使、今晩ずっとお話したいと思っていたのです」 「わたしもです、ステファニー。まだ時間は早い。ちょっと座りましょうか」 彼は長椅子に彼女を導こうとしたが、...</description>
    </item>
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      <title>入れかわった男 — 第六章</title>
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      <description>ドミニーはその晩、カールトンホテルの自室でシーマンを待ちながらひどく落ち着かない一時間を過ごした。ようやくシーマンがあらわれたのは七時になろうとする頃だった。 「分かっているのかね？七時にアイダーシュトルム王女のお宅に伺う予定だってことは」 「そうだってね」とシーマンは答えた。「しかし心配することはないさ。王女は分別もあるし、政治に対して見識のある女性...</description>
    </item>
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      <title>入れかわった男 — 第五章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34158/chapters/5/</link>
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      <description>ウースター・ハウスは一見したところなんの理由もなくリージェンツ・パークのど真ん中に建てられた、半ば宮殿のような邸宅の一つである。以前、とある公爵が親しい友人の摂政王太子にそそのかされて入手し、その後代々引き継がれ、百万長者街道パークレーンに軒をつらねる無様な邸宅に対して、無言の非難を浴びせつづけた。ドミニーはまず門衛詰め所で革のチョッキとシルクハットの...</description>
    </item>
    <item>
      <title>入れかわった男 — 第四章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34158/chapters/4/</link>
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      <description>ミスタ・マンガンはレストランに入る前に小さな応接間で知り合いとしばらく歩きながらおしゃべりをした。一方、食事に招待したドミニーは支配人に話しかけ、通りかかったウエイターにカクテルを注文し、両手を背中に回して大広間に入ってくる男女を観察していた。外国暮らしの長かった人間が同国人を好奇の眼で見ている、そんな様子だった。彼は混雑する広間を通り抜ける若者の一団...</description>
    </item>
    <item>
      <title>入れかわった男 — 第三章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34158/chapters/3/</link>
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      <description>リンカーンズ・インの弁護士ミスタ・ジョン・ランバート・マンガンは助手が差し出した名刺を見てあっけにとられた。驚きはすぐに狼狽と入り混じった。 「まいったな。これを見ろよ、ハリソン」そう言って、それまで相談をしていた部長に名刺を渡した。「ドミニー――サー・エヴェラード・ドミニーがイギリスに戻ってきたよ！」 部長は細長い名刺を一目見てため息をついた。 「こ...</description>
    </item>
    <item>
      <title>入れかわった男 — 第二章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34158/chapters/2/</link>
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      <description>翌日の朝、ドミニーは遅くまで眠りをむさぼった。夢も見ずにぐっすりと眠ってようやく目覚めると、彼は野営地の奇妙な静けさに気がついた。医師が彼を見にやってきて、朝の挨拶のあと、すぐにその説明をした。 「閣下は本国から重要な知らせを受け取り、ダルエスサラームからの使節を出迎えに行きました。三日間は戻りません。戻るまであなたには賓客として留まってほしいとのこと...</description>
    </item>
    <item>
      <title>入れかわった男 — 第一章</title>
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      <description>大事件の発端となるあの災難は、エヴェラード・ドミニーが小一時間も低木の藪を押しわけ、細く渦巻きながら立ちのぼる煙をめざし、子馬に最後の絶望的な努力をしいて巨大な夾竹桃の茂みを通り抜け、前のめりに頭から小さな空き地へ転落した時点にはじまる。翌日の朝、気がつくと、彼は数ヶ月ぶりにリンネルのシーツに包まれて、キャスターつきのベッドに横たわっており、過酷な太陽...</description>
    </item>
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      <title>法螺男爵旅土産 — Part 3</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34084/chapters/3/</link>
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      <description>拙生《せつせい》が銀《ぎん》の手斧《てをの》を探《さが》して一｜度《ど》月《つき》の世界《せかい》へ行《い》つた事《こと》は、既《すで》に諸君《しよくん》御承知《ごしようち》の通《とほ》りである。其後《そのご》拙生《せつせい》はもつと愉快《ゆくわい》な方法《はうはふ》で再《ふたゝ》び同地《どうち》へ旅行《りよかう》し、姑《しばら》く滯在《たいざい》の間...</description>
    </item>
    <item>
      <title>法螺男爵旅土産 — Part 2</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34084/chapters/2/</link>
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      <description>拙生《せつせい》は第《だい》一｜等《とう》の英國《えいこく》軍艦《ぐんかん》大砲《たいはう》百｜門《もん》乗組員《のりくみゐん》四百｜人《にん》といふのに乗《の》つて、北《きた》アメリカに向《むか》ひポーツマスを出發《しゆつぱつ》した。セントローレンス川《がは》へ三百リーグといふ所《ところ》に着《つ》くまでは、別《べつ》に話題《おはなし》になるやうな事...</description>
    </item>
    <item>
      <title>法螺男爵旅土産 — Part 1</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34084/chapters/1/</link>
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      <description>拙生《せつせい》の髯《ひげ》が丁年《ていねん》到逹《たうたつ》の宣言《せんげん》をする以前《まへ》、もつと碎《くだ》いて申《まを》せば、最早《もはや》子供《こども》でもなく、さりとて未《いま》だ大人《おとな》でもない頃《ころ》、拙生《せつせい》は世界《せかい》觀光《くわんくわう》の渇望《かつばう》を口癖《くちくせ》のやうに洩《も》らしてゐた。ところが待...</description>
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    <item>
      <title>血笑記 — Part 7</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34013/chapters/7/</link>
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      <description>「…生存上《せいぞんじやう》新生面《しんせいめん》を開《ひら》くのは諸君《しよくん》の任務《にんむ》であります、」と辯士《べんし》は叫《さけ》むだ。此人《このひと》は「戰爭《せんさう》を戢《や》めよ」と書《か》いた文字《もじ》が皺《しわ》でよれ〳〵になつた旗《はた》を揮《ふ》りながら、手《て》で釣合《つりあひ》を取《と》つて、辛《から》うじて小《ちひ》...</description>
    </item>
    <item>
      <title>血笑記 — Part 6</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34013/chapters/6/</link>
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      <description>…土間《どま》の十一に居《ゐ》た。右左《みぎひだり》から誰《だれ》の腕《うで》だかに直《ひた》と身《み》を挾《はさ》まれながら、周圍《まはり》を見廻《みまは》はすと、ズツと向《むか》ふまで一｜面《めん》に凝《ぢツ》と据《す》ゑた人《ひと》の首《くび》が薄暗《うすぐら》い中《なか》に列《なら》んでゐるのが、舞臺《ぶたい》の火影《ほかげ》を受《う》けて微《...</description>
    </item>
    <item>
      <title>血笑記 — Part 5</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34013/chapters/5/</link>
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      <description>…私《わたし》は湯槽《ゆぶね》に涵《つか》つてゐた。弟《おとうと》は起《た》つたり、居《ゐ》たり。タオルや石鹼《しやぼん》を取上《とりあ》げて、近々《ちか〴〵》と近視眼《ちかめ》の側《そば》へ持《も》つて行《い》つたり、又《また》舊《もと》へ戾《もど》したりして、狹《せま》い部屋《へや》の中《なか》でまご〳〵してゐたが、頓《やが》て壁《かべ》に對《むか...</description>
    </item>
    <item>
      <title>血笑記 — Part 4</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34013/chapters/4/</link>
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      <description>…それは味方《みかた》であつた。最後《さいご》の一ケ｜月《げつ》は命令《めいれい》も計畫《けいくわく》も齟齬《くひちが》ひ、敵《てき》も味方《みかた》も行動《かうどう》が紛《もつ》れ〳〵て妙《めう》な工合《ぐあひ》であつたが、然《さ》ういふ中《なか》でも敵襲《てきしふ》のある事《こと》は豫期《よき》してゐた。敵《てき》といふのは即《すなは》ち第《だい》...</description>
    </item>
    <item>
      <title>血笑記 — Part 3</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34013/chapters/3/</link>
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      <description>…もう眠《ねむ》つてゐたら、ドクトルが窃《そツ》と突《つゝ》いて覺《おこ》すから、私《わたし》は目《め》を覺《さま》すが否《いな》、呀《あツ》といつて跳起《はねお》きた。誰《だれ》でも覺《おこ》されると、斯《か》う聲《こゑ》を立《た》てたものだつた。で、天幕《テント》の外《そと》へ駈出《かけだ》さうとする私《わたし》の手《て》を、ドクトルは確《しか》と...</description>
    </item>
    <item>
      <title>血笑記 — Part 2</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34013/chapters/2/</link>
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      <description>…蛇《へび》のやうに絡《から》み付《つ》く。現《げん》に其《その》友人《いうじん》が見《み》て來《き》ての話《はなし》に、鐵條網《てつでうもう》の一｜端《たん》がプツリと切《き》れて、ピンと跳返《はねかへ》つて、クル〳〵と兵《へい》三｜人《にん》に絡《から》み付《つ》いた。齒《は》が軍服《ぐんぷく》を突拔《つきぬ》いて肉《にく》に喰込《くひこ》むから、...</description>
    </item>
    <item>
      <title>血笑記 — Part 1</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34013/chapters/1/</link>
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      <description>始《はじめ》て之《これ》を感《かん》じたのは某街道《なにがしかいどう》を引上《ひきあ》げる時《とき》であつた。もう十｜時間《じかん》も歩《ある》き續《つゞ》けて、休憇《きうけい》もせず、歩調《ほてう》も緩《ゆる》めず、倒《たふ》れる者《もの》は棄《す》てゝ行《ゆ》く。敵《てき》は密集團《みつしふだん》となつて追擊《つゐげき》して來《く》るのだ。今《いま...</description>
    </item>
    <item>
      <title>友情 — Part 3</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/33307/chapters/3/</link>
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      <description>彼はもう恐怖なしに嬉しかった。 「大宮が居なかったらどんなに淋しかったでしょう。僕は大宮に慰められて勇気をとり戻すことが出来たことが何度あるかわかりません」 「本当にあなた方はいいお友達ね。それでこそ本当のお友達だといつも武子さんと話しておりますの」 其処へ仲田が来た。 「病気だったって、もういいのかい」 「ああ、もうすっかりいい」 「昨日大宮君や武子...</description>
    </item>
    <item>
      <title>友情 — Part 2</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/33307/chapters/2/</link>
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      <description>大宮の別荘も鎌倉にあった。大宮にすすめられて、むしろすすめられるようにして野島も鎌倉に行って、大宮と一緒に生活した。</description>
    </item>
    <item>
      <title>友情 — Part 1</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/33307/chapters/1/</link>
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      <description>野島が初めて杉子に会ったのは帝劇の二階の正面の廊下だった。野島は脚本家をもって私《ひそ》かに任じてはいたが、芝居を見る事は稀《まれ》だった。此日も彼は友人に誘われなければ行かなかった。誘われても行かなかったかも知れない。その日は村岡の芝居が演《や》られるので、彼はそれを読んだ時から閉口していたから。然し友達の仲田に勧められると、ふと行く気になった。それ...</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第二十七章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/27/</link>
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      <description>ミスタ・ホプキンスはミセス・バンティングとかわいらしいまま娘に恐怖の部屋を見せようとしたが、むだだった。「まっすくうちに帰りましょう」とミスタ・スルースの女主人は断固として言った。デイジーはおとなしく同意した。どういうものか娘は混乱し、下宿人が突然姿を消したことにかすかな不安を感じていた。このいつにない気持ちはまま母の顔に浮んだ驚きと、苦痛の表情によっ...</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第二十六章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/26/</link>
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      <description>それまでマダム・タッソーの蝋人形館はミセス・バンティングにとって楽しい思い出の場所だった。彼女とバンティングが付き合っていたとき、午後のデートをよくここで過ごしたものだった。</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第二十五章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/25/</link>
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      <description>デイジーの十八回目の誕生日は何ごともなく朝を迎えた。父親は十八歳になったらプレゼントしようといつも約束していたものを与えた――時計である。かわいらしい小さな銀時計で、彼が幸せだった最後の日に中古で買ったものだ。それも今思うとずいぶん昔のような気がした。 ミセス・バンティングは銀時計など贅沢すぎるプレゼントだと思ったが、なにしろあまりにも気分が落ち込み、...</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第二十四章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/24/</link>
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      <description>当然ながらバンティングはそれ以後、絶えずうずくような恐怖と緊張にさらされつづけた。 この不幸な男は悶々と悩んだ。いったいどうしたらいいのだろう。そのときどきの気分と心理状態によって彼は大きく異なる行動方針のあいだを揺れ動いた。</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第二十三章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/23/</link>
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      <description>午後はずっと雪が降りつづいた。三人は座ったまま耳をすまし、待っていた。バンティングと妻は何を待っているのか分からなかった。デイジーはジョー・チャンドラーの来訪を告げるノックの音を待っていた。</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第二十二章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/22/</link>
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      <description>バンティングは驚くほど気分が楽になった。ほとんど自分が何をしているのか分からないような状態で、彼はコンロに火をつけ、妻のために朝の紅茶を淹れたのだった。 その最中に突然彼女の声が聞えた。 「バンティング！」彼女は弱々しく叫んだ。「バンティング！」呼びかけに応じて彼女のところへ飛んで行き、「なんだい」と言った。「どうしたんだ。お茶はすぐできるよ」彼はやや...</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第二十一章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/21/</link>
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      <description>ひどく寒い夜だった――気温がぐんと下がり、強い風が吹き、雪もよいの、誰もができることなら外には出たくないと思うような夜だった。 しかしそのときバンティングは満足しきって仕事から家に帰る途中だった。すばらしい幸運が今晩、彼にふりかかったのだ。まったく思いも寄らぬ幸運だっただけになおさらうれしかった！彼は誕生パーティーで給仕の役を務めたのだが、パーティーの...</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第二十章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/20/</link>
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      <description>審問は定刻にはじまったから今からでも遅くはないのだが、ミセス・バンティングはどんなに強制されてもイーリングに行く気力はないと思った。すっかりくたびれはて、何も考えることができないくらいだった。</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第十九章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/19/</link>
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      <description>警察の友人が戻ってきたとき、ミセス・バンティングはずいぶん長いことそこに座っていたような気がした。実際は十五分程度であったのだけれど。 「さあ、行きましょう」と彼はささやいた。「もうすぐはじまります」 彼女は彼について廊下に出、急な石の階段をのぼり、検死法廷に入っていった。</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第十八章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/18/</link>
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      <description>どんなに苦しい体験も二回目になると恐怖感は薄れ、勇気を持って対処できるようになる。さほど困難でなくても、まったく新しい経験をするときのほうがはるかに気骨が折れるものだ。 ミセス・バンティングはすでに一度死因審問に出席したことがあった。しかも証人としてである。それはどことなくぼやけた彼女の記憶のなかでもくっきりと鮮明に思い起こすことのできる数少ない出来事...</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第十七章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/17/</link>
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      <description>下宿人が彼女の台所で奇怪な実験をしたその次の夜、ミセス・バンティングはぐっすりと眠ることができた。疲れすぎてぐったりしていた彼女は、枕に頭をのせるやいなや眠りに落ちてしまった。 だからこそ次の日は、朝早く目を覚ましたのだろう。バンティングが持ってきてくれたお茶を飲む暇もなく、彼女は起き上がり身支度を調えた。</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第十六章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/16/</link>
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      <description>バンティングはそわそわと部屋のなかを歩きはじめた。窓のところへ行ってしばらく急ぎ足の人々を眺め、それから煖炉のほうへ戻ってきて椅子に座った。 しかし長くはそこにじっと座っていられなかった。新聞をちらりと見て、椅子から立ち上がり、またもや窓辺へ寄った。 「もうちょっと静かにしてほしいわ」と、妻がとうとうそう言った。それから数分後には「あなた、帽子とコート...</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第十五章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/15/</link>
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      <description>バンティング夫婦はその晩、早めに床についたが、ミセス・バンティングはずっと起きていようと決心していた。その夜何時に下宿人が台所に降りてきて実験を行うのか、突き止めるつもりだった。とりわけどのくらいのあいだ台所にいるのかを知ろうと思っていた。 しかしその日は長い、ひどく不安な一日だったので、彼女は間もなく眠り込んでしまった。</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第十四章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/14/</link>
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      <description>「ようやくお帰りだぞ。よかった、よかった、エレン。番犬だってうちにいれてやりたい夜だものな」 バンティングの声には安堵感が満ちていたが、そう言いながら振り返って妻を見ることはしなかった。かわりに手にした夕刊を読みつづけた。</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第十三章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/13/</link>
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      <description>デイジーの父親とまま母は玄関に並んで、娘とチャンドラー青年が闇のなかへと歩み去るのを見送った。</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第十二章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/12/</link>
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      <description>「デイジーが行かなくってどうするの。当たり前じゃない。いつも思う通りになるとは限らないのよ――少なくともこの世の中では」 夫もまま娘も同じ部屋にいたのだが、ミセス・バンティングは特にどちらかにむかって話しているようには見えなかった。彼女はテーブルのそばに立ってまっすぐ前をむき、しゃべっているときはバンティングからもデイジーからも視線をそらしていた。その...</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第十一章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/11/</link>
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      <description>何のことはない、ジョーが訪ねてきただけだった。なぜかバンティングさえ今では彼のことを「ジョー」と呼んでいた。昔はほとんど「チャンドラー」だったのだけれども。 ミセス・バンティングは玄関のドアを細めに開けて見た。見知らぬ人間に強引になかに入られたくなかったのだ。</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第十章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/10/</link>
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      <description>これこそ願ってもない幸運だった。夫とデイジーがチャンドラー青年といっしょに出かけているあいだ、ミセス・バンティングはほぼ一時間近くも一人で家にいることができたのだから。 ミスタ・スルースは昼間はほとんど外出しないのだが、この日の午後はお茶をすませて薄暗くなってきた頃に、急に新しい服が一そろいほしいと言いだした。女主人は買い物に出ると聞いて熱心に頷いた。</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第九章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/9/</link>
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      <description>大きなアーチ型の入り口をくぐり抜け、巧妙化した犯罪に戦いを挑む偉大な組織、ニュー・スコットランド・ヤードの心臓部に入り込んだとき、デイジー・バンティングはロマンスの王国に自由に出入りできるようになったのだと思った。三人を乗せてあっという間に上の階に連れていってしまうエレベーターも彼女にとっては新しい、胸のときめく体験だった。デイジーは今までずっと｜伯母...</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第八章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/8/</link>
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      <description>午餐を出すのが普段よりもだいぶ遅れたためだろう、二階でおいしいカレイの蒸し焼きを食べたミスタ・スルースの食欲は、一階でおいしい豚の焼き肉を食べた女主人のそれをはるかに上回った。 「お加減はよくおなりでしょうか、旦那様」ミセス・バンティングはお盆を持っていったとき恐る恐る聞いてみたのだった。</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第七章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/7/</link>
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      <description>ちょうど時計が十二時を打っているとき、四輪馬車が門の前に停まった。 デイジーを乗せてきたのだ――頬を染め、興奮し、眼元が笑っているデイジーを。その姿を見ればどんな父親も思わず相好を崩しただろう。 「｜伯母さん《オールド・アーント》がね、天気が悪かったら馬車で行きなさいって言ったの」彼女は嬉しそうにはしゃいだ。</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第六章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/6/</link>
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      <description>朝食の仕度はすっかりできていたけれど、ミセス・バンティングは彼が下宿人になってからはじめて呼び出しにすぐに応じなかった。しかしもう避けられない二回目の鈴の音がしたときは――その古風な家に電気のベルは取り付けられていなかった――決心して二階へあがった。</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第五章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/5/</link>
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      <description>それからの数日はどれほど静かに、どれほど平穏無事に、どれほど楽しく過ぎていっただろう。すでに日々の生活に一定のリズムが生まれつつあった。ミスタ・スルースのお世話はミセス・バンティングが疲れることなく、余裕を持ってすることができるちょうどいい仕事だった。</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第四章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/4/</link>
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      <description>ミセス・バンティングは翌日の朝、実に、実に、久しぶりに、幸せな気分で目を覚ました。 しばらくはどうしていつもとちがう気分でいるのか、わけが分からなかったが、次の瞬間、はっと思い出した。</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第三章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/3/</link>
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      <description>しかし下にいるバンティングにすばらしい幸運が訪れたことを伝えられる言いしれぬ幸福感と喜びに比べれば、少々冷たくはねつけられたことくらい何だというのか。</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第二章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/2/</link>
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      <description>ミセス・バンティングはぎくりとして立ちあがり、暗闇のなかで耳をすました。ドアの下から差しこむ光が闇をいっそう濃くしている。ドアのむこうではバンティングが座って新聞を読んでいる。 その時、ふたたびあのびくびくとした、自信なさげなノックが大きく二回響いた。いいことを知らせるノックじゃないわ、と彼女は思った。下宿を探している人なら鋭く、間をおかず、大胆に、自...</description>
    </item>
    <item>
      <title>下宿人 — 第一章</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32978/chapters/1/</link>
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      <description>ロバート・バンティングと妻のエレンは、弱々しく燃える埋み火のまえに座っていた。 この部屋は、彼らの家が不衛生とまでは言わないまでも、すすけたロンドンの通りに面していることを考えると、ことのほか清潔で手入れが行き届いていた。ふらりと訪れた客、特にバンティング夫婦より上の階級に属する客は、その居間のドアを開けるやいなや、二人の姿に安らかな結婚生活の、暖かく...</description>
    </item>
    <item>
      <title>何處へ — Part 15</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32941/chapters/15/</link>
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      <description>當《あ》てにもしないが、萬一《まんいち》お樂《らく》が私《わたし》を尋《たづ》ねて來《く》るかも知《し》れんと心待《こゝろま》ちにすることもあつた。小山《こやま》は十日《とをか》も顏《かほ》を見《み》せぬ。 その中《うち》五｜月《ぐわつ》は暮《く》れる。私《わたし》は豐島《とよしま》同居《どうきよ》が影響《えいきやう》して、月末《げつまつ》の拂《はら》...</description>
    </item>
    <item>
      <title>何處へ — Part 14</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32941/chapters/14/</link>
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      <description>私《わたし》は學校《がくかう》の生徒《せいと》に人望《じんばう》のある方《はう》でもないが、敢《あえ》て不評判《ふひやうばん》でもない、職務《しよくむ》に精勤《せいきん》する方《はう》ではなく、病《やまひ》と稱《しやう》して缺席《けつせき》することも多《おほ》いが、免職《めんしよく》される程《ほど》怠《なま》けはせぬ。增給《ざうきう》も覺束《おぼつか》...</description>
    </item>
    <item>
      <title>何處へ — Part 13</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32941/chapters/13/</link>
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      <description>「加瀨《かせ》さんは本當《ほんと》にお柔《やさ》しいんで御座《ござ》いますね、それにお若《わか》い癖《くせ》によく何《なに》にでも氣《き》がお付《つ》きなさいますし」と、老婆《ばあさん》は指先《ゆびさき》で耳《みゝ》の後《うしろ》を撫《な》で〳〵、世間《せけん》話《ばなし》から加瀨《かせ》の噂《うはさ》に移《うつ》つた。 「暫《しば》らく會《あ》はん間...</description>
    </item>
    <item>
      <title>何處へ — Part 12</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32941/chapters/12/</link>
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      <description>工場《こうぢやう》の奧《おく》に疊《たゝみ》を敷《し》いた一室《ひとま》がある。狹《せま》い一｜方《ぽう》口《ぐち》で丁度《ちやうど》袋《ふくろ》のやうだ。滅多《めつた》に掃除《さうじ》もせねば隅々《すみ〴〵》には埃《ほこり》が積《つ》もり、壁《かべ》は一｜體《たい》に黑《くろ》ずんでゐる。棚《たな》にある磨滅《まめつ》した活字《くわつじ》、開《ひら》...</description>
    </item>
    <item>
      <title>何處へ — Part 11</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32941/chapters/11/</link>
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      <description>太平洋岸《たいへいやうがん》の激浪《げきらう》怒濤《どとう》、東北《とうほく》地方《ちはう》の荒凉《かうれう》たる光景《くわうけい》は見馴《みな》れてゐるが、これ等《ら》はどうも予《よ》の性《しやう》に合《あ》はぬ。それでこの秋《あき》は局面《きよくめん》を變《か》へて、瀨戶内海《せとないかい》の沿岸《えんがん》に寫生《しやせい》旅行《りよかう》をした...</description>
    </item>
    <item>
      <title>何處へ — Part 10</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32941/chapters/10/</link>
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      <description>或日《あるひ》同鄉《どうきやう》の友人《いうじん》葛原《くづはら》勇吉《ゆうきち》が訪《たづ》ねて來《き》て、盛《さか》んにこの宿《やど》を褒《ほ》め、「僕《ぼく》も少《すこ》し勉强《べんきやう》したいから、靜《しづ》かな家《うち》へ移《うつ》りたい、此家《こゝ》には置《お》いて吳《く》れんだらうか」と云《い》つたが、自分《じぶん》はこの男《をとこ》の...</description>
    </item>
    <item>
      <title>何處へ — Part 9</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32941/chapters/9/</link>
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      <description>彼《か》れの宿《やど》の前《まへ》は欝蒼《うつさう》たる山《やま》、木樵《きこり》の斧《おの》の音《おと》も手《て》に取《と》るやうに聞《きこ》える。彼《か》れは開《あ》け放《はな》した部屋《へや》で飯《めし》を食《く》ひ、母《はゝ》への手紙《てがみ》を認《したゝめ》てゐると、「御勉强《ごべんきやう》ですか」と、靑脹《あをぶ》くれの背《せ》の高《たか》...</description>
    </item>
    <item>
      <title>何處へ — Part 8</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32941/chapters/8/</link>
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      <description>彼《か》れは小學校《せうがくかう》も二｜年《ねん》で止《や》めた。繪畫《くわいぐわ》の敎育《けういく》など更《さら》に受《う》けたことがない。しかし何時《いつ》の間《ま》にか獨《ひと》りで工夫《くふう》して書《か》き出《だ》した。少《ちいさ》い時《とき》から棒切《ぼうつき》れで地上《ちじやう》に描《か》いたり、消墨《けしずみ》で板《いた》に描《か》いた...</description>
    </item>
    <item>
      <title>何處へ — Part 7</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32941/chapters/7/</link>
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      <description>彼《か》れ――黑塚《くろづか》白雨《はくう》――は九｜時《じ》に目《め》を醒《さ》ました。下女《げぢよ》の紙箒《はたき》の音《おと》が部屋《へや》の兩隣《りやうどなり》で騷々《さう〴〵》しく聞《きこ》える。電車《でんしや》の音《おと》がギイ〳〵耳《みゝ》に響《ひゞ》く。彼《か》れは今《いま》までうつら〳〵［＃「うつら〳〵」に傍点］淺《あさ》い夢《ゆめ》...</description>
    </item>
    <item>
      <title>何處へ — Part 6</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32941/chapters/6/</link>
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      <description>「二｜本《ほん》歸《がへ》り三つ！」と、ボーイは蟲《むし》の喰《く》つた出《で》つ齒《ぱ》を出《だ》して大聲《おほごゑ》で叫《さけ》んだ。彼《か》れは薄《うす》い座蒲團《ざぶとん》の上《うへ》に几帳面《きてうめん》に坐《すわ》つて、兩方《りやうはう》の袖《そで》を搔《か》き合《あは》せてゐる。年齡《とし》は十五六で、顏《かほ》は靑《あを》くて脹《は》れ...</description>
    </item>
    <item>
      <title>何處へ — Part 5</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32941/chapters/5/</link>
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      <description>翌日《よくじつ》桂田《かつらだ》の家《いへ》で晚餐《ばんさん》をかねて小園遊會《せうゑんゆうくわい》が開《ひら》かれ、博士《はかせ》夫妻《ふさい》の親戚《みうち》の靑年《せいねん》男女《なんによ》、箕浦《みのうら》織田《おだ》等《とう》の家族《かぞく》、凡《すべ》て十｜數名《すうめい》が招待《せうたい》された。健次《けんじ》もその一｜人《にん》だが、生...</description>
    </item>
    <item>
      <title>何處へ — Part 4</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32941/chapters/4/</link>
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      <description>翌日《よくじつ》は日曜《にちえう》であれば、一｜家《か》は遲《をそ》くまで眠《ねむ》り、九｜時頃《じごろ》に茶《ちや》の間《ま》に揃《そろ》つて朝食《あさげ》の膳《ぜん》についた。近來《きんらい》健次《けんじ》が家族《かぞく》と一｜緖《しよ》に食事《しよくじ》をするのは、殆《ほと》んど日曜《にちえう》の朝《あさ》のみである。年齡《とし》の割合《わりあひ...</description>
    </item>
    <item>
      <title>何處へ — Part 3</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32941/chapters/3/</link>
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      <description>健次《けんじ》は妻君《さいくん》に添《そ》うて博士《はかせ》を玄關《げんかん》に見送《みおく》り、その車《くるま》の後《あと》から自分《じぶん》も歸《かへ》らうとしたが、强《し》いて引留《ひきと》められて元《もと》の書齋《しよさい》へ舞戾《まひもど》り、母《はゝ》の傳言《でんごん》を慇懃《いんぎん》に述《の》べた。</description>
    </item>
    <item>
      <title>何處へ — Part 2</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32941/chapters/2/</link>
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      <description>大抵《たいてい》の家《いへ》は戶《と》を鎖《とざ》し、暗闇《くらやみ》の森閑《しんかん》とした道《みち》を、健次《けんじ》は雜念《ざつねん》に煩《わづら》はされ、俯首《うつむ》いてコツ〳〵辿《たど》つてゐる。彼《か》れは七歲で先祖《せんぞ》以來《いらい》のこの都《みやこ》へ歸《かへ》つてより二十七｜歲《さい》の今《いま》まで殆《ほと》んど一｜日《にち》...</description>
    </item>
    <item>
      <title>何處へ — Part 1</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/32941/chapters/1/</link>
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      <description>何處へ （四十一年一月―四月 早稻田文學）…………………一 玉突屋 （同 年一月 太 陽）………………………一三五 六號記事（同 年一月 文章世界）………………………一四三 彼の一日（同 年三月 趣 味）………………………一五九 五月幟 （同 年三月 中央公論）………………………一七三 村 塾 （同 年四月 中央公論）………………………二〇五 空想家...</description>
    </item>
    <item>
      <title>お目出たき人 — Part 3</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/31757/chapters/3/</link>
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      <description>『自分がもし生れなかつたら？』 かう中田豊男が考へたら頭がむしやくしやしてきた。豊男は自分の生れてきたことは偶然のことを萬を萬乘した程經驗してきたことヽ考へてゐる、豊男には自分の生れたことが奇蹟のやうに思はれるのである。しかし生れなかつた自分を想像することは豊男には出來ないのである、生れぬ前は自分ではない。いや母の腹に宿らぬ前は自分ではない、自分と云ふ...</description>
    </item>
    <item>
      <title>お目出たき人 — Part 2</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/31757/chapters/2/</link>
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      <description>一日として鶴のことを考へない日はなかつた。自分には鶴と一緖になつて始めて全人間《ホールのにんげん》たることが出來るやうに思へた。何かかくにつけ、讀むにつけ、見るにつけ鶴が居たらと思ふ。嬉しい時も淋しい時も悲しい時も、美しいものを見る時も、甘味《うま》いものを食ふ時も鶴と一緖だつたらと思ふ。</description>
    </item>
    <item>
      <title>お目出たき人 — Part 1</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/31757/chapters/1/</link>
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      <description>自分は我儘な文藝、自己の爲めの文藝と云ふやうなものヽ存在を是認してゐる。この是認があればこそ自分は文藝の士にならうと思つてゐる。されば自分の書いたものヽ價値は讀者の自分の個性と合奏し得る程度によつて定るのである。從つて自分の個性と合奏し得ない方には自分は自分のかいたものを買ふことも讀むことを要求する資格のないものである。表紙の畵は友人有島壬生馬氏の厚意...</description>
    </item>
    <item>
      <title>刺靑 — Part 9</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/31617/chapters/9/</link>
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      <description>［＃ここから３字下げ］ 荒廢《くわうはい》した山奧《やまおく》の深夜《しんや》。枯燥《こさう》せる雜草《ざつさう》、灌木《くわんぼく》、落葉《らくえふ》、石《いし》ころなどが、處《ところ》嫌《きら》はず亂雜《らんざつ》に群《むらが》り、背後《はいご》は一帶《いつたい》の竹藪《たけやぶ》に掩《おほ》はる。舞臺《ぶたい》の中央《ちうあう》に太《ふと》き老杉...</description>
    </item>
    <item>
      <title>刺靑 — Part 8</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/31617/chapters/8/</link>
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      <description>今《いま》を去《さ》る凡《およ》そ二百年前《にひやくねんぜん》。家康《いへやす》の海内統一《かいだいとういつ》より凡《およ》そ百｜年《ねん》、鄭成功《ていせいこう》の高砂島《たかさごたう》占領《せんりやう》より凡《およ》そ七十｜年《ねん》を經《へ》たる享保《きやうほ》某年《ばうねん》六｜月《ぐわつ》十五｜日《にち》、山王祭禮《さんわうさいれい》の朝《あ...</description>
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      <title>刺靑 — Part 7</title>
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      <description>其《そ》の後《ご》暫《しばら》く、私《わたし》は、彼《あ》の晚《ばん》女《をんな》に見《み》せられた不思議《ふしぎ》な街の《まち》光景《くわうけい》を忘《わす》れることが出來《でき》なかつた。燈火《とうくわ》のかんかんともつて［＃「ともつて」に傍点］ゐる賑《にぎや》かな狹《せま》い小路《こうぢ》の突《つ》き當《あた》りに見《み》えた印形屋《いんぎやうや...</description>
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      <title>刺靑 — Part 6</title>
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      <description>其《そ》の頃《ころ》私《わたし》は或《あ》る氣紛《きまぐ》れな考《かんがへ》から、今迄《いままで》自分《じぶん》の身《み》のまはりを裹《つゝ》んで居《ゐ》た賑《にぎや》かな雰圍氣《ふんゐき》を遠《とほ》ざかつて、いろいろの關係《くわんけい》で交際《かうさい》を續《つゞ》けて居《ゐ》た男《をとこ》や女《をんな》の圈内《けんない》から、ひそかに逃《のが》れ...</description>
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      <title>刺靑 — Part 5</title>
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      <description>此《こ》の男《をとこ》は幇間《ほうかん》の三平《さんぺい》と云《い》つて、もとは兜町《かぶとちやう》の相場師《さうばし》ですが、其《そ》の時分《じぶん》から今《いま》の商賣《しやうばい》がやつて見《み》たくて溜《たま》らず、たうとう四五｜年前《ねんまへ》に柳橋《やなぎばし》の太鼓持《たいこも》ちの弟子入《でしいり》をして、一《ひ》と風《ふう》變《かは》...</description>
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      <title>刺靑 — Part 4</title>
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      <description>其《そ》の明《あ》くる日《ひ》から、私《わたし》も仙吉《せんきち》も光子《みつこ》の前《まへ》へ出《で》ると猫《ねこ》のやうに大人《おとな》しくなつて跪《ひざまづ》き、たまたま信一《しんいち》が姊《あね》の言葉《ことば》に逆《さから》はうとすると、忽《たちま》ち取《と》つて抑《おさ》へて、何《なん》の會釋《ゑしやく》もなくふん縛《じば》つたり撲《なぐ》...</description>
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      <title>刺靑 — Part 3</title>
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      <description>もう彼《か》れ此《こ》れ二十｜年《ねん》ばかりも前《まへ》にならう。漸《やうや》く私《わたし》が十《おを》ぐらゐで、蠣殻町《かきがらちやう》二｜丁目《ちやうめ》の内《うち》から水天宮《すゐてんぐう》裏《うら》の有馬《ありま》學校《がくかう》へ通《かよ》つて居《ゐ》た時分《じぶん》―― 櫻《さくら》が咲《さ》いて空《そら》が霞《かす》んで人形町《にんぎや...</description>
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      <title>刺靑 — Part 2</title>
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      <description>其《そ》の日《ひ》から靈公《れいこう》の心《こゝろ》を左右《さいう》するものは、夫人《ふじん》の言葉《ことば》でなくつて聖人《せいじん》の言葉《ことば》であつた。朝《あした》には廟堂《べうだう》に參《さん》して正《たゞ》しい政《まつりごと》の道《みち》を孔子《こうし》に尋《たづ》ね、夕《ゆふべ》には靈臺《れいだい》に臨《のぞ》んで天文《てんもん》四時《...</description>
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      <title>刺靑 — Part 1</title>
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      <description>其《そ》れはまだ人々《ひと／″＼》が「愚《おろか》」と云ふ貴《たうと》い德《とく》を持《も》つて居《ゐ》て、世《よ》の中《なか》が今《いま》のやうに激しく軋《きし》み合《あ》はない時分《じぶん》であつた。殿樣《とのさま》や若旦那《わかだんな》の長閑《のどか》な顏《かほ》が曇《くも》らぬやうに、御殿女中《ごてんぢよちゆう》や華魁《おいらん》の笑《わらひ》...</description>
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      <title>マルチン・ルターの小信仰問答書 — Part 1</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/2592/chapters/1/</link>
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      <description>〔訳注：ここでのルターの番号のつけ方は、アウグスティヌスおよびラテン教会 の区分法に従っています（『信仰要義』p.188）。</description>
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      <title>羅生門 — Part 1</title>
      <link>https://www.cyberlibrary.org/ja/books/1982/chapters/1/</link>
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      <description>The text was taken from a 1917 edition which is naturally written in the traditional orthography with prewar kanji forms. I have taken the liberty of using postwar orthography a...</description>
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