# 入れかわった男

## 第一章

Book page: https://www.cyberlibrary.org/ja/books/34158/index.md

大事件の発端となるあの災難は、エヴェラード・ドミニーが小一時間も低木の藪を押しわけ、細く渦巻きながら立ちのぼる煙をめざし、子馬に最後の絶望的な努力をしいて巨大な夾竹桃の茂みを通り抜け、前のめりに頭から小さな空き地へ転落した時点にはじまる。翌日の朝、気がつくと、彼は数ヶ月ぶりにリンネルのシーツに包まれて、キャスターつきのベッドに横たわっており、過酷な太陽と彼のあいだには、涼しげな竹で編まれた屋根があった。彼はベッドの上でわずかに身体を起こした。 「いったいどこなんだ、ここは？」 バンダの入り口に胡座をかいていた黒人少年が立ちあがり、何事かをぶつぶつとつぶやいて出ていった。すぐに上背のある、痩せたヨーロッパ人が、一点の染みもないまっ白な乗馬服に身をつつみ、入り口をくぐってドミニーのそばにやってきた。 「ご気分はよろしいですか？」彼は丁寧に尋ねた。 「ああ、いいよ」と彼はやや無愛想に答えた。「ここはどこなんだ？それに君は誰だい？」 新たにあらわれた男はむっとした表情を浮かべた。彼の物腰には威厳があり、口調にはいくぶん非難がこめられていた。 「ここはイリワリ河から半マイルも離れていない、と言えばおわかりになりますかな。ダラワガ入植地から七十二マイルほど南東です」 「何だと！じゃあ、ここはドイツ領東アフリカなのか？」 「その通りです」 「すると君はドイツ人なんだな？」 「ドイツ人であることはわたしの誇りです」 ドミニーは軽く口笛を鳴らした。 「不法侵入したことは深くお詫びする。ぼくはマーリンシュタインを二ヶ月半前に出発したんだ、土地の者二十名と、貯えをたっぷり持ってね。ぼくらはライオンを追いかけて長い狩猟の旅をしていた。アフリカ人新兵も何名かいたのだが、そいつらが面倒を起こした。ある晩、やつらは食料の貯えを分捕ろうと騒ぎを起こしたんだよ。ぼくは二人ほど銃で撃たざるを得なかった。しかしおかげで他の者がみんな逃げてしまった。いまいましいことにコンパスを持ち逃げされ、思っていた方向から百マイル近くもそれてしまった。飲み物をもらえないかな？」 「医師の許可があれば喜んで」慇懃な答えが返ってきた。「ここに来たまえ、ジャン！」 少年が飛び起き、現地の言葉で発せられた二言三言の短い命令を聞くと、垂れさがった葉のとばりを抜けて、別の小屋へと消えた。二人の男は並々ならぬ関心をこめて視線を交わした。ドミニーが笑った。 「君が何を考えているか、ぼくには分かるよ。君が入ってきたときはぎくっとした。ぼくらは恐ろしいくらいそっくりだな」 「確かに非常によく似ていますね」と相手は認めた。 ドミニーは片手を頭の下にあてがい、主人の顔をしげしげと眺めた。容貌の類似は一見して明らかだったが、どこをとっても分があるのは、簡易ベッドの脇で腕組みして立っている男のほうだった。エヴェラード・ドミニーは生まれてから二十六年間、彼の地位にあるごく普通の英国人青年と同じように生きてきた。イートン、オックスフォード、数年間の軍隊生活、すでに負債を抱えた地所をますます望みのない泥沼に陥れただけの都会暮らし。そして数ヶ月のあいだ悲劇に翻弄されたあとは無為徒食の日々。その後の十年間、最初は都会を巡っていたが、ふとアフリカの奥地にさまよいこみ――それからの歳月のことは誰も知らない。十年前のエヴェラード・ドミニーは確かに美男子だった。今や整った顔立ちこそそのままだが、目は輝きを失い、身体から弾力は失せ、口元は締まりがなかった。熱病と不摂生に蝕まれ、いかにも若くして盛りを過ぎてしまった男の風貌だった。しかし目の前の相手は違う。面立ちは彼と同じように整っていて、似てはいるが、いっそう精力的だった。目は燦めき、情熱に燃えている。引き締まった口と顎は、彼が行動の人であることを示し、上背のある身体はしなやかで敏捷だった。体調は万全、精神も肉体も完璧な状態にあり、表情にほんのわずか重苦しさがあったが、威厳を持ち、それなりに満足を感じながら生きている男の風格があった。 「そうだな」英国人はつぶやいた。「確かに似ている。健康に注意していたら、もっと似ていただろう。でもしなかった。それが問題なのさ。ぼくは逆の方向につっぱしった。自分の人生に見切りをつけようとして、もうちょっとでそれに成功するところだった」 枯れ草のとばりが一方に押しのけられ、医師が入ってきた。小柄なまるまるとした男で、やはり染み一つない白い服を身につけている。髪は金髪で、厚い眼鏡をかけていた。同国の男がベッドを指さした。 「病人を診て、必要なことを指示してやってくれないか、先生。飲み物がほしいそうだ。ワインでも何でも身体にいいものをさしあげてくれ。充分回復したら、われわれの晩餐に同席していただこう。では失礼します。報告書を書かなければならないので」 ベッドの男は頭を巡らし、目にかすかな羨望の色を浮かべて相手の後ろ姿を見つめた。 「ぼくの命の恩人は何という名前なんだい？」彼は医師に尋ねた。

医師はその質問が無礼であるかのような顔をした。 「陸軍少将レオポルド・フォン・ラガシュタイン男爵様です」 「そんなに長いのか！」とドミニーはつぶやいた。「総督か何かなのかい？」 「植民地領陸軍司令官です。特別の任務も受けて、この地におられるのです」 「ドイツ人にしては、やけに男前だな」ドミニーはよく考えもせず横柄な口をたたいた。

医師は平然としていた。彼は患者の脈を取っていた。数分後、診察は終わった。 「最近、ウイスキーを飲み過ぎていませんか？」 「それが君と何の関係があるのか分からんが」ぞんざいな返事だった。「しかし飲めるときはいつも飲んでいる。この胸くそ悪い気候のなかで誰が飲まずにいられるんだ！」 医師は頭を振った。 「対処法さえ間違えなければ、ここの気候は悪くないです。閣下はライトワインとセルツァー炭酸水しかお飲みになりません。ここに来て五年、いや、ここだけではなく、沼沢地にもいらっしゃいましたが、病気一つしたことがありません」 「ぼくは死にそうになったことが十回以上ある」イギリス人はいささか投げやりな調子で言った。「いつ死んだってかまやしないんだが、そのときが来るまで飲めるウイスキーは飲みつづけるつもりだ」 「料理人が昼食を用意しています。食事をなさったほうが身体に良いでしょう。今はウイスキーをさしあげるわけにいきませんが、ローリエ入りのホック・アンド・セルツァーなら召しあがっても大丈夫です」 「持ってきてくれ」彼は勢いよく答えた。「われながらあきれた体質だよ、先生！外の料理のにおいによだれが垂れそうだ」 「自重さえなされば、あなたの健康状態はまだまだ良好です」医師は元気づけるように断言した。 「連れの者がどうなったか、聞いていないか？」 「現地人兵士の死体が川辺に打ちあげられました。それからあなたの子馬が二頭、ライオンの餌食に。では失礼します。昨日の晩、豹に噛まれた現地人の傷を見てやらなければならないので」 一人残された旅行者はじっと小屋のなかに横たわり、とりとめもなく過去のことを思い出していた。彼は外に目をやり、この野営地用に切り開かれたみすぼらしい一角の向こう、叢林と花をつけた低木の茂みを見た。彼が辿った象の道以外は通行不可能な、得体のしれない場所だった。それから豊満な胸の形に広がる、空のような蒼さの河や、かなたの靄のなかに消えていく山脈に目を転じた。主人の顔が彼を過去へ連れ戻した。何かが心に引っ掛かり、彼は記憶の糸をたぐった。それを思い出したのは、司令官と医師と彼が三人で晩餐の席についたときだった。すばやい夕闇の訪れを告げるかすかな山風に当たれるよう、小さなテーブルが小屋の外に出された。現地人の召使いが周りで竹の団扇をあおいで虫を払い、青白い奇怪な灌木の放つ芳香が毒々しいほどあたりに立ち籠めていた。 「なんだ、ドゥヴィンターなのか！」彼はいきなり大声を出した。「ジギスムント・ドゥヴィンター！イートンで一緒だったじゃないか、ホロック寮で。ラケッツの準決勝にも出たね」 「それからモードリン・カレッジ。競漕では五番を勤めていた」 「なんでこちらのお医者さんは君の名前をフォン・ラガシュタインなどと言ったんだ？」 「それが事実だからだよ」彼は控えめな口調で答えた。「ドゥヴィンターがわたしの苗字で、イギリスにいたときはその名前で通した。しかし叔父の男爵位と資産を受け継いだとき、新しい肩書きを使わざるを得なくなったのだ」 「それにしても世間は狭い！ここに来た理由は？ライオンかい？それとも象？」 「どちらでもない」 「まさか狩猟のためじゃなくて、純粋に政治的な仕事のためだと言うんじゃないだろうな」 「もっぱら仕事のためさ。猟銃は必要に迫られたとき以外、ひと月に一回も使わない。アフリカには別の理由できたのだ」 ドミニーはホック・アンド・セルツァーをごくりと飲んで後ろにもたれた。背の高い草やずんぐりした灌木の茂みの上に蛍があらわれ、澄んだ青紫色の薄闇の中を小さな星のようにたゆたっているのが見えた。 「なんて世界だろう！」彼は独りごちた。「シギー・ドゥヴィンター、フォン・ラガシュタイン男爵がこんなところで、何のためやら、あくせく仕事に精を出し、誰が敵なのか知らないが、黒人どもに軍事教練をしている。政治のために黙々と働き、ゆくゆくはドイツ領アフリカの総督にでもなるのかい？君はいつも国家を誇りにしていたな、ドゥヴィンター」 「わたしの祖国は誇るに足る国家だ」彼はおごそかに答えた。 「ともかく君は真面目にやっているわけだ。何かに真剣に取り組んでいる。ぼくのほうはと言えば――まあ、人生終わったようなものさ。ここの煙が見えなかったら、本当に昨日の晩、終わっていただろうし、それはそれでかまやしない――そこが問題なんだがね。ぼくはこれからもさまよいつづけるよ。たぶん、いつか、どういうふうにか分からないけど、最後が訪れる――ラム酒かウイスキーはもらえないか、ドゥヴィンター――いや、フォン・ラガシュタイン――閣下――どう呼んだらいいんだろう？河のそばで靄が渦を巻いているだろう？酒がないと、あれはマラリアみたいにぼくを苦しめるんだ」 「それよりももっといいものがある。君の感想を聞かせてくれたまえ」 主人が椅子の後ろに控えていた当番兵に命令をささやくと、当番兵は糧秣小屋に消え、一本の瓶を手にしてすぐに戻ってきた。それを見た英国人は息を呑んだ。 「ナポレオンか！」 「数本送らせたのだ。味の分かる人にさしあげることができて嬉しいよ」 「うむ、こいつは本物だ！」ドミニーはグラスをゆっくり回しながら言った。「驚いた！昨日の晩、ここに転がりこんだとき、ぼくは三十時間ものも食わず、何日も水しか飲んでなかった。ところが今晩は鶏のフリカッセに、白パンに、高級白ワインに、ナポレオンだ。しかもあしたも同じメニュー――いや、そいつは分からないか。いつ移動するんだい、フォン・ラガシュタイン？」 「まだしばらくはここにいる」 「司令部からこんなに離れたところで何をしているんだ？ライオン狩りも象狩りもせずに」客は不思議そうに訊いた。 「本当に知りたいのなら教えよう。わたしは現地人を集めて教練しながら、あちこちを移動し、君の国の駐在官を大いに惑わしているんだよ」 「だが何のための教練だ？」ドミニーはしつこく訊いた。「少し前に君たちはイギリスより四倍も多い現地人兵士を抱えていると聞いた。ここに軍隊は必要じゃあるまい。われわれともポルトガルとも喧嘩は起こりそうにないし」 「わが国のやり方なんだよ」フォン・ラガシュタインはやや教え諭すような調子で言った。「ドイツでは、そしてわれわれドイツ人が行くところではどこでも、おそらく起こるだろうという事態に対してだけでなく、ひょっとしたら起こるかもしれないというような事態に対しても準備を怠らないのだ」 「軍隊にいた若い頃、戦争に出ていたら、ぼくも一人前の男になっていたかもしれないな」 「もちろんここに来たことはあるんだろう？」 ドミニーは首を振った。 「ぼくが所属していた大隊は本国を離れることはなかった。いつもアイルランドに閉じこもっていた。だからまだ本当にガキの時に軍隊を辞めたんだ」 しばらくして彼らは椅子を引きずり、さらに暗闇の中へ移動すると、葉巻をくゆらし、素晴らしい香りのコーヒーを飲んだ。医師は患者を診に出かけ、フォン・ラガシュタインは物思いに沈んでいた。その一方で客はあれこれと思い出話にふけりつづけた。

彼はゆっくりとグラスに手を伸ばしながら言った。「ぼくらの出会いは心理学者の関心をひきつけてやまないだろうね。奇跡のような幸運がぼくらを結びつけ、アフリカのジャングルで人生の一夜を共に過ごす。歳は同じだが、育った場所は何千マイルも離れていて、およそ考え得る限りもっとも異質な人生行路を永遠の闇に向かって走っているというのに」 「闇といっても君が見ているのは夜明け前の闇だよ。太陽がやがて、ちょうどあのあたりの山の背後から、燃えあがる新世界のようにあらわれる」 「寓話なんぞで話の腰を折らないでくれ」相手は苛々と文句を言った。「ぼくの比喩は適切じゃないかもしれないが、永遠の闇は確かに存在するんだ。ぼくはいま哲学者のような気分だ。好きなように話をさせてくれ。ぼくという人間は、子供の頃は怠け者で、青年の頃は罪のない遊び人だった。それが悲劇に遭い、それからは放浪者、ゆっくりと堕落していく放浪者になった。何の目的もなく、何の希望や望みもなく、人生をのらくら過ごしている」彼はやや眠そうに話しつづけた。「ただ一つぼくが望むのは、河の向こうの、あの山の麓に埋めてもらうことだ。燃えあがる世界のような太陽が、毎朝その背後から昇ると君が言う場所に」 「くだらない」フォン・ラガシュタインは反論した。「人生に悲劇があったとしても、君にはそれを克服する時間がある。まだ四十にもなっていないのだから」 「その一方で君はどうだろう」ドミニーは友人の言葉をすっかり無視して話をつづけた。「君はぼくと同い年だが、十歳も若く見える。筋肉は固く、目の輝きは学生の時と同じだ。君は目的を持って行動している。医者が教えてくれたが、毎朝五時に起き、夕方疲れ果ててここに戻るそうだね。君の時間はすべてあの汚らしい黒人を教練することに費やされている。教練のない時は調査をしたり、本国に送る報告書を指示したり、熱病をばらまく数百万エイカーの沼地でできる限りのことをしている。医者は君のことを崇拝しているよ。しかし他に誰がそのことを知っているというのだ？わが親友は何のためにそんなことをするのだ？」 「わたしの義務だからだよ」落ち着いた返事が返ってきた。 「義務か！しかしその義務とやらは祖国でやれないものなのか？人間らしい生活をし、白人の手を握り、白人の女の目を覗きこむことはできないのか？」 「わたしは自分がもっとも必要とされている場所へ行く。現地人への教練は楽しくはない。平凡な人生の喜びから見捨てられた者として生きていくことは楽しいことではない。しかしわたしは生まれついた星の導きに従う」 「そしてぼくは生まれついた狐火の導きに従うわけだ」ドミニーは自嘲するように笑った。「ぼくらは月とスッポンだね。君は退屈な奴かもしれない。いつだって真面目くさっていた。しかし高潔な人格者だ。ぼくはごくつぶしさ」 「わたしたちの差はわが国の青年に植えつけられ、君の国の青年に植えつけられていないものの差だよ。イギリスでは多少金があり、ある程度の名家に生まれた若者は世界を狩猟場か愛の園のように思っている。ドイツの貴族は、どれほど力のある者も、みな仕事を持っている。仕事こそ精神を鍛え、人生にバランスを与えるものだ」 ドミニーはため息をついた。宝物のように思えた葉巻も指のあいだで冷たくなっていた。芳しい闇のなかで、シェードつきランプによって後ろからかすかに照らし出された彼の顔は、不意に青ざめ老けたように思われた。主人は彼のほうに身を乗り出し、初めて若い頃のように思いやりのこもった調子で話しかけた。 「悲劇があったとか言っていたね。君だけじゃないよ。悲劇はわたしの人生にも踏みこんできた。たぶん、あんなことがなければ、もっと楽しいところで仕事を見つけていただろう。でも不幸が起きて、今はここにいるというわけなんだ」 同情の表情が一瞬ドミニーの顔に閃いた。 「それぞれに苦労があったんだな」彼はうめいた。

