Category: Novels
あめりか物語
明治三十六年の秋十月の頃より米國に遊びて今茲明治四十年 の夏七月フランスに向ひてニューヨークを去るに臨み、日頃 旅窗に書き綴りたるものを採り集めて、あめりかものがたり と題し、謹んでわが恩師にして恩友なる小波山人巖谷先生の 机下に呈す。明治四十年十一月里昻にて永井荷風。
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明治三十六年の秋十月の頃より米國に遊びて今茲明治四十年 の夏七月フランスに向ひてニューヨークを去るに臨み、日頃 旅窗に書き綴りたるものを採り集めて、あめりかものがたり と題し、謹んでわが恩師にして恩友なる小波山人巖谷先生の 机下に呈す。明治四十年十一月里昻にて永井荷風。
明治三十六年の秋十月の頃より米國に遊びて今茲明治四十年 の夏七月フランスに向ひてニューヨークを去るに臨み、日頃 旅窗に書き綴りたるものを採り集めて、あめりかものがたり と題し、謹んでわが恩師にして恩友なる小波山人巖谷先生の 机下に呈す。明治四十年十一月里昻にて永井荷風。
明治三十六年の秋十月の頃より米國に遊びて今茲明治四十年 の夏七月フランスに向ひてニューヨークを去るに臨み、日頃 旅窗に書き綴りたるものを採り集めて、あめりかものがたり と題し、謹んでわが恩師にして恩友なる小波山人巖谷先生の 机下に呈す。明治四十年十一月里昻にて永井荷風。
2. Part 2千九百四年の夏、聖路易市《セントルイスし》に開始された萬國博覽會を見物するのに、私には望んでも得られぬ程な好い案内者があつた。 それはS――と呼ぶアメリカ人で去年《さるとし》市俄古《シカゴ》の町端れの同じ下宿に泊り合した事から、懇意になつた畫家であるが、今度の博覽會にはその作をも出品して居ると云ふ上に、去る頃から丁度セント、ルイスに程遠からぬミズリ州の...
6. Part 6公園の入口に下車すると直樣二人は水邊の木蔭に步み寄り柔い靑草の上に腰を下す。見渡す眼の前の景色は白い夏雲の影を映した平かな入江を隔てゝ、夏木立の低く茂る間から農家の屋根や風車。まるで平和な和蘭畫を見るとしか思はれぬ。
5. Part 5單に紐育ばかりではない、合衆國中に知れ渡つて女も男もよく人が話をするのは、ロングアイランドの海岸に建てられた「コニーアイランド」と云ふ夏の遊場の事である。淺草の奧山と芝浦を一ツにして其の規模を驚くほど大きくしたやうな處である。紐育からはブルツクリンの市街を通過る高架鐵道とハドソン河を下る蒸汽船と、水陸いづれからも半時間ほどで行く事が出來る。
3. Part 3在留の日本人が寄集つて徒然《つれ〴〵》の雜談會が開かれると、いつも極つて各自勝手の米國觀―――政治商業界から一般の風俗人情其の中にも女性の觀察談が先づ第一を占める。
7. Part 7此處へ這入込むには厭でも前なる狹い空地を通過ぎねばならぬ。空地の敷石の上には四方の窓から投捨てた紙屑や襤褸片《ぼろきれ》が蛇のやうに足へ纏付《からみつ》くのみか、片隅に板圍ひのしてある共同便所からは、流れ出す汚水が、時によると飛越し切れぬ程池をなして居る事さへあり、又、建物の壁際に沿うては、ブリキ製の塵桶《ごみをけ》が幾個《いくつ》も並べてあつて、其の...
4. Part 4この年月の夢は今こそ誠となつた。私の決心は恐らく彼女の決心よりも迅速であつたらう。私は取るものも取りあへず其の夜示されたホテルに駈け付けると其の儘一年半ばかりの長い月日を女と二人で夢のやうに暮して了つた。