# 入れかわった男

## 第九章

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「お宅のワイン貯蔵庫には心から祝福の言葉を申しあげます、サー・エヴェラード」その晩、客はポートワインを口にしながらそう言った。「これほどの七十年代ものは実に久しぶりです。しかも、わたしがロンドンから寄こした新しい雇い人――パーキンスですが――彼によると、これがまだたっぷり残っているそうですよ」 「じっくり寝かしてあったからね」 「夕食の前に貯蔵庫のリストを調べてみました。すると四十七年ものと四十八年もの、さらにそれより古いビンテージワインも数本お持ちじゃないですか。放っておく手はありませんよ」 「明日の晩、一本飲んでみよう。暇があれば、半時間くらい一緒に貯蔵庫を見て回るのもいいかもしれない」 「そしてもう半時間はミセス・アンサンクとの面談に費やしたいですな」ミスタ・マンガンは憂慮するように言った。「とにかく、ドミニー夫人のお世話係として彼女が適任とは到底思えません。ここに到着したらすぐ、この件についてお話しようと決めていたんですよ、サー・エヴェラード」 「ミセス・アンサンクはミスタ・フェルブリッグの家政婦で、妻の子どもの頃の乳母だったんだよ。どのような欠点があるにせよ、ドミニー夫人には献身的につくすと思う」 「奥様には献身的かも知れませんが、あなたにとっては敵だと思います。このまま何事もなく済むとは思えません。ミセス・アンサンクは、それがフェアな闘いだったかどうかは別にして、あなたが息子を殺したと思いこんでいる。ドミニー夫人もそう信じている。そして争いのあとのあなたを見て、正気を失ってしまった。ドミニー夫人には、不幸な過去と何のつながりもない人をあてがったほうがずっといい」 「明日、ハリソン先生に相談しよう。君が一緒に来てくれて本当に助かるよ、マンガン」彼はほんの少しためらってから話をつづけた。「昔の雰囲気にもう一度馴染むことはなかなか難しい。それどころか」彼はテーブル越しにちらりと妙な視線を投げかけた。「わたしがあの頃と同じ人間だということさえ信じられない」 「わたしはあなた以上に信じられない思いを何度も味わいましたよ」 「ずばりどういうところが変わったと思うのか、教えてくれないか」ドミニーは熱心に尋ねた。 「柔軟性とでもいいますか、あるいは性格的なだらしなさとでもいうべきかもしれませんが、それがなくなったようですね。昔を振り返ると、今のあなたからはほとんど想像もできないことが幾つもあるんです。些細な例ですが」彼はうっすらと笑みを浮かべて、主人の口をつけていないグラスのほうに頭をかしげた。「わたしが知っているドミニー家の方と違って、あなたはポートワインをお飲みにならない」 「ポートワインはもとから好みじゃないよ」 弁護士は眉をつりあげて彼を見た。 「ポートワインはもとから好みじゃない」彼は呆然として相手の言葉をくり返した。 「好みじゃなくなったと言うべきだったね」ドミニーは急いで説明した。「ジャングルではとにかく怖ろしいほどアルコールを飲んだ。するとワインに対する嗜好が萎えてしまうんだ」 弁護士は主人の見事な褐色の顔色と澄み切った目をうらやましそうに見た。 「お酒なんか一度も飲んだことがないような顔をなさっていますよ、サー・エヴェラード」彼は正直に言った。「十年か十五年前の噂が信じられません」 「ドミニー一族の体質なんだろう」 新しい執事が音もなく部屋のなかに入ってきて、主人の椅子に近づいた。 「書斎にコーヒーを用意いたしました、旦那様。猟場管理人のミスタ・ミドルトンがつい先ほどおいでになり、お休み前に旦那様と一言お話したいとのことです。たいそう落ち着きのない、心配そうな様子でした」 「すぐ書斎に来させたまえ。君もコーヒーにするかね、マンガン」 「もちろんですとも」弁護士は立ちあがりながら同意した。「素晴らしいご馳走でしたよ、あのワインは。ロンドンのレストランには望むべくもない一品ですな。ポートワインは寝かしてある場所から運び出してはいけないんですよ」 二人は実に豪華だが、暖房不足で壁が少しいたんでいる広間を通って書斎に入り、赤々と燃える薪を前にして安楽椅子に座った。パーキンスは音をたてずにブランデー入りのコーヒーを差し出した。彼が部屋を出るや、とたんにためらいがちなノックの音がし、ミドルトンのどことなくおどおどした姿があらわれた。 「なかに入ってドアを閉めたまえ。どんな用事だい、ミドルトン。パーキンスから話があると聞いているが」 男は躊躇しながら前に進んだ。見るからに困ったようなそわそわした様子で、話が切り出せないでいるようだった。顔には雨粒が光り、綿ビロードのコートにも長く尾を引くような雨の跡がついていた。白髪は風にあおられて乱れていた。 「今晩は荒れ模様だね」ドミニーが言った。 「ここに来たのは、これ以上荒れた夜にならないようにするためなんで、旦那様」老人はしわがれた声を出した。「お頼みしたいことがあるんですよ。旦那様のためにも。今晩、カシの間でお休みじゃないでしょうね？」 「そうしてはいけないかい？」 「奥様の部屋の隣じゃありませんか」 「だから？」 老人はいかにも動揺していたが、主人はわざとのように、助け船を出さなかった。彼はマンガンのほうを見て、ぶつぶつと独り言を言った。 「遠慮せずに言いたいことを言いたまえ、ミドルトン」ドミニーが促した。「ミスタ・マンガンは三代にわたってこの屋敷の事務弁護士を勤めてこられた。わたしの一族の歴史はすべてご存じだ」 「打ち解けられないのは、旦那様のほうなんですよ、まったくの話」ミドルトンはどうにでもなれといわんばかりに話しつづけた。「一回り大きくおなりになって、お声も厳しくなったような気がするんです。思っていることを言いたいんですが、なんだか気後れしちまって」 「辛い経験をしたからね、ミドルトン。変わっても不思議はないさ！気にしないで男同士で話をしよう」 「旦那様があの晩、ふらふらしながら家に戻ってきたとき、最初に出っくわしたのがわたしでした。片腕をだらんと垂らし、血がお顔とお召し物を伝い、目に赤い炎がともっていましたよ――人殺しの炎ってやつでさ。奥様がヒステリーを起こすのが聞こえました。狂ったように笑ったり泣いたり。それからは、ああ神様！ずっとそのままでいらっしゃる」 二人の男は黙っていた。ミドルトンは激しく興奮し、大きな声を出していた。一呼吸間をおいたのは、明らかにただ息を継ぐためだった。話はつづいた。 「奥様がナイフをつかんで、あなたに向かってきたとき、わたしはおそばにおりました。覚えていらっしゃるでしょうが、奥様を背中から取り押さえて、あの晩、二つめの悲劇が起きるのを防いだのはわたしなんで。それから奥様が夜中に旦那様の部屋に忍びこんで、一センチ差で喉を刺しそこね、次の朝、お医者様を呼びに行ったのもわたしでした。奥様が旦那様に向かって声を振り絞り、脅かすのが聞こえました。あれは狂った女の脅しでしたよ、旦那様。奥様は今も気が触れてます。奥様がナイフをお持ちになったら、この屋敷のなかにゃ旦那様が安全でいられるところはありません」 「凶器を持たせないように注意しなければならないね」ドミニーは静かに言った。 「無駄なことですよ」ミドルトンはあざ笑うように言った。「おそばにアンサンクがいるんですから！奥様はあの晩の恐ろしさに頭が変におなりになったが、アンサンクは憎しみのあまり変になっているんです。それにですよ」老人は声をひそめ、目をぎらぎらさせた。「ロジャー・アンサンクの幽霊があの二人の窓の下にやってきて、一週間に一度はかならず旦那様の血を求めてうなり声をあげるんです。今晩ここにお泊まりになるなら、旦那様、屋敷の反対側に小部屋が用意してありますから、そちらでお休みくださいまし」 ミスタ・マンガンは夕食後の落ち着いた表情を失っていた。顔は歪み、コーヒーは冷たくなりかけていた。今の話は、ときどき彼のもとに届く曖昧な手紙や噂とはずいぶん異なっていた。彼は物質主義者として、そうしたものをとことん軽蔑し無視してきたのだが。 「警告してくれてありがとう、ミドルトン。しかしドアには鍵がかかるだろう？」 「カシの間に鍵をかける？」話にならないといった調子だった。「そんなことして何の役に立つんです？あの部屋の壁は三方が二重になっていることはよく知っていらっしゃるでしょう。このわたしですら知らない秘密の入り口があるんですよ。今晩、カシの間にだけは泊まっちゃいけません、旦那様。あの二人が静かにしているのは、あの部屋で旦那様をしとめようとしているからです」 「どういうことなんだい、ミドルトン」弁護士が訊いた。彼は無関心を装うとしたが、失敗していた。「ロジャー・アンサンクの幽霊の叫び声を聞いたっていうのは」 老人は辛抱強く振り返った。 「そのままの意味ですよ、先生。ほとんど毎週、家の周りをうろつくんで。ミセス・アンサンクを除けば、たまにわたしが泊まるくらいで、もう何年も屋敷に寝泊まりする召使いはいません。女中のなかには村から来ているのもいますが、しかし彼らは夜になる前に帰りますんで。それから朝まで、生きている人間は一人もここに来やしません――百ポンドやると言っても断られます」 「叫び声と言ったね？」ミスタ・マンガンが訊いた。 「怪我をした犬の鳴き声によく似てます」ミドルトンは平然と説明した。「犬みたいといっても、わしらが聞いた感じではちょっぴり人間ぽいところがあるんですがね。先生も、たぶん、今晩か明日の晩あたりお聞きになるでしょう」 「じゃあ、君は聞いたことがあるんだね、ミドルトン」主人が尋ねた。 「そりゃ、もちろんですよ、旦那様」老人は驚いたように答えた。「この十年間、ほとんど毎週ですよ」 「起き出して正体を確かめたことはないのかい？」 老人は頭を振った。 「あれが何かくらいちゃんと分かってまさあ、旦那様。わたしは幽霊なんか探しに行きたくはありませんや。誰でも知ってるように、幽霊のなかにはこの世をうろつくやつらもいますからね。ロジャー・アンサンクの幽霊は毎週ブラック・ウッドとあの窓のあいだを行き来しているんです。でも幽霊なんか見たくもありませんや。縁起でもねえ。ベッドのなかで寝返り打って、耳を押さえます。ブラインドだってあげたことはありません」 「ミドルトン、ドミニー夫人は、この――何ていうか――霊の出没を怖がっているんだろうか？」ドミニーが訊いた。 「そいつはわたしには分かりません。奥様はいつも愛らしくて、お優しいし、誰にも分けへだてなく親切なお言葉をかけてくださります。しかし奥様の目には今でも浮かんでいるんです、旦那様がよろよろとお屋敷に戻ってきたあの晩にともった恐怖が。その恐怖はまだすっかり消えてはいないようです。奥様は恐怖を抱いていらっしゃる。でもそれがあなたと再会することへの恐怖なのか、ロジャー・アンサンクの幽霊に対する恐怖なのか、そこのところは分かりません」 ドミニーは急にこの話題を切りあげてしまいたいという、おかしな衝動にかられたようだった。彼は優しい言葉で、しかしやや唐突に、老人を引き取らせることにし、使用人部屋に通じる廊下まで、ずっとキジ狩りの話をしながら老人を送った。戻ると、客は二杯目のブランデーを飲み干し、こっそり額の汗をぬぐっているところだった。 「あれこそ長生きしすぎた使用人の逸品ですな。わたしが中世のドミニー家の者なら、やつの首に石を結びつけて、うんと深い井戸に放りこんでやります。それがいちばんいいあしらい方だろうと思いますよ。まったくこっちまでぞっとしてしまった」 「気がついていたよ」ドミニーは軽く笑いながらいった。「わたしにとっても確かに楽しい会話じゃなかったね」 「お化けの話は幾つか聞いたことがありますが、十年間も毎週やってきて叫び声をあげるというのは、そうあるもんじゃない」 ドミニーはしっかりした手つきでブランデーを注いだ。 「怠慢だぞ、マンガン。この家から悪霊を祓い清めておくべきだったのに。君とわたしとで、まず悪魔祓いをしなければ、せっかく集めてくれた聡明な女中たちが明日にはいなくなってしまう」 ミスタ・マンガンはしだいに人心地がついてきた。ブランデーと燃えさかる薪の暖かさが身体のなかに染みこんできた。 「ところでサー・エヴェラード」彼は少ししてから尋ねた。「今夜はどこで寝るつもりです？」 ドミニーは悠然と手足を伸ばした。 「どう考えても一カ所しかないじゃないか。誰も失望させるわけにはいかない。カシの間で寝るよ」

