Category: Novels
お目出たき人
自分は我儘な文藝、自己の爲めの文藝と云ふやうなものヽ存在を是認してゐる。この是認があればこそ自分は文藝の士にならうと思つてゐる。されば自分の書いたものヽ價値は讀者の自分の個性と合奏し得る程度によつて定るのである。從つて自分の個性と合奏し得ない方には自分は自分のかいたものを買ふことも讀むことを要求する資格のないものである。表紙の畵は友人有島壬生馬氏の厚意になつた。厚く御禮する。口繪はクリンゲルのエツチング集インテルメチーの序畵である。(著者)
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自分は我儘な文藝、自己の爲めの文藝と云ふやうなものヽ存在を是認してゐる。この是認があればこそ自分は文藝の士にならうと思つてゐる。されば自分の書いたものヽ價値は讀者の自分の個性と合奏し得る程度によつて定るのである。從つて自分の個性と合奏し得ない方には自分は自分のかいたものを買ふことも讀むことを要求する資格のないものである。表紙の畵は友人有島壬生馬氏の厚意になつた。厚く御禮する。口繪はクリンゲルのエツチング集インテルメチーの序畵である。(著者)
自分は我儘な文藝、自己の爲めの文藝と云ふやうなものヽ存在を是認してゐる。この是認があればこそ自分は文藝の士にならうと思つてゐる。されば自分の書いたものヽ價値は讀者の自分の個性と合奏し得る程度によつて定るのである。從つて自分の個性と合奏し得ない方には自分は自分のかいたものを買ふことも讀むことを要求する資格のないものである。表紙の畵は友人有島壬生馬氏の厚意になつた。厚く御禮する。口繪はクリンゲルのエツチング集インテルメチーの序畵である。(著者)
自分は我儘な文藝、自己の爲めの文藝と云ふやうなものヽ存在を是認してゐる。この是認があればこそ自分は文藝の士にならうと思つてゐる。されば自分の書いたものヽ價値は讀者の自分の個性と合奏し得る程度によつて定るのである。從つて自分の個性と合奏し得ない方には自分は自分のかいたものを買ふことも讀むことを要求する資格のないものである。表紙の畵は友人有島壬生馬氏の厚意...
2. Part 2一日として鶴のことを考へない日はなかつた。自分には鶴と一緖になつて始めて全人間《ホールのにんげん》たることが出來るやうに思へた。何かかくにつけ、讀むにつけ、見るにつけ鶴が居たらと思ふ。嬉しい時も淋しい時も悲しい時も、美しいものを見る時も、甘味《うま》いものを食ふ時も鶴と一緖だつたらと思ふ。
3. Part 3『自分がもし生れなかつたら?』 かう中田豊男が考へたら頭がむしやくしやしてきた。豊男は自分の生れてきたことは偶然のことを萬を萬乘した程經驗してきたことヽ考へてゐる、豊男には自分の生れたことが奇蹟のやうに思はれるのである。しかし生れなかつた自分を想像することは豊男には出來ないのである、生れぬ前は自分ではない。いや母の腹に宿らぬ前は自分ではない、自分と云ふ...