# 入れかわった男

## 第二十八章

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それから数日のあいだに奇妙な噂がドミニー邸からその近辺に広がった。つまり農場労働者から農場主へ、学校の子供から家庭へ、村の郵便局から近隣農村へと伝わったのである。となりの郡から集まってきた木こりの一団が、発動機と商売道具を駆使して、ブラック・ウッドの北の端の木や茂みを、片っ端からなぎ倒しはじめたのだ。戦争のことなどあっけなく忘れ去られた。作業がはじまった当日から、付近の老若男女、誰もがこわごわ森の外れにやってきて、機械のうなり声に耳をすまし、森の中に通じる大きな木板の橋をじろじろ眺め、何か珍しいものでも見つからないかと、野宿している男たちのテントを覗きこんだ。木こりたち自身はむっつりと喋らず、頭領が初めて口を開いたと思われるのは、ドミニーが到着して次の日、朝早く作業の進展について話をしに来たときだった。 「小汚ねえ仕事ですぜ、旦那」と彼は本音を打ち明けた。「こんなにどうしようもなく腐った森は見たことがありません。だいたい、手で触っただけで木がぼろぼろに崩れるんですからね。それに五百枚ほど歩み板を敷きましたが、それでも人夫たちはお互い手の届く範囲にいなくちゃならねえんで」 「何かおかしなものを見つけたかね」 「今のところは何も。蝮に噛まれねえよう、全員がすね当てを余計に巻いてます。なかにはあっしの腕ぐらい長いやつを巻いているのもいます。それからキノコですよ。触ると、大人も目を回すような匂いを放ちましてね。初日は若い虎みたいな、でかくて獰猛な猫を殺しました。変な仕事ですわい、旦那」 「どのくらいかかりそうかね」 「三週間てところですな、旦那。木材を運び出したら燃やしたほうがよろしいですよ。ありゃ、何の値打ちもありません。失礼ですが、旦那、向こうにいる老婦人がいつもうろうろしているんですよ。人夫のなかにはひどく怖がっているのもいます」 ドミニーは振り向いた。少し離れた庭園の、小高くなったところに、レイチェル・アンサンクが立っていた。色褪せた黒一色の服、青ざめた頬、異様な目つき。その姿は朝の光のなかで見ても嫌悪感を催させた。ドミニーはゆっくり彼女に近づいた。 「ミセス・アンサンク」と彼は話しかけた――。

彼女はそれをさえぎり、やせ細った手を森に向けた。 「あの人たちは何をしているのですか、サー・エヴェラード・ドミニー。あの森をどうしようというのです」 「冬のあいだに決心したことをやろうとしているんですよ。ブラック・ウッドの木を向う端まで切り倒しているところです。木も藪も一つ残らず。切ったあとは焼いて、それから排水。わたしたちが死ぬころには、あそこにトウモロコシ畑ができているでしょう、ミセス・アンサンク」 「本気でそんなことをなさるつもり？」彼女はしわがれた声で訊いた。 「してはいけない理由があるのですか、ミセス・アンサンク」 彼女は黙りこくり、ドミニーは立ち去った。しかし、その晩、ロザモンドと彼がデザートを味わいながら、不思議な静寂を楽しみ、開いた窓からそっと吹きこむ素晴らしい風にあたっていたとき、パーキンスが面会人の来訪を告げた。 「ミセス・アンサンクが書斎においでです、旦那様。五分ほど時間をいただきたいとのことですが」 ロザモンドは小さく身震いしたが、ドミニーが尋ねるように目を向けると、頷いて見せた。 「お願い、わたしは会いたくない。あなたが行って。――それからエヴェラード！」 「なんだい？」 「話してくれないけど、あなたがあそこで何をしているのか、わたし、分っている」その口調は奇妙に熱を帯びていた。「彼女にやめろといわれても、言うことを聞かないで。ねずみ一匹隠れるところがなくなるまで、切って、焼いて、刻んでちょうだい。約束してくれる？」 「約束するよ」 ミセス・アンサンクは必死になって激しい動揺を抑えようとしていた。ドミニーが部屋に入ってくると、立ちあがって古風なお辞儀をした。 「ミセス・アンサンク、どういったご用件ですか」 「森のことでもう一度お話がございます。わたし、耐えられません。一晩中、斧や人夫たちの叫び声が聞こえるようで」 「ブラック・ウッドの木を切り払うことが、どうしていけないのですか、ミセス・アンサンク」ドミニーは単刀直入に尋ねた。「不愉快な汚らしい場所に過ぎないじゃありませんか。あそこにあるというだけで、ドミニー夫人の神経をめいらせるのですよ。今までも、さんざん苦しんできたというのに。あんなものは地上からきれいさっぱりなくしてしまうつもりです」 無理に装っていた恭順の見せかけが、すでに彼女の態度から消えはじめていた。 「そんなことをすれば不幸が訪れますよ、サー・エヴェラード」彼女は強情に言い張った。 「今でもあの森からは山ほど不幸がやって来ている」と彼はやり返した。 「息子の魂をかき乱すつもりですか。あなたがあそこに死体を投げ捨てた男の魂を」 ドミニーは冷静に相手を見た。得体のしれない悪意がその顔に輝いていた。唇がめくれて、そのあいだから黄色い歯がのぞいている。細めた目にともる炎は憎しみの炎だ。 「わたしは殺していません、ミセス・アンサンク。あなたの息子はあの森の暗がりからこっそり出てきて、卑怯にもわたしを襲い、格闘になったのです。襲ってきたとき、彼は気がふれていて、狂ったように向かってきました。わたしのほうが力は上でしたが、それでも生きて逃げることができたのは幸いでした。それから彼の身体には指一本触れていません。彼は倒れたところにじっと横たわっていました。森のなかに這っていって、そこで死んだのなら、わたしに責任はない。彼はわたしの命を狙ったのですよ。わたしは何もしてないのに」 「あなたは息子に不当な仕打ちを与えた」と女は呟いた。 「それも間違っています。ドミニー夫人への懸想は、彼女にとって迷惑であり、報われるようなものではなかった。彼女が抱いていたのは、ただ恐れです。そのことはこの辺の人ならみんな知っています。あなたの息子は孤独で陰気な生活破綻者だった。われわれのどちらかが殺人を胸に秘めていたとしたら、それは彼のほうであって、わたしではない。それから、あなたについてですが」ドミニーは一息ついて、こうつづけた。「もう復讐は気の済むほどやったでしょう、ミセス・アンサンク。妻を狂気に追いやったのはあなただ。あなたの息子の魂とやらを恐れるようになったのは、あなたがそう吹きこんだからです。帰ってくるのがあと二年遅ければ、妻は今頃、精神病院に送られていたかもしれない」 「あなたはアフリカでのたれ死にすればよかったのよ！」と女は叫んだ。 「度が過ぎますよ、あなたの悪意は。わたしの言うことを聞いて、息子さんの魂が今もブラック・ウッドに住み着いているなんて、馬鹿なことを考えるのはやめなさい。どこか違う土地へ行き、年金暮らしをして、忘れることです」 彼は窓のほうに歩いていった。彼女の目はいぶかるようにその姿を追った。 「噂を聞きましたよ」彼女はゆっくりと言った。「あちこちであなたの噂がささやかれている。ときどき、わたしも疑ったのです。あなたが喋るたびにね。あなたは本当にエヴェラード・ドミニーですか」 彼は振り向いて、彼女を正面から見た。 「それ以外の誰だというのですか」 「本物じゃないと思っている人が一人います。あなたの奥様ですよ。あなたの傲慢なやり方に接した人から、おかしな話を聞きました。あなたはわたしが覚えているエヴェラード・ドミニーよりも情け容赦がない。あなたが偽者だとしたら、どうなるのでしょう」 「それを証明しさえすれば、ミセス・アンサンク、少なくともブラック・ウッドの一部はそのまま残ることになるでしょう。ただし、いささか難しいとは思いますがね――失礼だが、呼び鈴を鳴らさなければならない。これ以上、お引き留めする理由もないようだから」 彼女は不承不承立ちあがった。その態度はふてくされ、反抗的だった。 「あなたは不幸を招き寄ようとしている」と彼女は警告した。 「安心しなさい。不幸が来ても、対処の仕方を心得ていますから」 ロザモンドは村から歩いてきたハリソン医師とテラスに立っていた。 「いいところに来ましたね、先生。おつき合いしてくれる人がいなかったので、ポートワインを味ききせずに置いてあるんですよ。しばらく二人で話をしたいんだが、かまわないかい、ロザモンド」 彼女は快く頷いた。医師は主人のあとについて食事室に入り、デザートの片づけられていないテーブルについた。 「あの老婦人が面倒でも？」医師はもじゃもじゃした灰色の眉の下から鋭い視線を向けてきた。 「本気で邪魔立てしようと考えているみたいですね」ドミニーは客のグラスをいっぱいにしながら答えた。そして短い間を置いて話しつづけた。「個人的には、今の状況はまえから抱いていた疑いをますます強めるものだと思っています。ご存じのように、先生、わたしはある種の事柄に関しては、徹底した物質主義者です。不衛生な森を切り払ったら、天使のような息子の魂が冷たい世界に放り出されるなどと怯えている、執念深い母親の言うことなど、毛ほども信じていません」 「君はあそこに何がいると思っているのだ？」医師は直裁に尋ねた。 「今は言いたくありません。途方もないと思われるかも知れませんから」 「今日の午後に受け取った伝言には、緊急と書いてあったが」 「緊急の用件です。是非ともお願いしたいことがあります――今晩、ここに泊まっていただけないでしょうか」 「何か起きるとでも？」 「少なくとも用意だけはしておこうと」 「喜んで泊まるよ」と医師は約束した。「手回り品をいくつか貸してもらえるだろうね。寝るところはドミニー夫人の部屋の近くに頼む。ところで」と彼は言いかけて、口ごもった。 「先生の忠告、というか、命令はずっと守りましたよ」ドミニーはやや語気荒く相手の言葉をさえぎった。「必ずしも容易ではありませんでした、特にロンドンでは。ロザモンドは妄想から解放されていましたから。――今晩か、あるいは近々起きる事態に、大きな期待をかけています」 医師は同情するように頷いた。 「君は正しい方向に向かっていると思うよ」 ロザモンドはガラス戸を通って、彼らのところに来ると、ドミニーのそばに座った。 「どうして陰謀者みたいにささやいているの」 「陰謀者だからだよ」と彼は朗らかに答えた。「ハリソン先生に今晩泊まっていくよう、お願いしたんだ。わたしたちと同じ棟に部屋を取ってほしいそうだ。女中に知らせておいてくれないか」 彼女は考えながら頷いた。 「もちろんよ。準備のできている部屋がいくつかあるわ。わたしたちがお客様を連れてくるかもしれないって、ミセス・ミジレイは思っていたんですって。ハリソン先生には気持ちよく泊まっていただけると思うわ」 「その点は心配していませんよ、ドミニー夫人。できるだけ、あなたの部屋に近いところをお願いします」 彼女の顔にかすかな不安が浮かんだ。 「今晩、何か起きるとお考えなの？」 「今晩か、近いうちにね。用心に越したことはない。怖くはないだろう？先生とわたしが両側から守っているんだから」 「わたしにとって怖いことは一つしかないわ」彼女はどこか謎めいた返事をした。「最近、とっても幸せだったから」 ドミニーは普段着に着替えて、太い紐を身体に巻きつけた。ポケットに拳銃、手には仕こみ杖を持ち、夜になってから真夜中過ぎまで、大きなツツジの茂みの陰に隠れて、屋敷とブラック・ウッドのあいだに広がる、ほの暗い庭園を監視した。月は出ていなかったが、晴れた夜で、うっすらとくすんだ闇に目が慣れると、あたりの風景と、そこを動くものの姿がぼんやり見分けられた。待機している数時間のあいだに、アフリカの奥地で身につけた習性が本能的によみがえったようだった。あらゆる感覚が張りつめ、活動をはじめた。どんな夜の声も――ブラック・ウッドに潜むフクロウが、何かに慌てて鳴く声も含めて――一つ一つがはっきりと聞きとれ、その意味も察しがついた。時計を見て、もうすぐ二時になることを知ったとき、はじめて何かが起こりそうな気配を感じた。庭園を横切り、彼のほうに向かってくる、かすかな足音が聞こえた。奇妙な不規則なリズムを持ち、低い丘の向こう側からやってくるらしかった。四つんばいのまま身体を持ちあげ、目を凝らした。視線をある一点、自分と丘のあいだに広がる、何もない庭園の一部分に集中させた。足音は止まり、また動き出した。視界の開けた場所に黒い影があらわれた。動きの不規則な理由はすぐに判明した。それは四つんばいになって動いたかと思うと、次の瞬間には二本足で立ち、また四つんばいに戻るのだ。それがさらに近づいてきたとき、ドミニーは目をそらすことなく杖を脇に置いた。それはテラスに到達すると、ロザモンドの窓の下で止まった。彼がしゃがんでいるところから六ヤードしか離れていない。彼は落ち着いて待った。もうすぐあることが起こるはずだと思っていた。そのとき、風ひとつない夜の静寂を破って、あの聞き慣れた、この世のものとは思えない叫び声が響き渡った。ドミニーは最後のこだまが消えるまで待った。そして上体を屈めたまま数歩飛び出したかと思うと、腕を伸ばした。最後の悪魔の叫び声が八月の夜更けの深いしじまをもう一度破った。その声は新たな恐怖におののくようにかすかに震え、尾を引いて消えた。張りつめた喉の奥で声を粉砕した指が、不浄な命の最後の光をも粉砕してしまったかのように。 しばらくしてハリソン医師があたふたとあらわれたとき、ドミニーはテラスに座ってさかんに煙草をふかしていた。数ヤード離れた地面には黒いものがじっと動かず横たわっている。 「何だね、これは」医師は息を呑んだ。 ドミニーは初めて動揺した様子を示した。声はつかえ、ひび割れていた。 「そばで見てください、先生。手も足も縛ってあります。ロジャー・アンサンクの魂がどこに隠れていたか、お分かりになるでしょう」 「何かと思えば、ロジャー・アンサンク本人じゃないか」医師は強くさげすむように言った。「けだものみたいになりおって！」 召使いたちが列をなして外に走り出てきた。ドミニーはさっそく指示を出した。 「車庫に電話しろ。誰か一人、ノリッジの病院に向かえ。先生、上に行って妻を看てくれませんか」 生まれてからずっとつづいてきた習慣が破られた。完全無欠の沈黙せる自動人形パーキンスが思わず勢いこんで質問した。 「旦那様、あれは何でございます？」 頭上で窓を開ける音がした。そのとき、パーキンスが退職金を求めたとしても、それは決して戯れに要求したのではなかっただろう。ドミニーは小さな半円形に居並ぶ召使いを見て、声をはげました。 「これでロジャー・アンサンクの幽霊などというたわごとはお終いだ。ここに横たわっているのは半分けものになり、半分人間のまま残っているロジャー・アンサンクだ。どういうわけか――もちろん狂人にしか分からない理由なのだろうが――彼は今までずっとブラック・ウッドに隠れていたのだ。母親は彼の共犯者で、食べ物を与えていたのだろう。彼は今も生きていたのだ、見るもいとわしい姿で」 茫然とささやきかわす声が小さく聞えた。ドミニーは淡々とした口調に戻った。 「おそらく最初はわれわれとこの屋敷に復讐をするつもりだったのだろう。不当な仕打ちを受けたと思いこんで。しかし、この男は、近所に越してきたころから気がふれていた。行動もずっとおかしかった――ジョンソン」ドミニーは体格のいい、迷信に振り回されない常識家の召使を選んで言った。「こいつをノリッジ病院に連れて行く用意をしろ。昼間、わたしが行けないようなら、手紙を送って知らせると伝えてくれ。他の者はパーキンス以外、寝室に戻りたまえ」 小さく驚きの声をあげながら、彼らは散りはじめた。すると一人が足を止め、庭園の向こうを指差した。信じがたい素早さでやってきたのは，黒ずくめの痩せこけたレイチェル・アンサンクだった。ときどき足元がふらついたが、それでもあっという間に彼らのなかに割りこんできた。よろめきながら、うずくまる人影に駆け寄ると、すとんと膝をついた。手を見えない顔の上に置き、目はドミニーをにらんだ。 「とうとう捕まえたのね」彼女は息を切らして言った。 「ミセス・アンサンク」ドミニーの声は厳しかった。「ちょうどいい。息子さんに付き添ってノリッジ病院に行きなさい。二分後には車が来ます。あなたには何も言うことはない。この哀れな生き物をこんな状態で生かしつづけ、わたしが不在のあいだ、その呪われた復讐欲を満たしてやろうとしたことに対しては、あなた自身の良心が十分な罰を与えるだろう」 「わたしが食べ物を持って行かなければ、この子は死んでいた」と彼女は呟いた。「わたしは張り裂けた女の胸が、絞り出せるかぎりの涙を流し、この子に戻ってくるよう頼んだ」 ドミニーは反論した。「しかし、あなたは無害な女性に復讐するという卑劣な陰謀に加担した。夜な夜な屋敷に近づいて、この窓の下で、化け物のような叫び声をあげるのを、一言もいさめることなく、やらせつづけた。その忌まわしい目的が何であるか、あなたはよく知っていたはずです――神経の弱った女性を守らなければならない立場だったのに。しかも妻はあなたを信頼していた。あなた方はどちらも悪党だが、あなたは気のふれた息子さんより悪党だ」 女は返事をしなかった。膝をつき、倒れ伏した影の上に身を屈めたままだった。その影はいまや唇からかすかなうめき声を漏らしていた。車庫から出てきた車のライトが光った。鉄門を通り、数ヤード彼らのほうににじり寄った。 「なかに運びこめ」とドミニーは命じた。「ジョンソン、出発したら、すぐに縄をゆるめてやれ。抵抗する力はない。病院に着いたら、わたしも行くと伝えてくれ。たぶん今日の日中か、明日になると思う」 軽くぶるっと身震いしてから、二人の男はかがみこんで仕事に取りかかった。囚われの身となった男は終始、独り言を呟いていたが、暴れることはなかった。レイチェル・アンサンクは彼の隣に席を占めると、もう一度ドミニーのほうを振り返った。すっかり打ちひしがれた様子だった。 「わたしたちを厄介払いできましたね」彼女はすすり泣いた。「たぶん永遠に。わたしたちのことを悪し様におっしゃいましたが、ロジャーは――悪いばかりの人間ではありません。時には優しくなることだってあるのです。そんなときはまるで赤ん坊みたい。あそこに住み着いたのも風や木や鳥が大好きだったからなのです。正気に戻ったら――」 彼女は言葉をつづけることができなかった。ドミニーの返事は素早く、思いやりがこもっていた。彼は上の窓を指さした。 「ドミニー夫人が回復したら、あなたと息子さんのことは許してさしあげます。もし回復しなかったら、あなた方二人が地獄に落ちるよう祈ります」 車は走り去った。屋敷のなかに戻ろうとした彼は、入り口のところでハリソン医師に出会った。 「奥さんは今、気を失っている。良い兆候なのかもしれない。あの不自然な落ち着きぶりは気に入らなかったからね。意識不明の状態は何時間も続くよ。さあ、ウイスキー・ソーダを一杯くれないか！」 朝日が庭園に降り注ぐ頃になって、二人の男はようやく別れることになった。彼らはあたりを見回しながら、しばらく立っていた。ブラック・ウッドからはのこぎりの音が聞こえてきた。人夫の小隊はもうテントから出ていたのだ。倒れる木の音が朝の仕事のはじまりを告げた。 「あれは継続するんだね」と医師が訊いた。 「木の株も、藪も、草の茂みも、最後の一つがなくなるまで」ドミニーの口調が急に熱をおびた。「地肌しか残らなくなるまで、あの場所は刈り尽くします。毒々しい沼地は空になるまで水を抜きます。あの汚らしい場所は前から好きじゃなかった。彼女にとって耐えがたい苦痛でしかないと知ったときから。わたしがここの主人でいられるのも、そう長いことではないでしょう、先生――わたしの前途には辛い運命が待ち構えています――しかし、わたしのあとに来るものは、あの呪われた場所の毒気に悩まされることはありません」 医師は唸った。心のなかで思ったことを、彼は口にしなかった。 「その通りかもしれないね」と彼は認めた。

