# 入れかわった男

## 第二十七章

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それからほんの数時間後にドミニーはカールトン・ハウス・テラスから電話連絡を受けとった。その短いメッセージには毒々しいほど劇的ななにかがあった。さっそく彼は車で街を走り抜けていったが、その途中の光景には、見慣れたなかにもすでに奇妙な変化が認められた。男も女もいつも通りに仕事をしているのだが、どこを見ても明らかに呆然とした空気が漂っているのだ。道行く人はほぼ全員が新聞とにらめっこをしていた。偶然でくわした知り合い同士は立ち止まって意見を交わした。おしゃべり雀たちが冗談のタネにしたり、怖がって見せたりしていた戦争が、陽光に包まれた都会に灰色の手を伸ばしてきたのだ。楽天的な人々さえ、来るべき恐怖を思うと不安に震えあがった。一日か二日で状況はがらりと変わることになる。人々はロシアの何百万という人々の数を数えはじめ、圧倒的な人海に対する崇拝が生まれることになるのだ。それまで観兵式にすら行ったことのない、ごく平和的な株の仲買人や店主までが、ちびた鉛筆と古い封筒の裏で人的資源の計算をし、ドイツとオーストリアは少なくともその三倍の勢力に圧倒されるという、どんな悲観論者をも納得させる結果を得た。しかしこの日の朝に限れば、人々は動転し、計算をするどころではなかった。信じられないことが起きたのだ。長いあいだ議論されていた戦争――神経質な者にとっては悪夢であり、楽観主義者にとってはあざけりの的だったもの――が現実のものとなったのだ。平和と飽満ののんきな日々は突然終わった。黒い悲劇がこの国にのしかかってきた。 ドミニーは奇妙な胸騒ぎを覚えた。できるだけ知り合いを避けながら、セント・ジェームズ通りを抜け、ペルメル街を進み、カールトン・ハウス・テラスに出頭した。外から見るかぎり、窓辺にフラワーボックスを並べた白い大邸宅は特に混乱の徴候を示していなかった。しかし、なかに入ると控えの間は訪問者でごった返し、ドミニーは彼を待ち受けていたターニロフの個人秘書のおかげで、ようやく大使が忙しく手紙を口述している、内なる聖所に入ることができた。来客が告げられると、彼は即座に口述を止め、秘書を含めて全員を人払いした。それからドアに鍵を掛けた。 「フォン・ラガシュタイン」彼はうめくような声を出した。「わたしは破滅したよ」 ドミニーは同情するように相手の手を握った。ターニロフはこの数時間のあいだに何歳も年をとったように見えた。 「君を呼んだのはお別れを言うためだ。お別れをし、告白をするためだ。君が正しく、わたしが間違っていた。わたしは自分の地所にとどまって、農夫でもやっていればよかったのだ。自分がいつも非難していた連中の手先をつとめていたとは、不覚にも今まで知らなかった」 訪問者は黙ったままだった。かけるべき言葉がなかった。 「わたしは平和のために働いてきた。祖国は平和を望んでいると信じて。平和をめざして、同じように平和を守ろうとする立派な人々とともに働いてきた。ところが、わたしがそのために骨を折ってきた人々は、そのあいだずっと、わたしの後ろで顔を蹙めていたのだ。わたしは彼らの道具に過ぎなかった。戦争を防げるものなど、この世に何もなかったということが、いま分かった」 「少なくとも、あなたが平和のために全力を尽くされたことは誰もが認めるでしょう」 「それが君を呼んだ理由の一つだ」彼は興奮したように言った。「先日、本のことを話したね。この国に赴任して以来、つけてきた日記だよ。あれを君に見せると約束し、君も最近何度か見せてほしいと言っていた。それを今、渡そうと思う。昨日書きあげたのだ。それを読めばわたしの努力の全てと、それがどのように失敗したかが分かるだろう。わたしのここでの仕事を細大漏らさず、ありのままに記してある。それに対するイギリスの反応も」 王子は部屋を横切り、壁に並ぶ小型金庫の一つを開け、モロッコ革で綴じた、小さな紙ばさみほどの大きさの本を取り出し、ドミニーのところに戻ってきた。 「頼む」彼は熱をこめて言った。「じっくりこれを読んで、わたしの指示を待ってくれ」彼は苦々しい口調でこうつづけた。「君ならきっと、わたしがこれを君に預ける理由が分かるだろう。この大使館にも本国のスパイがいないわけじゃない。また、この回想録の存在も知られている。ドイツに着いたとたん、その運命は目に見えている。わたしはドイツ人であり、愛国者だが、祖国に汚点をつけようとする連中に憤りを感じている。だから有効活用できるときが来るまで、回想録を安全なところに保管しなければならないのだ」 「つまりドイツの政府が変わるまで、ということですね」 「その通り！その時がくればさっそくわたしの立場は正当だったと認められるだろう。そして名誉ある平和を成り立たせるべく、分別ある国民の前に、新たな対英外交の位置づけが示されるだろう。注意深く読んでくれ、フォン・ラガシュタイン。読み進むうちに、君が仕える党への忠誠心すら一瞬揺らぐことがあるかもしれない」 「わたしはどんな党にも仕えていません」ドミニーは静かに言った。「祖国があるのみです」 ターニロフはため息をついた。 「残念だが、政府の倫理について、いつものように議論する時間はない。君を送り出さなければならない、フォン・ラガシュタイン。君には恐るべき任務がある。心から幸運を祈るよ。わたしはイギリスを出るまで、もう誰にもあわせる顔がない」 「他にお申しつけになることはありませんか。何かお役に立てることは」 「ない」ターニロフは悲しそうに答えた。「不自由な思いをさせられることはないようだ。まるで王様のように出発できるよう、手配が進められている。しかし、友よ、今わたしが受けている鄭重で寛大なもてなしは、一つ一つがこの胸に突き刺さってくる。さようなら！」 ドミニーはペルメル街でタクシーを拾い、バークレー・スクエアに戻った。ロザモンドが子犬をぞろぞろ引き連れ、庭に入ろうとしているところだった。彼はそばに寄っていった。 「どうだろう」彼は腕を取りながら尋ねた。「二三日、ノーフォークに行くのはいやかい」 「あなたと一緒に？」彼女はすばやく訊き返した。 「もちろん！しばらく田舎に引きこもろうと思うんだ。新しい仕事に取りかかるまえに、一つ二つ片づけなければならないことがある」 「わたしは大歓迎だわ」彼女は勢いこんで言った。「ロンドンは暑くなってきたし、みんなとっても興奮しているんですもの」 「三時には幌型自動車を寄こすように言っておくよ。屋敷に着くのは九時ごろだろう。パーキンスと小間使いは汽車で来させたらいい。それでいいかな」 「すてき！」 彼は彼女の腕を取り、二人はゆっくりと熱せられた小径を歩いた。 「ロザモンド、みんなが恐れていた時が来たよ。戦争がはじまったんだ」 「知ってるわ」と彼女は呟いた。 「この数ヶ月はとても楽しかった。もちろん二人のあいだにはまだ黒いわだかまりがあるけれど。ぼくは本当の夫のように、そして君が本当の妻であるかのように、優しく、思いやりをこめて接してきた」 「あなた、どこかへ行ってしまうの？」彼女は驚いて叫んだ。「そんなの、いやだわ！あなたみたいに親切な人はいなかったもの」 「いいかい。君のご主人、エヴェラードのことを考えてごらん。彼は一度だけ、短いあいだだけど、兵役についていたでしょう？おそろしい戦争がはじまった今、彼ならどうすると思う？」 「あなたがしようとしていることをしたでしょうね」そう答えた声はかすかに震えていた。「もう一度兵士になって、お国のために戦ったでしょう」 「ぼくも同じだよ――自分の国のために戦わなければならない」彼はきっぱりと言った。「だからこれから一時間ほど、君のそばを離れて、連絡先に電話をしなければならない。お昼ご飯には戻るよ。そのあとはすぐ出発だ。でも、まず最初にいろいろ準備をしておかないと。これから二三日は辛い思いをすることになる」 彼女は彼の腕にしがみついた。奇妙なくらい彼を放したくないようだった。 「エヴェラード、ドミニー邸に着いたらハリソン先生に会ってもいいかしら」 「もちろん」 「先生と話し合いたいことがあるの。あなたにも訊きたいことがあるわ、エヴェラード。あなたは町にいるときも、田舎にいるときも、同じ人？」 彼はその質問にいささかぎくりとした。ほとんど悲痛な、深刻な口調で訊かれたからでもある。その質問は精神の錯乱を示唆するように思えたが、しかし彼女の風采はそれを完全に否定していた。黒と白のまだら模様のモスリンのドレス、大きな黒い帽子、パリの靴。ストッキングも手袋も、服装は細部にいたるまで慎重に選ばれ、優雅に自然に着こなされていた。社交上でも驚くべき成功を収めていた。つい先週もキャロラインが彼に近づき、肩を小さくすくめてこう言った。 「ロザモンドには優しくしようとしてきたけど、でも分かったのはそんな必要がないってこと。お仲間の若いミセスのあいだじゃ、彼女がいちばん人気があるんだもの。あなたにはもったいないような幸運だわ、エヴェラード」 「放蕩者こそ何とやらって言うじゃないですか」と彼は答えた。

一瞬余計なことを考えていた彼は、慌てたようにロザモンドの質問に答えた。 「同じ人かって？」と彼は鸚鵡返しに言った。「そうだと思うけどね。そうは見えないかい？」 彼女は頭を振った。 「よく分からない」どことなく謎めいた返事だった。「田舎にいくと、わたしが理性を失いかけた、あの恐ろしい晩のことをときどき思い出すの。あの晩のようなあなたを見たことがない」 「もしかして、帰りたくないのかな」 「それがおかしな話なんだけど、わたし、何はさておき帰りたくて仕方ないの。あら、空のタクシーが来たわ」門に近づいたとき、彼女はそう言った。「わたしはなかに入って、ジャスティンに荷造りするよう言ってくる」

