幽霊書店

第六章

Chapter 22 2,180 words Public domain Markdown

The Winning of the Best (1912) by Ralph Waldo Trine (1866-1958) 作者は十九世紀の新思想運動の指導者の一人。人間の内なる力を認識し、それ を神の意志と調和させることで、健康、愛、成功、平和が得られると主張する。

Happy Warrior (1804) by William Wordsworth (1770-1850) 理想の戦士とはどのようなものか、その特質を延々と綴った詩。「それは寛大 なる精神 現実の問題に突き当たったとき 子供心を満足させるような方策を 見出す精神だ」

Underwoods (1887) by R. L. Stevenson (1850-1894) 「宝島」の作者の詩集。冒頭にこんな詩が据えられている。「私の詩はどの一 行も気に入らない でも題名は私のではないから気に入っている この題名は すぐれた人から盗んだものだ 全部盗むことが出来たらどんなによかっただろ う!」

Rollo books by Jacob Abbott (1803-1902) 作者は牧師・教育家。ロロという男の子を主人公にした児童書を何冊か書いて いる。私は「森の中のロロ」しか読んだことがないが、ものを作る知恵と工夫、 感情に流されない判断力、相手の気持ちを理解・尊重することの大切さを、あ まり教訓臭くならずに説いている。

The Late Mrs. Null (1886) by Frank Stockton (1834-1902) ロベルタ嬢に恋するクロフト青年は、彼女のかつての恋人ケズウィック氏のこ とを知ろうと「情報屋」に調査を依頼する。調査員はナル夫人と名乗ってケズ ウィック氏の実家に行くのだが、なぜか彼女はその家のことを自分の家の如く 知っているのだ。個性豊かな脇役たち、上品なユーモア、暖かい人間性と、ス トックトンらしい小説。

Dere Mable (1918) by Edward Streeter (1891-1976) That's Me All Over Mable (1919) by Edward Streeter (1891-1976) 戦場の無教養な一兵卒が恋人のメイベルに手紙を書く。野卑なユーモアに満ち ているが、そこに戦争の不条理が感じられるのも事実である。「おまえのおっ かさんのあみかけの手袋、送ってくれてありがとよ。手の指、弾にふっとばさ れたら、役に立つ日もあろうってものよ」

The Iliad by Homer (B.C. 9 c.) ホメーロス「イーリアス」呉茂一訳 岩波文庫

Essays (1597) by Francis Bacon (1561-1626) フランシス・ベーコン「ベーコン随想集」渡辺義雄訳 岩波文庫

Year that trembled and reeled beneath me by Walt Whitman (1819-1892) Leaves of Grass (1855-1892)に所収の一編。ウオルト・ホイットマン「草の 葉」酒本雅之訳 岩波文庫

Mr. Britling Sees It Through (1916) by H. G. Wells (1866-1946) 著名な作家ブリトリング氏が、第一次世界大戦やイギリスの社会について意見 を述べる。大戦中にイギリスでもっともよく読まれ、ゴーリキーも賞讃した小 説。

Men in War (1918) by Andreas Latzko (1876-1943) 六つの連作短編からなる本書は、戦争という病理をグロテスクなまでに解剖し ている。まさに「わたしたちの心が何を病んでいたのかを知る」には格好の作 品である。作者はオーストリア・ハンガリー軍の兵科将校だったが、戦争の悲 惨を目の当たりにして軍務を放棄した。

Areopagitica (1644) by John Milton (1608-1674) 時の政府が出版物の検閲を目論んだとき、「失楽園」の作者は抗議の声を上げ た。「本は息絶えた死物ではない。それを生んだ魂と同じくらい活発な生命力 を宿しているのだ」「良書を殺す者は理性そのものを殺す者である」さすが大 詩人、迫力の獅子吼。ロジャーはこのパンフレットから大いに影響を受けてい る。

J'accuse (1915) by Richard Grelling (1853-1929) 真実に目をつぶり、プロパガンダに踊るドイツを目覚めさせようと、ドイツの 戦争の犯罪性を暴いて見せたもの。わたしが読んだのは英訳版だが、熱のこもっ た激しい口調で書かれている。

The Vandal of Europe by Wilhelm Muehlon 著者は兵器を製造していたクルップ・コンツェルンの所長をしたこともある人。

戦争への道を選択したドイツを内部告発している。戦争の責任は政府だけにあ るのではない。ドイツの政治的、社会的、道徳的構造がこぞって戦争に突き進 んだのだ。英語版は一九一八年出版。

Lichnowsky's private memorandum (1916) by Karl Max Fuerst von Lichnowsky (1860-1928) 作者は一九一二年から一九一四年まで駐英大使だった。第一次大戦勃発を防ご うと努力したが、政府からの支持を得られなかった。その間の事情をパンフレッ トとして書き、密かに配布したところ、一九一八年、連合国側が勝手にこれを 出版し、彼はプロシアの上院から追放された。

Au-Dessus de la Mele (1915) by Romain Rolland (1866-1944) ロマン・ロラン「戦いを越えて」(「ロマン・ロラン全集十八」所収 宮本正 清他訳 みすず書房)

Le Feu (1916) by Henri Barbusse (1873-1935) アンリ・バルビュス「砲火」田辺貞之助訳 岩波文庫

Civilization (1918) by Georges Duhamel (1884-1966) 第一次世界大戦中、野戦病院での兵士の悲惨な様子を描いた短編連作で、ゴン クール賞を受賞している。

The Meaning of Death (1914) by Paul Bourget (1852-1935) ポール・ブルジェ「死」木村太郎訳 小山書店

A Student in Arms (1917) by Donald Hankey (1884 -1916) 神学を学び、前線に参加した作者が「スペクテイター」に匿名で掲載した、戯 曲、エッセイ、戦場日誌などいろいろな形式の文章を集めたもの。実際に塹壕 の中で書かれたらしい。「戦争から離れているとき、栄光とか英雄的行為につ いて語るのは簡単だ。記憶がおぞましい細部を和らげるから。しかし、ここ、 ばらばらにされ苦しめられた死者の前では、人は戦争の恐怖と邪悪しか感じる ことができない」

The Tree of Heaven (1917) by May Sinclair (1863-1946) ウエスト・エンドに邸宅を持つハリソン家の、性格の違う子ども達の成長を描 いた家庭小説。一八九五年以降の世相(ボーア戦争、女性参政権運動、第一次 世界大戦など)を映し出している。一九一八年のベストセラー。

Why Men Fight, by Bertrand Russell バートランド・ラッセル「世界の大思想26」所収 松本悟朗訳 河出書房新 社

Letters of Arthur George Heath with Memoir by Gilbert Murray (1917) ヒースの個人指導教師で、後にオクスフォード大学の同僚となったマレーに よって編まれた。二十八才の誕生日に戦死した、優秀な研究者が、戦場から主 に両親に書き送った手紙を集めている。

Professor Latimer's Progress (1918) by Simeon Strunsky (1879-1948) 第一次大戦をきっかけに心を病んだラティマー教授が、療養のため田舎を経巡 るのだが、その過程でさまざまな文明批評が展開される。作者はロシアで生ま れ、ニューヨークで育ち、ジャーナリストとして活躍した。

The Education of Henry Adams (1918) by Henry Adams (1838-1918) 父親は公使、祖父と曾祖父は大統領という作者が、まるで自分を客観視するよ うな三人称で、時にユーモアと諧謔を交え、思想遍歴を語る。歴史を「加速の 法則」とかダイナモといった物理学的イメージでとらえている点が興味深い。

The Life and Opinions of John Buncle, Esq. (2 vols., 1756, 66) by Thomas Amory (1691?-1788) 理想的美質を備えた女性と結婚・死別を七回も繰り返すとんでもない男の話で ある。

Ten Thousand a Year (1839) by Samuel Warren (1807-1877) しがない服地屋の店員が文書を偽造し莫大な遺産を受け取るのだが……。エド ガー・アラン・ポーがこの作品のことをプロットもないし、文章はぞろっぺえ だし、最初から最後まで金という俗情に訴える主題を扱っているから注目を浴 びただけだ、とけなしている。

Peter Simple (1834) by Frederick Marryat (1792-1848) 海軍士官候補生ピーターがナポレオン戦争の最中に富と名誉を求めて冒険に出 る。作者は海洋小説の先駆者の一人なのだが、ユーモアのセンスが抜群である。

本書もそうだし、代表作 Mr Midshipman Easy (1836) も枕を叩き、涙をこぼし て読む本である。