第二十三章
シーマンはすぐさま王女の部屋へ足を運んだわけではなかった。代わりに召使いたちの居住区へ行き、執事の部屋をノックした。返事はなかった。取っ手を回してみたが無駄だった。鍵がかかっているのだ。隣の部屋から、背の高い、真面目な顔つきをした、地味な黒服の男が出てきた。 「今晩外国からいらっしゃったお客様をお捜しですか?」 「ああ。鍵をかけて閉じこもったのかな?」 「お客様はお屋敷をお出になりました、旦那様」 「出ていった!もう戻ってこないということか?」 「そのようです、旦那様。言葉がよく分からなかったのですが、どうも、こちらでの待遇がお気に召さなかったようです。駅まで夕刊を取りに行く車がありましたので、それに便乗して最終列車にお乗りになりました」 シーマンはしばらく黙っていた。この知らせは彼にショックを与えた。 「君はここで何をしているのかね?」 「わたしはレノルズと申します、旦那様。ミスタ・ペラムの召使いをしております」 「屋敷を出たのに、ここのドアが閉まっているのはなぜだ?」 「ミスタ・パーキンスが出かける前に鍵をかけたのです。彼はお客様と――たしかミスタ・ミラーとおっしゃったと思いますが――一緒に駅までついて行かれました」 シーマンはまだ納得がいかないようだった。 「部屋にはいつもこんなふうに鍵をかけるのか?」 「ミスタ・パーキンスはいつもそうなさいます、旦那様。なかには葉巻の箱が保管されていますし、ワイン貯蔵庫の鍵や食器棚の鍵もあります。ほかの召使いはミスタ・パーキンスの許可がないとこの部屋を使うことができません」 「なるほど」シーマンは向きを変えながら言った。「いろいろ教えてくれてありがとう、レノルズ。あとでミスタ・パーキンスから話を聞くよ」 「お伝えしておきます、旦那様」 「おやすみ、レノルズ!」 「お休みなさいませ、旦那様!」 シーマンは混雑する広間とビリヤードルームをまたもや通り抜け、あちらこちらで短い会話を交わしたあと、南の階段をあがって西翼に向かった。ステファニーはためらいもなく彼を部屋のなかに入れた。寝室につながる私室で、暖炉を前にして椅子に座り小説を読んでいた。 「王女」シーマンは頭を低くさげて言った。「お発ちになると聞き、一同がっかりしております」 彼女は本を下に置いた。 「わたしはこの屋敷で侮辱されたのです。明日出ていきます」 シーマンは咎めるように頭を振った。 「王女、差し出がましい口をきくつもりはまったくありません。わたしは一介のドイツ商人に過ぎませんし、名士の方々とおつき合いさせていただいているのも、わが国の利益につながるからという理由があるだけです。しかし今回の件、王女を落胆させた件については、たまたま真実を知っているのです。ご決心を改めていただくことはできないでしょうか。わたしたちの親友は不必要と思われるくらい自分を厳しく律しています。それだけ終わったときの報いも大きくなるからです。それだけあなたの前に膝をつくときの喜びが大きくなるからです」 「あなたはわたしを説き伏せるために寄こされたの?」 「直接そうしろと言われたわけではありません。しかしわたしはこの計画において彼の家令のようなものです。わたしが彼をアフリカから連れてきたのです。最初から彼を監督してきたのです。一人より二人のほうが良い知恵も浮かびます。わたしは彼が間違いを犯さないように忠告し、危険な道と安全な道を指摘してやるのです」 「サー・エヴェラードはあなたを重宝しているようね」彼女は静かに言った。 「そうだといいのですが」 「彼がイギリスの生活や習慣に見事にとけこんだことは、もちろん気づいていらっしゃいますわね?」 「彼がこの国で教育を受けたことを忘れないでください。しかし彼の適応力はたしかに見事です」 「不自然と言っていいくらいだわ。教えてちょうだい、ミスタ・シーマン。あなたは彼を完璧にサー・エヴェラードに仕立てあげることに成功したみたいだけど、あなたにとって彼の本当の価値は何なの?彼はどんな仕事をするの?」 「彼は大仕事のためにとってあるのです。王女は最近皇帝陛下にお会いになりましたか?」彼はためらいがちに訊いた。 「あなたのいいたいことは分かっています。ええ、わたしは夏の終わりまでに荷造りして、急いでこの国から逃げなければならない。そのことは承知しています」 シーマンがおごそかに言った。「そのときなんですよ、サー・エヴェラード・ドミニー、その愛国心を微塵も疑われていない典型的なイギリスの郷紳が役に立つのは。今、われわれに協力している人はほとんどが疑惑の目を向けられることになるでしょう。われわれスパイ組織の要員は水面下でしか行動できません。変化するイギリス人の心理をあらゆる方面にわたって日々報告できる内通者がいればどれだけ有利な立場に立てるか、王女もお分かりになるでしょう。ほかの情報は充分に提供されています。船の設計図、飛行場と港、護衛船の航行力、兵士の召集、こうしたことはスパイ活動の基本です。われわれの友人には何も尋ねることはありません。しかしバークレイ・スクエアの町屋敷からは、時々刻々と変化するイギリスの息づかいがわれわれに伝えられるのです。そこの主人役は政府の閣僚や軍人やこの国の最高の頭脳を接待するのですから」 「そういうことをこの屋敷の主人に期待しているというの?」 「そうです。そして必ずそれを手に入れるつもりです。わたしは毎日彼を見ていますが、ますます彼を信頼するようになりました」 ステファニーは黙っていた。彼女は暖炉のなかを見つめて座っていた。いつものように目ざといシーマンは彼女の変化に気がついていた。そして今までとまるでちがうよそよそしい態度に腑に落ちないものを感じていた。 「王女、わたしがここに来たのは、心の奥底であなたを愛している男の弁護をするためではないのです。そのときが来たら、彼は自分で理由を説明し、許しを乞うでしょう。わたしはご辛抱いただくようお願いに来たのです。性急なお振る舞いはなさらないよう、こちらでの彼の立場を決して危険にさらさないよう、折り入って頼みに来たのです。わたしはあなたがた女性が与えてくれる楽園のような世界とは縁のない人間です。そこで起きていることの善し悪しなど、とても判断できません。しかしあなたの胸の内に苦々しい思いがわだかまっているように感じられます。心を寄せていた男が、祖国を第一に選んだのですから。わたしはご辛抱をお願いしたいのです、王女。どうかわたしを信じてください。わたしにはよく分かっているのです。レオポルド・フォン・ラガシュタインの意固地な態度は、一歩も引くことを知らない義務感から出ているものなのです」 「わたしが何をすると心配しているの?」彼女は不思議そうに訊いた。 「何も心配していません――直接的には」 「じゃあ、間接的に何かするということ?答えてちょうだい」 彼は正直に言った。「わたしが心配なのは、この国ではないにしても、どこか世界の片隅で、あなたがあざけりや怒りの言葉を吐き、その結果、たかがノーフォークの男爵にどんなうらみを抱いているのだろうと人々に不審がられることです。あなたがあなたの過去を知っている人の前でそのようなことを口にし、かつまたサー・エヴェラード・ドミニーとレオポルド・フォン・ラガシュタイン男爵が驚くほど似ていることに気づかれてしまう、そういうことを避けたいのです」 「分かりました」ステファニーはかすかに唇を開いてほほえんだ。「ミスタ・シーマン、ご心配には及びません。胸の内に秘めてここから持ち去るものを、あなたにも他の誰にも打ち明ける気はありません。二、三日後、わたしはこの国を出ます」 「ベルリンにお戻りですか――それともハンガリー?」 彼女は首を振り、女中に合図してドアを開けさせた。それから面会が終わったことのしるしとして手を差し出した。 「海を渡るつもりです。アフリカへ」 次の日は小さな驚きが畳み掛けるように襲いかかる日だった。エディ・ペラムの席が朝食時間の終わりになっても空席のままだったことがまず人々の好奇心をかきたてた。 「真っ白、真っピンクのしゃれ男はどこだ?」判事が尋ねた。「毎朝あいつがどうやってネクタイを結ぶのか不思議に思っていたんだが」 「帰ってしまいましたよ」ドミニーがサイドボードから振り返って言った。 「帰った?」全員が鸚鵡返しに言った。 「こんなことは今までになかったと思いますね。町から呼び出しがかかったんですよ」 「エディが呼び出されるなんて、まともな用事とは思えないけど!」キャロラインがつぶやいた。 「奇特な人もいるものだ、真夜中に彼をベッドから引きずり出し、ノリッジから朝食つき列車で町に帰ってこいと言うなんて!」と主人がつづけた。「彼が紫の部屋着を着て、そのことを知らせに来たときは、新手の幽霊でもあらわれたのかと思いましたよ」 「誰があいつを呼んだんだ?」公爵が訊いた。「仕立屋か?」 「大切なビジネスがあると言っていましたが」ドミニーが答えた。
陽気な笑い声がさざ波のように広がった。 「エディが生計のために働いているなんて」キャロラインがあくびをしながら言った。 マンガンが言った。「ミスタ・ペラムはチェルシー自動車工場の取締役です。昨年のことですが、ささやかな遺産を受け取られましてね。最初にそのことを知ったのは彼のお気に入りのタクシー運転手だったとか」 「その関係でエディが帰ったって言うの?」 「それはまずあり得ません。このあいだわたしに、工場がどこにあるか知っているか、と聞いたくらいですから」マンガンが言った。 「彼がいないと寂しいわ。猟のあとの彼の服装を見るのがいつも楽しみだったんだけど」 「ブリッジの腕も悪くはなかったよ」と公爵が言った。 「この二日間は弾もよく当たっていましたね」マンガンが言った。 「それに今日は茶色を着るんだって、こっそり教えてくれたのよ。考えてみたら茶色はエディに似合うと思うわ」最後にキャロラインが言った。 いなくなった若者への哀歌は地元紙の朝刊が届いたために打ち切られた。やがてドミニーは立ちあがって部屋を出た。いつになく物静かだったシーマンが彼のあとを追った。 「君、聞いているかどうか知らないが、昨日の晩、この屋敷で奇怪な失踪があったんだよ」 「誰の失踪だね?」ドミニーは煙草を選ぶために立ち止まった。 「われらが友人ミラー、またの名をヴォルフ、ドクター・シュミットの伝令だよ」 「消えた?どこかをうろうろしているんだろう」 「細かい調査は君に任せる。わたしは昨日の晩、彼ともう一度話し合い、いやに秘密めかした行動の理由を探ろうとしたのだ。君の執事の部屋には鍵がかかっていて、ひどく丁重な男――ミスタ・ペラムのそば仕えだったのだが――彼が教えてくれたんだよ、やつは夕刊を買いにいく車に便乗して出て行ったと」 「調べてみよう」ドミニーは一瞬当惑したように考えこんでからそう決めた。 「頼むよ。胸騒ぎがするんだ。何がどうなっているのか分からない。理解できないことが起きると、わたしは不安になるんだ」 ドミニーは下の階に消え、半時間ほどロザモンドのそばにいた。落ち着きを失った客とまた顔を合わせたのは、最初の森の猟場に歩いていく途中でだった。ドミニーが撃ち場を指し示したあと、二人だけで話す機会が訪れた。 「どうだった?」シーマンが尋ねた。 「どうやらわたしたちの友人は急に気が変わって帰ることにしたようだね。一階の執事の部屋の隣に小部屋があって、そこにベッドの用意ができていた――というか、いつでもそこで寝ることができるんだ。パーキンスと運転手が駅に行く支度をするのを見るまで、彼は帰るなんてひと言も言わなかったそうだ。それが執事と同行したいと言い出し、ノリッジ行きの列車があると分かると、さっさと二人にお別れをしたそうだ。君にもわたしにも伝言はなかった」 シーマンは考えこんだ。 「彼の出発が、われわれに対するある種の不審をあらわしていることは間違いない。彼は何かを突き止めようとしてここに来た。そしてそれを見つけたんだと思う。そんなに落ち着いていられるとはうらやましいな、君。火山の火口に立っているというのに、君はキジ撃ちかね」 「気分を変えてウズラを撃ってみよう」ドミニーが身体を回転させた。ちょうど一羽の山ウズラが低い羽音とともに後ろの生け垣を飛び越そうとしていたのだが、少し離れたところに、くしゃりと羽毛の塊となって墜落した。 「見事だ」微かに嫌味をこめてシーマンが言った。「その神経の図太さはうらやましいかぎりだ」 「別に大したこととは思えないんだがね。あの男はまったく無害だと思うよ」 「わたしは別のことでも心配がある」 「他にも問題が起こりそうなのかい?」 「午後、屋敷に帰ったら、お客さんがまた一人減っているだろう」 「王女のことか?」 「王女だ。昨日の晩、一生懸命説得したのだが、どうも様子がおかしかった。しかしとりあえず王女のことは心配しなくていい。彼女は海を渡るらしい」 「どこへ?」 「アフリカだとさ!」 ドミニーは銃に弾をこめる手を止めた。ゆっくりと振り返り、相手の無表情な顔を覗きこんだ。 「なんだってそんなところへ?」 「分からない。どうしてヨハン・ヴォルフがここに送りこまれ、探りをいれようとしたのか、分からないのと同じだよ。こっちの首尾は上々だというのに。ひどく胸騒ぎがする。納得のいくことなら、どんなに危険だろうと、怖くはない。しかし納得のいかないことは、わたしを不安にするんだ」 ドミニーは静かに笑った。 「深刻になるような危険なんて何もないさ。王女はご立腹だが、われわれのことを人にもらす恐れはない。ヴォルフという男はわれわれのどちらに対しても不利な報告はできないだろう。仕事はちゃんとやっているし、しかも順調にはかどっている。良心に恥じることはしていないと、自分たちを慰めようじゃないか」 「それはいいが、しかしわたしは心配だ。これ以上ここにいるわけにはいかないな。君とわたしがあまり親しそうにつきあっているのは賢明ではない」 「そうだな。わたしは一人でも大丈夫だ」 「王女のことを別にすれば、君の行動はあらゆる点で慎重をきわめていた」 「王女のことを別にすれば、か」ドミニーは苛立たしそうにくり返した。「いったい君はこの件をどう見ているのかね。こんな仕事の最中にこっそり新婚旅行ができるとでも思っているのか!」 「なんとか折り合いをつけることはできるはずだよ。他のことは如才なくこなしているんだから」 「君は王女のことが分かっていないんだ」 ロザモンドがステファニーの突然の出発のニュースを持って昼食に加わった。全員に宛てたメモやらメッセージも持ってきた。キャロラインは主人に向かって軽く渋面を作って見せた。 「あなた、大変なことになったわね」と彼女は耳元でささやいた。「でもこれでよかったのよ。ステファニーは好きだけど、危険すぎるわ」 「そうでしょうか」 「たいていの殿方はそう思うと思うわ。彼女は一度素敵な情事を体験しているのよ。知っていると思うけど、その結果旦那さんは決闘で殺され、愛人は国外追放になった。でも彼女は愛人が追い出されたからといって、あきらめるような女じゃない。ここにいるあいだ、あなたを愛人の代わりにしようとする様子がありありと見えたわ」 「せっかくのハウスパーティが葉枯れ病にやられたような気分ですよ」ドミニーは何気なく話題を変えた。「最初にエディ、それからミスタ・ルードヴィッヒ・ミラー、今度はステファニーだ」 「結局ミスタ・ルードヴィッヒ・ミラーって誰だったの?」 「太った、亜麻色の髪をしたドイツ人で、アフリカの古い友人から言伝を持ってきてくれたんです。荷物を持たずに杖一本だけで来たんですよ。昨日の晩、下男たちが怒ってました。ベッドを用意させておきながら、消えてしまったので」 「銀のお皿でも持ち逃げしたの?」 「なくなったものは何もありません。パーキンスが必死になって半時間ほど全部の数を数えたんです。ミスタ・ルードヴィッヒは不完全な世界を構成する解き得ない謎の一つみたいですね」 「わたしたちは楽しかったわ」キャロラインは思い出しながら言った。「明日、ヘンリーとわたしは帰る。他の人も帰ると思う。いろいろあったけど、やっぱりここに来てよかったわ」 「そう言っていただけて幸いです」 「もうちょっとあなたとお話をしたかったんですけどね」彼女はわざとそう言った。「でも失望の埋め合わせはたっぷりしてもらったわ。あなたの奥さんは大切にしてあげるだけの価値があると思う、エヴェラード。とっても可愛らしいし、物腰もすごく魅力的だわ」 「そんなふうに思ってもらえて嬉しいですよ」彼は心からそう言った。
彼女は目をそらした。 「エヴェラード」と彼女はため息をついた。「あなた、奥さんを愛しているのね」 それに答えた彼の顔には奇妙な、ほとんど怖ろしいといっていいくらい、さまざまな表情が交錯した。恐れるような、慈しむような、絶望してあきらめかけたような表情だった。普段はゆったり落ち着いた声も、急にこみあげてきた感情に震えた。話し相手はあっけにとられた。 「わたしもそう思います。自分でも怖いのですよ、彼女を思う気持ちが。それが別の悲劇を起こしそうな気がして」 「くだらないことを言わないでちょうだい。どんな悲劇が起こるというの?あなたはまっとうな人間に返ったのよ。強くて、頼りがいがあって、ロザモンドみたいな可愛いチャーミングな人を守るのにぴったりの人だわ。それを悲劇だなんて!奥さんを連れて南フランスに行きなさいな、エヴェラード。新婚旅行をやり直すの。どう?」 「今はまだできません」 彼女は不思議そうに彼を見つめた。ときどき彼のことがさっぱり分からなくなるときがあった。 「まだアンサンクの事件が心配なの?」 彼はわずかにためらった。 「あの問題の余波がまだ残っています。わたしたちにのしかかる雲のように。そのうち片をつけるつもりですが――それより先に他の面倒が起きるかも知れません」 「あなたは真面目すぎるのよ、エヴェラード」彼女は当惑した顔つきで彼を見た。「あなたの人生には、人には絶対見せられない、とっても重要な裏面があるみたい。どうしてあの変な小男のシーマンといつも一緒なの?まさかゆすられているとか?」 「それどころかシーマンはわたしの財産を最初に築いてくれたんですよ」 彼女は肩をすくめた。 「わたしも株式取引所で一回か二回か小金を稼いだけど、そのあと仲買人をポケットに入れて持ち歩いたりはしなかったわ」 「シーマンは気のいい男ですよ。人づき合いが好きなんです。そのうちふらふらとどこかへ行って、何年も姿を見せなくなるでしょう」 「ヘンリーはね、あなたが英独同盟派として議会に出馬する気なんだろうかって考えはじめたわ」彼女は最後にそんなことを何気なく言った。
彼らは農夫用の台所でこそこそと話をしていたのだが、入口からミドルトンが非難がましい視線を向けているのに気がつくと、ドミニーは笑い声をあげた。彼は相手を促すように立ちあがった。 「議会のことは多少考えています。しかし――まあ、ヘンリーが心配することはありません」